2021年の税関信用ランク変更 執筆日:2021年9月25日
2021-09-25執筆日:2021 年 9 月 25 日
2021 年の税関信用ランク変更
2021 年 9 月 13 日に、税関総署より「税関登録登記・備案企業信用管理弁法(税関総署令 2021 年第 251 号)、以下、新弁法」が公布され、同年 11 月 1 日より施行されます。
税関信用ランク制度の変更に付いて解説します。
1.税関信用ランクの推移
① 過去の制度変更
税関信用ランク制度は、最近では、2014 年(税関総署令[2014]225 号)、2018 年(税関総署令[2018]237 号)に変更されています。
2014 年の制度変更は、比較的大がかりなもので、それ以前は、「AA・A・B・C・D 類」という 5 段階の分類(標準は B 類)が、「高級認証、一般認証、一般信用、信用喪失」の 4 分類に変更されました。
変更に際しては、旧 AA 類は高級認証企業、旧 A 類が一般認証企業、旧 B 類が一般信用企業、旧 C・D 類が信用喪失企業というように、自動的に再分類されました。
② 今回の制度変更
今回の制度変更で、税関分類は、高級認証企業、信用喪失企業、その他の企業という 3 分類になります。
また、信用喪失企業の中で、違反状況が著しい場合は、重要信用喪失企業リストに組み入れられます。
2.各ランクの対応
① 高級認証企業
高級認証企業は、AEO(Authorized Economic Operator)であり、税関優遇措置が受けられます。かつては、高級認証企業と一般認証企業が AEO でしたが、今回の制度改定で、高級認証企業のみが AEO となります。
高級認証企業の輸出入検査率は、通常企業の 20%以下と規定されている他、通関手続き優先、税関担保免除申請の許可、税関調査の回数軽減などの便利化措置が提供されます。
因みに、インターネット公開情報によれば、一般信用企業の輸出入時の開封検査率は 3%程度と言われていますので、高級認証企業の場合は、0.6%以下に軽減されることになります。
高級認証企業へのランクアップは税関への申請が必要で、税関、若しくは、税関から授権された検査機関の審査が必要となります。高級認証企業の再審査は 5 年に一回となり、これは、制度変更前の 3 年より長期化されました。但し、特殊な状況がある場合は、税関は不定期の検査を行うこととなります。
② 信用喪失企業
信用喪失企業降格要件は、以下の通りです。
- 密輸犯罪または密輸行為がある場合。
- 1 年以内の税関監督規定違反回数が、前年度の税関申告書・輸出入備案等の総数の 0.1%を超え、且つ、税関の罰金累計金額が 100 万元を超過した場合。
- 通関企業の場合、1 年以内に税関の監督管理規定違反回数が前年度の税関申告書・輸出入境備案総票数の 1 万分の 5 を超え、かつ、税関の罰金累計金額が 30 万元を超えた場合。尚、前年度の税関申告書・輸出入備案等の総数が把握できない場合は、罰金の金額で判断される。
- 税金の 3 か月超の滞納
- 罰金の 6 か月超の滞納。没収された違法所得や貨物等の価格が 1 万元超である場合。
- 検査拒否。検査非協力。税関員に対する賄賂の提供により、罰金や刑事責任に問われた場合。
この内容は、制度改定前と概ね同様ですが、若干の定義の明確化が行われている部分があります。
因みに、信用喪失企業の輸出入検査率は 80%以上と規定されていますが、公開情報によれば、実際は 94%となっており、ほぼ全貨物の開封検査を受ける状況となります。
尚、輸出入食品安全管理規定・輸出入化粧品監督管理規定に対する違反、若しくは、固体廃棄物の密輸により、刑事責任を追及された場合。若しくは、固体廃棄物の密輸により、税関から 250 万元超の罰金を受けた場合は、重要信用喪失企業リストに掲載されます。
3.制度改定の疑問点
今回の制度改定に当たり、最も関心が高いのは、現制度の「一般認証企業」が、どの様に扱われるかでしょう。その他企業に振り分けられれば、それまで享受していた優遇が受けられないことになります。
今回の改定に対する、税関総署の解説では、本件に関しては、「制度改定に際して、一部の既存中間ランク企業に対しては、今までの便利化措置を保留、若しくは、引き上げ」という簡単な記載は有りますが、詳細は不明です。今後公布予定の実施細則、及び、実務運用を待つ必要があります。
水野真澄(水野コンサルタンシーグループ代表)