中国における税関一体化の実務的な影響に付いて 執筆日:2018年1月5日
2020-05-30中国における税関一体化の実務的な影響に付いて ****
「全国税関一体化改革の推進に関する公告(税関総署公告 2017 年第 25 号)、以下、25 号公告」により、2017 年 7 月 1 日から、全国の税関管理が実施されています。
税関一体化により、手間・コストの削減につながる部分もありますが、同時に、課税強化につながる面も出てきています。
1. 実務上のメリット
税関一体化によるメリットは、以下の様な内容があげられます。
① 通関・申告地の選択
税関一体化により、通関・申告納税・検査地域の選択ができる様になります。
つまり、輸出入に際しての通関・申告・検査の場所を、輸出入行為を行う企業の所在地、若しくは、実際の入出国地の何れかの税関で選択する事がでます。
これにより、保税転送手続は、今までより限定した状況で実施される事になりますが、その条件は、「保税転換輸送業務の規範化に関する公告(税関総署公告 2017 年第 48 号公告)」に規定されています(2018 年 1 月 1 日施行)。
尚、その中で、複合一貫輸送貨物(中国内で、複数の輸送機への積み替えが行われる場合)の場合、企業は税関に複合一貫輸送手続の申請を行う事が認められ、より簡便な保税転送手続が可能であると規定されています。
② 申告・貨物引取の迅速化
税関一体化と同時に、税関申告・貨物引取手続も変更されています。
税関総署公告 2016 年第 62 号により、2016 年 11 月から、一部の商品に限定して、「自主申告・自主納税」手続が試行されていましたが、これが、全ての商品に拡大されました。この制度は、企業の税関申告・納税により貨物の引取を認め、事後で、通関価格・HS コード・原産地をはじめとする事後の抽出検査を実施するものです。
通関申告に際しての税関審査が軽減された事から、貨物引取の迅速化が実現しています。
2.実務におけるデメリットとリスク
税関一体化は、メリットだけではなく、税関調査の厳格化、徴税強化につながる面もあります。税関一体化に際して、青島・上海・広州(黄埔)にリスク予防管理センターが設置され、北京・天津(京津)・上海・広州(黄埔)に、租税徴収管理センターが設置されました。
租税徴収管理センターは、租税徴収の妥当性(HS コード判定、関税評価額の妥当性等)に対して、以下の通り判断権を持つことになります。
● 京津
農林類、食品類、薬品類、軽工業類、玩具類、紡績類、航空機類等(税関分類 1 章~ 24 章、30 章、41 章~ 67 章、88 章、93 章~ 97 章、3461 類を含む)
● 上海
機電設備、輸送機等(税関分類 84-87 章、89-92 章、2286 類を含む)
● 広州
化学原料、高分子、エネルギー、鉱産物、エネルギー、金属等(税関分類 25-29 章、31-40 章、68-83 章、2800 類を含む)
つまり、各地の税関が行ってきた HS コード判定、関税評価額の妥当性を、全国共通の 1 機関が判断し、情報が共有化される事になります。このため、中国各地で通関を行っている場合の、HS コードの統合、関税評価額の整合性を要求される可能性が高くなり、実際に、その様な要求を受ける企業が増えてきています。
尚、税関総署公告 2016 年第 62 号では、違反行為を自主的に報告した企業には処罰の減免を、過少申告額を自主的に納付した企業には延滞金の減免を規定していますので、その対応が適用されるものと思われます。