【水野コンサルタンシー中国ビジネス情報】ダイジェスト版Vol.192
2023-04-28【中国ビジネス・トレンド】
■ 華東ビジネス・トレンド
華東地域(上海市、江蘇省、浙江省)の最近のビジネストピックスを、地方通知などを踏まえてご紹介します。
1.臨港新片区における一部のクロスボーダー貿易・投資のハイレベルな開放のトライアルポイントの範囲拡大の通知
上海自由貿易試験区臨港片区をトライアル範囲としたクロスボーダー貿易・投資の開放政策のうち、QFLP(適格外国人投資事業有限責任組合)の中国国内でのプライベートエクイティ投資などの投資活動の許可範囲を上海市全域に拡大、銀行が非金融企業の外債登記を直接管理する政策の浦東新区までの拡大、の 2 点に関する通達です。
当通知に以下 2 件の文書(手引書)が添付され、それぞれ具体的な操作手順を説明しています。
- 《上海市の適格海外 QFLP トライアルポイント外貨管理操作の手引き》
- 《上海市の銀行が非金融企業の外債契約(変更)登記業務の操作手引き》
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2.上海市サービス業発展先導資金項目の申請指南(2023-2024)(滬発改服務[2023]7 号)
上海市における先端的で高付加価値のサービス業の発展、「上海サービス」というブランド構築の支援のための資金の申請方法、必要書類、申請手順等を説明したガイダンスです。 市の発展改革委員会、経済情報化委員会、商務委員会、財政局で組織した「上海市サービス業発展先導資金評価審査チーム」から各区の発展改革委、経済委(商業委)、財政局に向けに通達したものです。
資金申請する企業・組織に求められる書類に「自己調達資金出資証明」があり、対象項目の総投資額の 60%以上を自己調達資金(銀行ローン等外部調達資金も含む)で賄えることの証明が求められています。 企業・組織は複数の項目に対する資金の申請が可能なるも、資金供与されるのは 1 年間 1 項目のみです。 申請を受領した各区は、毎年 3 月 31 日から 8 月 15 日までに上海市「発展改革委専用項目管理プラットフォーム」に登録を行い、仲介サービス機関の「専門家委託方式」等を通して、経済効果、社会的効果、革新性等に基づいて篩分けと優先順位設定を行います。
当通知には下記の 4 つの付属資料が添付されています。
- 項目資金申請報告編制要綱
- 申請企業・組織の真実性及び信用に関する承諾レター(書式)
- 「法人一証通(電子署名付き)」事項説明
- 各区の上海市サービス業発展先導資金の窓口責任者名・連絡電話リスト
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3.上海市イノベーション型企業本部認定奨励管理弁法(滬発改規範[2023]3 号)
イノベーション型経済を発展させ世界的影響力を持つ「科学技術イノベーションセンター」の建設を目指す上海市が、高度新技術分野の企業組織や先端研究開発センターなど多機能を融合した組織・「イノベーション型企業本部」の設立を促進させる目的で制定した弁法です。 「イノベーション型企業本部」の評価認定規準と奨励政策とその管理方法を具体的に定めています。
「イノベーション型企業本部」の主な認定条件:
- (1)資産総額 2 億元以上、或いは時価総額 20 億元以上
- (2)年間売上額 1 億元超え、或いは直近 3 年間の売上額の年平均複合成長率が 20%以上
- (3)上海市に研究開発、販売、決済等の複合型の本部機能を持つこと(上海市以外で二社以上の分支機構を有するもしくは対外投資している企業である必要がある)
- (4)主要製品或いはサービス項目が国家『戦略性新興産業重点産品とサービス指導目録』と関連重点計画分野に属し、また『デジタル経済及びその核心産業統計分類(2021)』の核心産業範囲にあること
- (5)年間売上額に占める研究開発費の割合が 5%以上(ソフトウエア・情報サービス、集積回路設計、バイオ医薬研究開発アウトソーシングなどのサービス業企業は 10%以上)、或いは年間研究開発費総額が 5,000 万元以上、そのうち国内で発生した費用が最低 60%を占めること
- (6)研究開発従事者が全従業員の 10%以上(ソフトウエア・情報サービス、集積回路設計、バイオ医薬研究開発アウトソーシングなどのサービス業企業は 20%以上)、或いは研究開発者総人数が 100 人以上
- (7)主要製品或いはサービスの核心的な知的財産権(発明特許、集積回路図設計占有権、ソフトウエア著作権を含む)を 15 以上保有、或いはイノベーション新薬、高度技術を含む改良型新薬、イノベーション二類あるいは三類医療機械の製品登録証書等を保有する
- (8)以下いずれかの認定を取得し、且つまだ有効期限内の企業は優先的に認定できる:ハイテク企業、先端研究開発企業、国家・上海市企業技術中心、技術革新示範企業、上海市特許工作示範企業 なお、これらの条件を全て満たしていない企業でも、社会発展や業界をリードすると市政府が認めた場合は認定される可能性があります。
以下の 3 つの方面の奨励政策が示されています。
- (a)設立助成金:2022 年 1 月 1 日以降上海市で設立登記した、或いは転入した払い込み資本金 1 億元を超す「イノベーション型企業本部」に、最高 500 万元までの助成金を支給
- (b)賃料助成金:上記(a)の企業のオフィスに対する最大 1,000 平米までのオフィス面積に対して、平米当り 8 元を限度として、賃貸料の 30%を、所属区から 3 年間にわたり助成
- (c)販売収入目標達成時の奨励金:2022 年 1 月 1 日以降、販売収入が初めて 5 億元、10 億元、15 億元に達し、且つ所属区域に対し 1,000 万元以上の価値の増加に相当する総合的な貢献を果たした時に、それぞれ 500 万元、300 万元、200 万元の奨励金を支給
さらに「戦略性新興産業専門資金」の対象(イノベーション製品の部品、原材料、ベーシカルソフトウェアの自主開発で突出的成果)に合致する企業本部への支援金(第九条)、「知的財産権専門資金」の対象(「高付加価値特許育成センター」の設立)に合致する企業本部への支援金(第十二条)も、それぞれ具体的な金額が示されています。
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4.上海市サービス貿易促進指導目録(2022 年版)(滬商服貿[2023]5 号)
毎年更新されている上海市の「サービス貿易促進のための指導目録」の最新版です。 前回版(2021 年版)同様、下記 11 分野のサービス業を対象に、それぞれの発展促進目標と重点育成対象を、各々具体的な数値を交え、示しています。 なお、最新版(22 年版)は、前回版からの部分修正、目標数値緩和をした部分が 3 か所あります。
対象 11 分野:
- (1)運輸:「大型国際貨物代理企業」、「優れた専門性顕著な中小型国際貨物代理企業」など
- (2)旅行・観光:「スター級ホテル」、「経済型ホテルチェーン」など
- (3)電信、計算機、情報:「ソフトウエア開発」、「データ処理、情報システム運営・メンテ」、「最新インターネット情報技術とコンテンツサービス」、「デジタルコンテンツソフトウエア」、「集積回路研究開発、設計」
- (4)工事請負、建築:「ミドル・ハイエンド建築、工事」、「工事設計」
- (5)専門職能:「コンサルタント、会計、法律、広告、人材資源」、「会議、展示会」
- (6)文化:「新聞、出版」、「文化芸能、映像」、「総合サービス(ゲーム、アニメ、美術工芸、デザイン、文化交流)」
- (7)医薬衛生:「先端医療」、「リハビリテーション」、「老齢介護」、「中医薬・漢方標準化、人材育成」
- (8)体育・スポーツ:「体育催事、競技会」、「スポーツ関連の仲介、手配、コンサルタント」、「競技会・スポーツ関連の知財権・商標権交易」
- (9)アウトソーシング:「IT・情報技術(ITO)」、「ビジネスプロセス(BPO)」、「ナレッジプロセス(KPO)」
- (10)デジタル貿易:「クラウドサービス」、「デジタルコンテンツ」、「デジタルサービス」
- (11)サービス貿易モデル基地:「サービス貿易業集中区域」、「サービス貿易業開発区・園区」
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5.『2022 年度個人所得税総合所得確定申告・納税の郵送申告手続き』に関する通告(国家税務総局上海市税務局通告 2023 年 2 号)
国家税務総局『2022 年度個人所得税総合所得確定申告・納税手続きに関する公告』(国家税務総局公告 2023 年 3 号)に基づき公布された「確定申告・納税の郵送方式」に関する通達です。 電子的手続き(個人所得税アプリケーション、ウェブサイト等)も窓口での申告も不便な個人は郵送による申告・納税を認めるとしています。但し、下記の条件を満たす個人に限られます。
- (1)雇用先が上海市にある者。雇用先が無い者は戸籍或いは居住地又は収入源が上海市の者。
- (2)国家税務総局公告 2023 年 3 号の第三条の規定に定める確定申告・納税が必要な者
- 既に納税済みの金額が納税必要額を超えており、還付請求をする者
- 22 年度の総合所得が 12 万元を超え、且つ補充納税が 400 元以上になる者
当通告には郵送受付の宛先、住所、電話の一覧表と郵送手続きの必要書類が記されています。郵送の期限は 23 年 6 月 30 日着までです。
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6.『全面デジタル化電子発票発行のトライアルポイントの全面拡大業務の手配』に関する通告(国家税務総局上海市税務局通告 2023 年 1 号)
上海市で段階的なトライアルが進められてきた「全面デジタル化電子発票」の使用範囲を拡大することに関する通告です。 本通告の公布日以降、上海市で新たに設立登記する納税人は「全面デジタル化電子発票」の試行範囲に加えられます。 「全面デジタル化電子発票」の試行対象となった納税人は、従来の「増値税電子専用発票」及び「増値税電子普通発票」は税務局から再度発行しません。 但し、特殊事情があり「全面デジタル化電子発票」が使用出来ない納税人は、主管税務機関に申請し、従来の発票方式の継続が可能です。
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7.『上海市の創業支援政策を更に完全化する施策』に関する通知(滬人社規[2023]1 号)
起業・創業を支援し、就業状況の改善を図る政策です。 創業組織が負担する従業員の社会保険料の補助、創業の支援金/奨励金、並びに創業支援施設(創業孵化基地、学校)への経費補助が、詳細に示されています。 それらの主な財源は、市と区の「就業補助資金」です。 創業支援の対象者は幅が広く、「上海市戸籍の者」以外に、「非上海戸籍者」のうち「上海市居住証を持つ者」、「香港マカオ台湾籍の上海市居住者」、「上海市の外国人居住証保有者」、「留学生で上海市で起業する者」まで含まれます。
支援内容は下記の 4 項目。
- (1)創業当初の雇用主負担の従業員社会保険料への補助金
- (2)創業者の事業所賃貸料への補助金
- (3)創業時の 1 回限りの補助金
- (4)創業奨励専用補助金
- 優秀創業団体及び優秀創業組織への奨励金
- 創業孵化基地に対する評価別の運営経費補助
- 大学、中等職業学校の「創業指導ステーション」への業務経費補助
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8.『越境Eコマース小売商品輸入申告のバーコードの規範化』に関する通知(中華人民共和国上海税関通告 2023 年第 1 号)
中国税関総署の指令に基づき、上海税関が越境 E コマース小売商品輸入業務の便宜のため「バーコード」の規範化を推進する旨の通知です。 上海税関管轄区域内で越境 E コマース小売商品の輸入企業に対し、2 月 10 日から、『越境電子商務統一版情報化システムの企業アクセス申告文の規範の改訂に関する公告』(税関総署公告 2018 年第 113 号)の付属 1 の『税関越境統一版システム企業アクセス申告文規範(試行)』の規定に従い、輸入品リストに正確なバーコードを記載するよう求めています。
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9.『本部企業の高品質発展の促進のための若干の措置』の公布に関する通告(中華人民共和国上海税関通告 2023 年第 2 号)
上海市の「本部企業」(本部型機構)の集中運営と機能向上による経済の高品質な発展のための上海税関の対応措置を示した通告です。 下記の 10 項目で「本部企業のニーズに応える」としています。
- (1)「ワンストップ式」通関サービス:
- 全天候優先予約/ドアツードア検査/「インターネット+検証」全プロセスの一貫処理サービス、専属要員によるマンツーマン対応・業務指導
- (2)保税監督管理の一体化:
- 本部単位での一括管理、上海税関管轄内の加工貿易業務の統一窓口管理、本部企業集団内の保税品の保管・流通の一本化管理
- (3)徴税一本化管理サービス:
- 特許権使用料、特殊経済関係者間取引補充納税等の統一窓口管理、RCEP 原産地材優遇政策へのサービス、「関税保証保険」の試行
- (4)国産大型航空機戦略へのサービス:
- 本部企業の自社生産航空機とメンテナンス機材輸出の包括通関管理(「ERP 情報システム+快速審査」試行)、輸入部品減免税審査迅速化、徴税/担保相殺
- (5)大型クルーズ船建造業のレベルアップ、効率化促進:
- 創新的保税管理方式による大型クルーズ船建造支援(加工貿易方式での建造資材輸入/完成船輸出の自主管理)、クルーズ船専用通関ゲートでの迅速通関
- (6)保税メンテナンス業態の発展、レベルアップ支援
- 総合保税区内での航空宇宙、船舶、軌道交通、建設機械、NC 工作機械、通信設備、精密電子、先端医療設備等のメンテナンス業務サポート、ほか
- (7)国内外の両方の市場と両方の資源の活用を支援
- 国内外のストック連携と世界的資源配置、「バラ積み貨物供給チェーンセンター」設立、輸出加工業支援、中継貿易方式の医療機器通関利便化
- (8)重点産業サプライチェーンの安定の保障
- 情報化プラットフォームによる集積回路など重点産業のサプライチェーンの安全度評価と通関利便化措置、輸入化粧品ラベル表示の審査プロセス簡便化
- (9)企業信用の優先的育成
- 「信用育成重点企業名簿」への優先登録、集団式/サプライチェーン式信用育成、世界税関機構の「AEO」(認証経営者)認証取得後の通関簡便化
- (10)科学イノベーション人材の出入境「グリーン通路」開設
- 本部企業の高級管理職員と出入境物品の予約審査、オンライン手続き、分割輸送/郵送/クーリエ便物品の本人との一体化通関、無開封審査
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10. 『集積回路産業発展のための創新的監督管理のトライアルポイントに係る文献の公布』に関する通知
上海市の集積回路産業発展のため制定された『上海税関の集積回路産業発展サポートのための創新的監督管理のトライアルポイント実施弁法』(上海税関[2022]3 号)、『上海税関集積回路産業発展監督管理創新トライアルポイント推進業務方案』に対応する申請書と税関連絡先リストの通知です。
- 添付 1)「上海税関集積回路産業発展創新的監督管理トライアルポイント企業申請表」:
- 申請する企業が希望する優遇措置及び必要とされる要件について Yes/No をチェックする方式の記入シート。企業が記入した各項目に対する主管税関の意見(適格/不適格)欄があり、最下段に審査結果と承認欄があります。
- 添付 2)「上海税関集積回路創新的監督管理トライアルポイント連絡先リスト」
- 連絡先として上海市内 21 か所の税関と電話番号が一覧表になっています。
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11.『上海市で国三標準ディーゼル油使用の機動車の通行制限政策』に関する通告(滬交行規[2023]2 号)
大気汚染の改善のため、「国三標準」のディーゼル油を使用する機動車(4 輪自動車、トレーラー、トロリーバス、トラクター、オートバイ、三輪車の総称)の市内乗り入れを制限する通告です。 貨物運搬車と乗客輸送車に区分し、各々以下のように通航制限されます。
- (1)貨物運搬車:23 年 4 月 1 日から、上海市内全ての道路で 24 時間全面通行禁止
- (2)乗客輸送車:24 年 7 月 1 日から、S20 外環高速道路より内側の道路で 24 時間全面通行禁止(S20 外環高速道路とその直下の一般道路は含まず)。
添付文書「政策解読」には、通行禁止区域の地図、罰則法規名、排ガス基準チェック方法(URL)、早期廃車の補助金支給に関する規定(URL)が記されています。 「政策解読」では、2019 年以来「国三ディーゼル車」8 万台が廃車となったこと、また全市で 1%にも満たない「国三ディーゼル車」の NOx 排出量が全市の機動車の 12%を占めることが紹介され、今回の通告の意義が強調されています。
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