【Mizuno-CH中国ビジネス情報】ダイジェスト版Vol.50
2016-08-08- 【中国ビジネス・トレンド】 外資企業の配当について
◎【中国ビジネス・トレンド】
外資企業の配当について
Q 1.外資企業の配当について教えてください。 A.まず、会計年度(12 月末)・企業所得税の確定申告(翌年 5 月末)が終了し た段階で、利益処分の決議を行う事ができます。 外資企業の最高意思決定機関は、中外合資企業・中外合作企業の場合は董事会、 独資企業の場合は出資者(単独出資者の場合)・股東会(出資者が複数の場 合)となりますが、ここで決議を行います。 利益処分は、「過年度損益の補填 → 三項基金積み立て → 配当」の優先順位とな りますので、三項基金積み立て後の利益(前年度繰越利益と当期純利益の合計 から三項基金積立額を控除した金額)が配当可能利益となります。
Q 2.三項基金とは何ですか? A.三項基金は準備基金・企業発展基金・福利基金の略称ですが、この内、準 備基金と企業基金は資本の部に計上され、福利基金は負債の部に計上されます。 この内、必ず積み立てなくてはいけないのが準備基金であり、資本金の半額に 達するまで、毎期の純利益の最低 10%を積み立てる必要があります。 企業発展基金は、独資企業の場合は任意となります。中外合弁企業の場合は董 事会で積立金額を決議する事になるため、ノミナルな金額の積み立てをすれば 問題ありません。 この二種類の積立金の目的は、剰余金を減らす事(処分可能利益を減らす事) で、当該金額を社外流出(配当)できなくする事です。 この様な形で企業内留保を増額して、企業の財務体質の健全性を保つことが積 み立ての目的ですので、当該外資企業の経営には役立ちますが、出資者の権利 とは相反する面もあります。この様な事を検討した上で、積立額を決定する必 要が有ると言えます。 福利基金の積み立ては任意です。福利基金は従業員の集団福利に使用する引当 であり、企業自身のために使用する事は認められていません。但し、福利費は 損金算入制限が有る経費ですので(企業所得税法第 40 条に基づき給与総額の 14 %以内)、福利基金の積み立てという、経費計上を伴わない形で支払い原資を 確保するのは一つの考え方とも言えます。
Q 3.配当送金に際して必要な書類は何がありますか? A.配当送金・外貨への換金に際して必要となる書類は以下の通りです(現在 では、外貨送金だけではなく、人民元建てで対外送金する事も可能)。 1)確定申告書 2)利益処分に関する董事会決議書、股東会・出資者の決議書 3)配当を実施する企業の外貨登記証 4)その他銀行が要求する書類 過去には、会計監査報告書・検資報告書も提示が求められていましたが、匯発 [2014]2 号により提示が免除されました。 尚、配当額が US$5 万を超過する場合は、匯発[2013]30 号に基づき、所管税務局 での備案が必要になります。
Q 4.配当に対して課税は行われますか? A.2008 年の企業所得税法改定以降、外国出資者に対する配当には、10%の企 業所得税課税が行われます。 香港、シンガポールなどに対する配当に付いては、租税条約による軽減税率 (25%以上の出資者に対する配当は 5%の税率)が適用されます。 この優遇を享受するためには、国税発[2009]124 号に基づく所管税務局の許可 取得が必要になります。審査に際しては、迂回投融資規制の観点より、出資者 である企業の会計監査報告書などの提示が求められ、会社実態が審査されます。 このため、出資者がペーパーカンパニーである場合は、優遇措置の享受は制限 されます。
以上