重要法令等の解説(簡易版)【水野コンサルタンシー中国ビジネス情報】ダイジェスト版Vol.249
2025-01-24【中国ビジネス・トレンド】重要法令等の解説(簡易版)
1.中華人民共和国増値税法の公布
2024年12月25日に、「増値税法」が第十四節全国人民代表大会常務委員会第十三会議を通過し、2026年1月1日より施行されることになりました。
今回は、概要と施行の影響について解説します。
1)増値税法の概要
現行の増値税が導入されたのは、1994年1月1日であり、同時に、営業税と消費税も導入されました(消費税は、特定の奢侈品のみを課税対象とする)。導入当初は、物品売買、及び、加工補修役務に対しては増値税が課税され、その他の行為に付いては営業税が課税されていましたが、税種が分かれることによる課税の不平等などが生じるため、営改増(流通税改革)が実施され、2016年に営業税は廃止。付加価値税は、増値税に統一されました。
ただ、1994年に改定された増値税暫定条例(その後、改定は実施)はそのままであり、営業税から増値税に切り替えられた項目は、財税[2016]36号が根拠規則となっていたため、課税規則が二つに分かれた状況でしたが、増値税法施行により統合されます。
増値税法には、来年(2026年)1月1日の施行に伴い、現在施行されている「増値税暫定条例」が廃止されることが規定されています。
2)増値税法施行の影響
(1)課税対象と税率
課税対象行為が、物品売買、サービス、無形資産、不動産に拡大されていますが、これは、増値税暫定条例と財税[2016]36号を合わせた内容であり、特段の変更はありません。税率は、以下の通りとなっていますが、これも、原則として現行のままです。
一応、小規模納税人に関しては、現在は、原則3%ではあるものの、不動産関係のみ5%が適用されています。これがどうなるか(3%に統合されるか否か)に付いては、実施細則の公布等を待つ必要が有ります。
1)物品販売、加工補修役務、有形資産リース、輸入貨物:13%
2)物流、郵便、基礎電信、建築、不動産賃貸、不動産販売、土地使用権の販売、及び、以下の分品の販売:9%
● 農産品(食糧を含む)、水道水、暖房、石油ガス、天然ガス、食用植物油、冷気、熱水、ガス、住居用石炭製品、食用塩、農機、飼料、農薬、農業用フィルム、化学肥料、メタンガス、メチルエーテル、図書、新聞、雑誌、映像製品、電子出版物
3)サービス、無形資産:6%
4)輸出:ゼロ税率
5)中国本土内単位・個人が提供する一定のクロスボーダーサービス、無形資産販売:ゼロ税率
6)簡易納税方式適用(小規模納税人):3%
(2)一般納税人基準
第9条により、年間500万元を超過する課税売上と規定されていますが、これは、「増値税小規模納税人基準の統一に関する通知(財税[2018]33号)」の内容通りであり、変更はありません。尚、この基準を下回る納税者でも、健全な会計体制を構築している場合は、一般納税人の申請は可能です。
(3)未控除税額還付
未控除税額(売上税額と相殺できない、仕入税額超過部分)に付いては、繰越・還付を納税者が選択できることが、第21条に規定されています。
元は、この様な仕入税額は、繰り越すことしかできず、税務ポジションによっては、未控除税額が累積し、資金負担が生じる例が少なからずありましたが、財政部・税務総局公告2022年第14号・17号・21号等により、2022年に還付申請が認められました。
これが、正式に税法に織り込まれた事になります。
(4)金利に関する仕入控除
第22条・(五)には、飲食サービス、日常サービス、娯楽サービスに関する増値税は、仕入控除対象外と規定されています。
財税[2016]36号・付属文書1・第27条には、旅客、融資、飲食、日常娯楽各サービスに関する支払い増値税は仕入控除不可であることが規定されていました。その後、国内旅客輸送費用は、財務部・税務総局・税関総署公2019年第39号により控除可能になりましたので、今回の変更により、新たに、融資サービスに関する支払い増値税の控除が認められる可能性があると思われますが、この点は、実施細則などを待つ必要が有ります。
2. 個人養老金に対して繰延税金優遇措置が全国で実施されます
個人養老金の個人所得税優遇措置に関する実施公告(財政部・税務総局公告2024年21号)
2024年1月1月より個人養老金に対して繰延税金優遇措置が全国で実施されます。
尚、本政策以前に、国弁発(2022)7号により36都市(地区)で個人養老金優遇措置が試行されていましたが、今回は適用範囲を全国に広げるものです。
3. 「中華人民共和国関税法」と関連規定に基づき、2025年1月1日より一部商品の輸入関税税率と税目が調整されます
2025年関税調整に関する公告(税委会公告2024年第12号)
4. 上場会社の制限株譲渡所得に対する個人所得税申告の公告(国家税務総局、財政部、中国証監会公告2024年第14号)
●個人が上場会社の制限株を譲渡し、個人所得税を納付する時、納税地は当該上場会社の所在地です。
●証券機構が制限株の譲渡所得に関する個人所得税を源泉徴収する場合、自然人電子税務局又は証券機構の所在地主管税務局で個人所得税を申告できます。
●納税人が自己申告する場合、自然人電子税務局又は当該上場会社の所在地主管税務局で個人所得税を申告できます。
5. 対米国関税課税に関する14回目の不適用延長に関する商品リストの公布
対米国差別的関税不徴収に関する延期公告(税委会公告2024年第10号)
「対米国関税課税に関する14回目の不適用延長に関する商品リスト公告(税委会公告2024年第3号)」です。リスト掲載商品の報復関税非適用期限は2024年11月30日でしたが、これが、2025年2月28日まで再度延長されます。