オフショア取引の新動向 執筆日:2022年2月18日
2022-02-18執筆日:2022 年 2 月 18 日
オフショア取引の新動向
オフショア取引とは、中国外を貨物が直送される取引に関して、中国企業が売買当事者となる(インボイス・スウィッチ)取引です。2012 年の核銷制度廃止(貨物代金決済時の通関単提示義務廃止)により本格的に認められたものの、虚偽取引の増加を背景に、2016 年より規制強化が実施され、対応が難しくなっている状況です。
これが、今後、一定の緩和が図られる可能性がありますので、その概要を解説します。
1.人民銀行・外貨管理局の通知
2021 年 12 月 24 日に、中国人民銀行・国家外貨管理局より、「新型オフショア国際貿易の発展支持に関する問題の通知(銀発[2021]329 号)、以下、329 号通知」が公布され、2022 年 1 月 24 日より施行されています。
329 号通知には、新型オフショア国際貿易の推進のための銀行のサービス向上と管理体制の強化が規定されています。
① 新型オフショア国際貿易の定義
329 号通知では、新型オフショア国際貿易を、「中国企業と非居住者企業間で発生する取引であり、貨物が中国国境に入らない、若しくは、中国の税関統計に算入されない貿易」を指す事。更には、「オフショア貿易だけでなく、国際調達、国外への加工委託、海外請負工事等を包括する概念」であると規定しています。
② 銀行の管理要求
新型オフショア国際貿易に付いては、今後、発展を推進する方向性ではあるものの、虚偽取引が発生しやすい傾向にあるため、銀行に対しては、以下の様な管理体制の整備が指示されています。
1)銀行管理
銀行は、虚偽取引・マネーロンダリング・不適切な資金引出等の違法行為を回避するために、顧客に対する審査と信用状況把握の強化、更には、内部監督体制の構築が要請されています。また、銀行・顧客は、事後の審査に備えて、5 年間の関係書類保存が義務付けられています。
2)決済原則
オフショア取引(売上・仕入)は、同一銀行での決済、同一通貨での決済が原則とされています。
3)罰則
違法行為が発見された場合は、「外貨管理条例」第 39 条~ 49 条の規定に基づいて処罰されます。
2.329 号通知の背景
① 国務院弁公庁の意見
オフショア取引は、「貨物代金決済改革(匯発[2012]38 号)」によって実質的に開始され、その後、急速に実績が拡大したものの、「貿易投資の利便性を一層促進し、真実性審査を完備させることに関する通知(匯発[2016]7 号)」で規制が強化され、その後は、取引に応じない銀行が増えるなど、対応が困難になっていました。
329 号通知は、銀行に対して、監督体制の強化は要請されているものの、方向性は、取引の拡大・発展であり、トレンドの転換を意味するものとなっています。
この背景となっているのは、「新業態・新形態の貿易を一層発展させることに関する国務院弁公庁の意見(国弁発[2021]24 号)、以下、24 号意見」で、ここでは、中国の貿易発展のために、新規ビジネスモデルを開発する事の重要性が強調されています。
24 号意見には、各種のビジネスモデルに関する課題と方向性が規定されていますが、オフショア取引に関しては、以下の様に記載されています。
● オフショア取引を着実に推進・発展させる。銀行は、業務の真実性審査方式を最適化し、発展の原則に基づいて、顧客信用分類とビジネスモデル審査の効率性をレベルアップする。これにより、企業が行う合法的なオフショア取引に対する良質な金融サービスの提供と決済の利便性の向上を実施する。
自由貿易試験区におけるオフショア取引業務の一層の推進のために、条件を具備し、競争力と管理能力を持った地域が、オフショア取引を発展させることを支持する(商務部・人民銀行・国家外貨管理局が職責に応じて責任を持つ)。
② 関連する報道と今後
上記の通り、2016 年以降、ネガティブな扱いを受けてきたオフショア取引が、推進の方向性に転換される傾向が見えてきました。
商務部の記者発表でも、「オフショア取引は、中国に輸出入されない取引であるため、貿易摩擦を回避でき、また、貿易形式の多様化に対応できる」。更には、「オフショア取引の発展により、決済・物流・商品検査等のサービス分野の発展が促進でき中国の競争力の引き上げに貢献する」などのメリットが強調されています。
現段階では、地域的な制限の有無(自由貿易試験区等に制限されるか否か)、サービスレベルや税収貢献要求の有無(高付加価値な取引に制限されるか)など、不透明な面が有るのは確かです。
但し、方向性転換の兆しが見えていることは確かであり、今後の動向を注目したいところです。