輸出監管倉庫とはなにか?【水野コンサルタンシー中国ビジネス情報】ダイジェスト版Vol.235

2024-08-20

【中国ビジネス・トレンド】輸出監管倉庫とはなにか?

輸出監管倉庫とは、どの様な倉庫でしょうか?
活用に際しての注意点を含め解説します。

1.輸出監管倉庫とは

輸出監管倉庫の根拠規則は、「税関が輸出監督管理倉庫及びその保管貨物に対する管理弁法」(税関総署2005年第133号令より公布、税関総署令2023年第263号より最新修正)です。
この倉庫は、輸出前の貨物を搬入すれば、輸出通関ができる倉庫で、倉庫内は、保税状態となります。監管倉庫に保管できるのは、以下の貨物です。
(一)一般貿易の輸出貨物
(二)加工貿易の輸出貨物
(三)その他の税関特殊監督管理区域、場所から転入した輸出貨物
(四)輸出配送型倉庫では、輸出貨物の組立てを行なう為に輸入した貨物、及び輸出監督管理倉庫の貨物包装を交換する為に輸入した包装資材
(五)その他の税関の輸出手続を済ませた貨物

(1)保税倉庫の特徴
監管倉庫の解説の前に、「保税倉庫」というものは、輸入型と輸出型に大きく分かれています。
外国から輸入した貨物を、保税状態で一時保管するのが保税倉庫(根拠規則は、「税関の保税倉庫及び保管貨物に対する管理規定」)。
中国国内の貨物を輸出前に一時保管するのが輸出監管倉庫です。
よって、輸出を前提として、先に(搬入時に)、通関が認められるのが監管倉庫となります。

(2)輸出監管倉庫の種類
輸出監管倉庫は、(1)の通り、輸出前の貨物を搬入する倉庫ですが、なぜ、この倉庫に搬入するかというと、搬入時に通関が切れるためです。
これにより、中国企業としては、以下のメリットが期待できます。
● 倉庫搬入時に、外国企業、保税区域に登記された企業に所有権を移転でき、在庫をなくすことができる。
また、監管倉庫内で所有権を持った外国企業・保税区域企業は、倉庫内で、他の外国企業・保税区域の企業に所有権移転ができる。
● 複数社の貨物を倉庫内で統合して、コンテナ積みができる。

因みに、監管倉庫は、「輸出型」と「転廠型」の2種類に分けられます。
輸出型というのは、文字通り、輸出前の貨物を搬入する、典型的な監管倉庫ですが、転廠型は、再度、中国内に貨物を戻すものです。この場合、貨物の動きは、保税区域游のようになります。

2.輸出監管倉庫使用の注意点

輸出監管倉庫を利用するにあたっての注意点は、監管倉庫への搬入(輸出通関)は、みなし輸出の要件(財税[2012]39号)を満たさないという事です。
見なし輸出とは、保税開発区に搬入するに際して、増値税輸出還付が認められる条件です。
⇒ 保税区以外の保税開発区に搬入し、外国企業、若しくは、保税区以外の保税開発区に登記された企業から貨物代金を受領する場合、みなし輸出の要件を満たし、増値税輸出還付が認められます。

つまり、監管倉庫搬入時に輸出通関は切りますが、その段階では、増値税の輸出還付は受けられず、海外に輸出された時点、総合保税区・保税物流園区等の保税開発区に搬入された時点で、還付が認められます(財政部・税務総局・税関総署公告2020年第4号に基づき、国際航行船舶に燃料油を提供する場合を除く)。
転廠型監管倉庫は、貨物が輸出されない(再度、中国に戻る)ため、増値税輸出還付は受けられないので注意が必要です。
⇒ 来料加工企業(元から増値税輸出還付適用不可)なら活用できますが、進料加工企業の利用は、税コストが無駄になります。

3.かつて存在した両倉合一倉庫

2009年に、東莞では、両倉合一というモデルが試行されました。
これは、輸出監管倉庫と保税倉庫を合体させて、保税区域游と同じオペレーションができるようにしたものです。
保税開発区(保税物流園区・保税物流中心B型等)を使えばよいではないかと思われがちですが、東莞第一号保税開発区である虎門保税物流中心が稼働を開始したのが2010年5月ですので、この倉庫は、東莞企業のコスト削減に寄与すると期待されました。
ただ、両倉合一倉庫を活用した場合、貨物の動きは、保税区域游同様ですが、増値税輸出還付が受けられません(貨物が輸出されないため)。
上記の通り、来料加工企業の場合なら良いのですが、当時の東莞・深センでは、来料独資転換の大号令がかかっている状況(進料化の推進)で、利用が進まず、黄埔税関は、両倉合一の許可を更新せず、制度廃止となりました。
現在では、両倉合一モデルは、東莞だけでなく、他の地域でもありません。

水野コンサルタンシーグループ代表 水野真澄