社名登記制度変更の実務面での影響

2022-05-06

2021 年 3 月 1 日に「企業名称登記管理規定」が改定され、中国における社名変更手続きが変わってきています。制度変更の目的は、許可制から自主申告制への変更による、手続の合理化・迅速化と発表されていますが、実際には、便利になった点も有れば、不便になった点もあります。その概要は、以下の通りです。

1.実務手続の変更

2021 年 3 月 1 日の制度変更により、社名登記の実務手続は、以下の通り変更されました。

①  制度変更前

所管市場監督局の窓口に、以下の必要書類を提出し、同局の審査を受けた上で登記が認められていました。

  • 申請書、認証済の出資者現在事項全部証明書原本、及び、その翻訳(翻訳資格を有する会社に委託する必要あり)。出資者の法定代表人パスポートコピー。
    • 同一地域(通常は市)内において、類似業種の企業において、同一商号が登記されている場合は、その会社が発行した承諾書原本。
    • 尚、世界 500 強企業の商号の場合は、「商号所有権会社の授権書原本」の提示が必要であり、直接・間接的な出資が予定されている場合のみ受理される。

②  制度変更後

制度変更後は、市場監督管理局のシステムに申請する社名を提出することになります。 この時点では、上記の必要書類の提出は不要です(但し、世界 500 強企業の商号の場合は、授権書提示が必要)。

結果として、同局のビッグデータから、同一、類似社名が登記されていないか(文字、発音などが考慮される)が審査され、リスクレベルが、高・中・低の形で表示されます(注)。 リスクレベルが高の場合は、関連書類(商号を使用する権利を有する事の証明書類等)をアップロードし、審査を受ける必要があります。一方、リスクレベルが中・低の場合は、自動的に登記が認められます。

注: 500 強企業の場合は、自動的にリスクレベルが高となります。

2.制度変更の意義

制度変更前は、市場監督局の窓口に必要書類を提示して、審査を仰ぐ形となっていたのが、変更後は、オンラインで社名のみを提出し(500 強企業の場合は、この段階で授権書のアップロード必要)、データ分析により、リスクレベルが判定されます。その上で、高レベルのみ、入念に審査し、中・低レベルは、自動的に登記を認めた上で、企業に責任を負わせる制度となりました(注)。

注: 「企業名称登記管理規定(国務院令 2020 年第 734 号)」・第 16 条には、申請者の提出した情報の問題により、他企業の合法的な権利を侵害した場合は、法に基づき責任を負う必要があることが定められています。

3.制度変更による改善・改悪

制度変更により、便利になったこと、逆に、不便になったことが有ります。その、概要は、以下の通りです。

①  便利になった点

  • 1)社名申請時に提出する書類が軽減された。
    但し、同じ書類が、次のタイミング(市場監督局での営業許可証申請)で必要になりますので、時期的な問題であり、根本的な軽減ではありません。
  • 2)オンライン申請となった。
    以前の様に、市場監督局の窓口に行く必要は無くなりました。但し、申請した社名が、不明な理由により却下された場合は、窓口に出向き質問する必要があります。
  • 3)リスクレベル中・低の場合は、即時登記が可能となり、時間が短縮された。

②  不便になった点

  • 1)事前相談・確認が出来なくなった。
    制度変更前は、市場監督局の窓口で、使用可否の相談・交渉が可能であり、使用に問題がある場合は、どの様に変更すれば良いかが、ある程度判断できましたが、これが出来なくなりました。
  • 2)登記された社名の留保期間が短縮された。
    受理された社名は、制度変更前は、6 か月の留保期間があり、また、市場監督局の同意が有れば、延長も可能でしたが、この期間が 2 か月に短縮され、また、許可は不可となりました。