中国法人の間接的な持分譲渡に対する課税 執筆日:2015年3月7日
2020-05-31中国法人の間接的な持分譲渡に対する課税
外国企業が中国で不動産開発、権益の取得、その他の事業展開を行うに際して、直接的な中国投資ではなく、香港、シンガポール、若しくは、ケイマン等のタックスヘイブンに特定目的子会社を設立し、そこから間接出資を行う場合があります。
この様な形態をとる理由の一つとして、エグジットの利便性が挙げられます。つまり、中国持分の譲渡ではなく、特定目的子会社の持分を譲渡すればエグジットが可能であるため、手続が簡便・迅速となるためです。
但し、この様な間接持分譲渡方式(中国子会社に対する投資目的会社の売却)は、合理的実態が無い場合は、中国子会社の持分譲渡に準じて、中国で譲渡益課税が行われます。
この合理性判定に関するガイドラインを定めたのが、「非居住者企業の財産企業の間接譲渡の所得税に関する若干の問題の通知(国家税務総局 2015 年第 7 号)」です。
1.合理性が無い場合とは
間接持分譲渡の合理性とは、中国出資を行っている中間企業(以下、国外企業)の経済実態の有無、納税状況、会社の存続期間等の総合判断に基づきます。
国外企業が軽課税国に設立されており、且つ、会社の価値の大部分が中国企業に対する投資、中国事業の資産に由来している場合など(中国投資・資産以外の価値が殆ど無い場合)は、合理性が無いと見なされます。
また、以下の状況に該当する場合は、状況如何を問わず合理性を否定されます。
① 非居住者企業の出資持分の 75%以上の価値が、直接・間接的に中国の課税財産に由来
している場合。
② 間接持分譲渡前 1 年間の何れかの時点で国外企業の(現預金以外の)資産総額の 90%
以上が、直接・間接的に中国内での投資により構成されていた場合。
または、間接持分譲渡発生前 1 年以内の非居住者企業の収入の 90%以上が直接・間接
的に中国内を源泉としている場合。
③ 間接持分譲渡の対象となる非居住者企業の管理運営実態が、当該国に無い場合。
④ 間接持分譲渡による国外納税額(所得税額)が、中国で負うであろう税額を下回って
いる場合。
2.みなし課税の適用を受けない場合
国外会社の状況如何に拘わらず、以下の場合はみなし課税の対象からは除外されます。
① 親子・兄弟間の持分譲渡
持分譲渡・譲受企業間に、直接・間接で 80%以上の持分関係を有している場合。及
び、持分譲渡、譲受企業が、同一支配者により直接・間接的に 80%以上の持分を所有されている場合。
但し、非居住者企業の出資持分の 50%超の価値が、直接・間接的に中国内の不動産に
由来している場合、上記の出資比率要件は(80%ではなく)100%となります。
② 租税回避行為ではない場合
国外企業の持分譲渡が中国における所得税課税額を減少させない場合。
③ 合併による所有権移転
持分譲受側が当該企業、若しくは、それと支配関係を有する企業の持分で、持分譲渡
対価を全額支払う場合。
3.間接持分譲渡の発見
国外会社の持分譲渡は、(中国企業の出資者変更などを伴わないため)中国内の登記情報には影響を与えません。
では、どの様にして税務機関はこの様な間接譲渡を認識するのでしょうか。事例を見ると、企業に対する質問、プレスリリースの内容、ウェブサイトの情報など、各種の方法で間接譲渡を発見し、課税するケースが出てきています。