【水野コンサルタンシー中国ビジネス情報】ダイジェスト版Vol.191

2023-03-23

【中国ビジネス・トレンド】

■  華東ビジネス・トレンド

華東地域(上海市、江蘇省、浙江省)の最近のビジネストピックスを、地方通知などを踏まえてご紹介します。

1.当市の社会保険料の段階的な納付延期政策実施に係る問題に関する通知(滬人社規[2022]34 号)

22 年 12 月まで(但し経営特別困難 5 業種と困難 17 業種の失業保険と労災保険は 23 年 3 月まで)社会保険料の延納(分納)を許されていた上海市の企業/従業員雇用事業体、並びに中小零細企業/個人事業主の延納(分納/延期後一括払い)期限を、2023 年末まで延長する通知です。
延納期限内に、条件を合致する企業/従業員雇用事業体等が引き続き延納申請を提出することが可能であり、申請を提出する前の期間への遡及適用はされません。
なお、社会保険料のうち従業員個人が負担する分(養老、医療、失業保険)は従来通り企業が代理徴収/代理納付を行い、それによって個人の社会保険の待遇は従来通りに守られます。
当通知の有効期間は 23 年 12 月 31 日までです。

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2.上海市の居住証を持つ香港・マカオ・台湾籍住民の上海市住民基本養老保険と住民基本医療保険への加入に関する問題の通知(滬人社居[2022]322 号)

「香港・マカオ・台湾籍住民の内地(大陸)での社会保険加入に関する暫定弁法(人力資源・社会保障部令 41 号」で、中国本土に居住する香港・マカオ・台湾籍の住民のうち就業者は中国の 5 種全ての社会保険に加入すること、また未就業者が「都市住民基本養老保険」と「都市住民基本医療保険」に加入できること、大学生が中国本土の大学生と同様に「都市住民基本医療保険」に加入できることが定められています。
当通知は、上海市の居住証を持つ香港・マカオ・台湾籍の未就業者が加入出来るこの 2 つの社会保険への加入に関する基本事項、実務的要点を示したものです。

上海市に居住する香港・マカオ・台湾籍住民で上海市の居住証を取得して 2 年以上経過した未就業者が、その居住証の有効期限内で、上海市の「都市住民養老保険」と「都市住民基本医療保険」に加入できるとしています。(2022 年 10 月 31 日公布、11 月 1 日から実施) 居住証の期限切れ、又は他の省・市へ引っ越した時、上海市の保険加入権は喪失しますが、引っ越しの場合、養老保険は引っ越し先の省・市に移管継続されます。
養老保険は、満 60 歳で保険料支払い期間 15 年以上の加入者が養老保険待遇を得ることができ、支払い期間が 15 年に満たない者は、実際に上海に居住しており、且つ居住証の有効期限の範囲内で保険料支払いの継続が出来ます。
また、2020 年 1 月の暫定弁法の施行から当通知が実施されるまでの期間に保険加入適格者だった者は、この期間の保険料を一括納付することができ、その納付保険料は当通知の施行以降の保険料に累計加算されます。

上海市に居住する香港・マカオ・台湾籍の住民に対する医療保険については、その年度の基準保険料を納付することで、医療保険待遇が得られます。
医療保険の本人負担分以外の資金は、市・区の財政より、1:1の比率で負担されます。

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3.輸入危険化学品の検査方式改革のトライアルポイント展開に関する通告(上海税関通告[2022 年]5 号)

輸入危険化学品の安全管理の一層強化のため、上海市税関が「浦江税関」をトライアルポイントに指定して、さらに厳しい方式で輸入検査を実施することの通告です。
2022 年 12 月 1 日から期間 3 か月間で実施されています。
試行される新方式は「審査資料 100%全数検査+出入境審査場実物検査或いは目的地での実物検査」です。貨物の属性とその梱包形態により危険化学品の分類が行われ、検査場所と頻度が設定されます。
荷受人或いは代理人には、(1)貨物の属性、(2)検査検疫用名称、(3)危険物クラス分類、(4)包装形態分類、(5)国連危険貨物コード(UN 番号)、(6)国連危険貨物包装標記(包装容器 UN マーク)、(7)目的地の検査検疫機関名等のデータおよび『輸出入危険化学品その包装の検査の監督管理問題に関する公告(海関総署 2020 年第 129 号)』で要求されている資料を提出しなければなりません。
トライアルポイントの成果を見て、その後順次上海市税関管轄下の他の輸出入貨物審査場に適用範囲を広げる予定です。
また、通関効率を高めるため、輸入企業は「輸入危険物情報提出システム」を通しての情報報告が奨励されています。

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4.上海市廃棄機動車回収管理実施弁法(滬商規[2022]8 号)

中央政府『廃棄機動車回収管理弁法施行細則(商務部令 2020 年第 2 号)』の規定に基づき、上海市の事情を勘案した“廃棄機動車”管理に関する実施弁法です。
“機動車”とは、4 輪自動車、トレーラー、トロリーバス、トラクター、オートバイ、三輪車などを総称する単語(英語:motor vehicle)ですが、主に「四輪自動車」を指す場合もあります。本解説では原文に従い「機動車」という用語を使っています。
「総則」、「資質認定と管理」、「回収解体行動規範」、「回収利用行動規範」、「監督管理」「附則」の 6 章で構成され、その要点は下記の通りです。

(1)総則:

  • 自動車回収の市場化、専業化、集約化の推進
  • 市政府の 7 つの部門の職責と分担の明確化(商務部門:回収解体企業の資質認定、発展改革部門:部品再利用の推進と監督管理、経済・情報化部門:新エネルギー車の動力蓄電池回収利用の管理、など)

(2)資質認定と管理:

  • 回収解体業の資質認定条件の定義(法人資格、回収解体現場の限定、国家標準 GB22128 適合、環境保護標準 HJ348 適合、など)
  • 資質認定必要書類の明示(土地使用権、汚染防止施設、保有設備明細、技術員/高級管理職名簿、解体操作マニュアル/安全規程/固形廃棄物利用方法、等)
  • 申請書類受理以降の審査手順(上申~認定書発行までの手順と所要日数 20 名以上の専門家チーム編成/現場検査など)
  • 資質認定書の公示(全国自動車流通情報管理応用サービスシステム)

(3)回収解体行動規範:

  • 情報管理プラットフォーム設置と「廃車回収証明」のデジタル化管理
  • 違法な回収証明/証明書偽造の禁止、差押え/盗難車両への回収証明発行禁止と公安への通報体制、車体番号などの偽造等不正行為監督、回収廃車を解体せず直接転売することの禁止、など

(4)回収利用行動規範:

  • 「パーツ販売台帳」作成と全国自動車流通情報管理応用サービスシステムへの登録、複数の回収車両の組合せ完成車両の組み立て禁止、廃車のメンテナンス禁止など
  • 新エネルギー車の動力蓄電池の回収利用管理、「五大パーツ」(発動機、シャーシ、動力伝達軸など)並びにそれ以外のパーツで再利用可能なものの販売に対する監督管理

(5)監督管理:

  • 企業従業員管理、日常監督検査、「資質認定書」の取り消し、関係部門との情報共有化、公安部門との連携、専門家チームの編成と管理、など

(6)附則:

  • 法的責任、案件の処理、解釈など

本弁法の有効期間は 2023 年 1 月 1 日から 27 年 12 月 31 日までです。

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5.当市における廃車回収業界に対する信用監督管理業務推進に関する通知(滬商市場[2022]281 号)

上海市の廃車回収業の信用管理の規範化、管理基準の具体化/数値化、企業信用度のクラス分け管理など管理強化に関する通知です。
“機動車”とは、4 輪自動車、トレーラー、トロリーバス、トラクター、オートバイ、三輪車などを総称する単語(英語:motor vehicle)ですが、主に「四輪自動車」を指す場合もあります。本文では原文に従い「機動車」という用語を使います。

当通知には 2 件の添付文書があります。
添付-1には廃車回収業の企業の信用クラス分け並びに信用評価(減点法)の点数が示され、添付-2には企業の様々な違反行為とそれに対する処罰、警告、行政命令、業務教育などの処置が示されています。

「本市廃棄機動車回収企業信用評価標準(試行)」(添付-1) <企業信用度クラス分け>  良好企業:9-10 点(満点)、一般企業:5-8 点、劣等企業:0-4 点

  • 信用クラスに応じて管理監督の頻度や厳格度が変わります。 <問題の内容と減点数>
  • 名称/住所/法定代表人の届け出遅延:1 点、廃棄自動車パーツ台帳/5 大基本パーツ情報記録/情報上申システム未作成:2 点、未認定現場での廃棄自動車解体:4 点、など

「廃棄機動車回収企業信用監督管理措置」(添付-2) 信用評価点数の減点と同時に、以下のような監督措置を行います。

  • 分社機構設立後届け出遅延:“改正命令”、廃車登記手続き遅れ/車所有者への廃車証明交付遅れ:“警告、日常監督管理の頻度増大、法定代表人呼び出し指導”、「廃棄機動車回収証明」の偽造、変造:“日常監督管理の頻度増大、法定代表人呼び出し指導、組織的な業務訓練”、など

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6.上海市工業製品生産許可管理実施弁法(滬市監規範 20220025 号)

2021 年 3 月 1 日~ 23 年 2 月 28 日の期間に適用されていた『上海市工業製品生産許可管理実施弁法(試行)(滬市監規範[2021]3 号)』を継続するため、2023 年 3 月 1 日から適用となる弁法です。有効期間は 28 年 2 月 29 日までです。

生産許可証審査員の管理と情報の取り纏めを受け持つ「市局業務受理センター」が、「市・市場監督管理局行政サービスセンター」に変更され、簡易審査批准プロセス(旧 7 条)、事後現場審査(旧 8 条)関連の記述削除などの部分修正を行ったアップデート版です。
当通知の下段に、申請の際に記載すべき要件を示した「許可証申請票」や「行政審査批准告知承諾書」、また「行政審査批准機関の告知」(審査批准の準拠法規、法定条件、申請に必要な提出文書など)が付されています。

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7.上海市固定資産投資プロジェクトの省エネルギー審査実施弁法(滬府規[2022]13 号)

上海市の固定資産投資項目(プロジェクト)のエネルギー消費制御、効率化のための審査批准の責任部署、分担、審査方法並びに項目建設者に対する要求をまとめた実施弁法です。
審査批准のプロセスと所要日数も定められています。

市政府管轄部門の省エネ審査で出された「審査意見」で批准されていないプロジェクトは、建設開始が出来ず、既に建設されたプロジェクトも生産・使用が出来ません。
審査批准の監督指導、調整管理、業務規範編成、建設中/建設後の監督の総指揮は、市発展改革委員会と市経済情報化委員会が担い、市政府認定の各地区の管理委員会(自由貿易試験区委、臨港新片区管理委など)及び各区の所管部署が「省エネ審査部門」として審査を実施します。
年間総合エネルギー消費量(標準炭換算)1,000 トン以上(標準炭と電力の標準炭換算値を含む)或いは年間電力消費量 500 万キロワットアワー以上のプロジェクトは、単独で省エネ審査を受けます。
消費量がこれに満たないプロジェクト及びエネルギー消費プロセスが単純で省エネ潜在力が小さい業種は単独審査対象外です。
プロジェクト建設者は建設認可のフィージビリティースタディ提出前に、まず所轄の「省エネ審査部門」から「審査意見」を得る必要があります。但し建設認可と省エネ審査が同一部門だった場合は同時申請が可能です。
「審査意見」は発行日から 2 年間有効、もしこの期間内に建設着工出来なかった場合は、合計 3 回まで延長申請が可能(毎回 1 年間)です。

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8.上海市多国籍企業地域本部設立奨励規定(滬府規[2022]17 号)

上海市の多国籍企業の地域本部設立奨励政策に関する規定で、2002 年に最初の規定が公布されて以来、今回が 5 回目の改定版になります。
今回の政策図解説明によると、2022 年 9 月末時点で多国籍企業の地域本部は合計 877 社設立されています。
前回の改定版(滬府発[2017]9 号)に比べ、海外企業の本部機構の設立条件が緩和され、優遇措置の間口を広げています。

  • 「地域本部」、「本部型機構」のほか「事業部本部」という形式を新たに追加したこと。
  • 「事業部本部」の認可基準は、(1)独立法人資格を有する外商投資企業である、海外親会社の持ち株比率 50%以上、親会社の資産総額が 2 億ドル以上、(2)上海市で一年以上経営継続、(3)営業収入 10 億元以上、(4)親会社の事業部の営業収入の 10%以上を占めること。
  • 「地域本部」、「本部型機構」共に、海外親会社の持ち株比率 50%以上で良いとされたこと。
  • 親会社の資産総額が、「地域本部」では 4 億米ドル(サービス型企業は 3 億米ドル)から 2 億米ドル以上に、「本部型機構」では 2 億米ドルから1億米ドル以上に、それぞれ減額されたこと。
  • 「本部型機構」で、登録資本金が 200 万米ドルから 100 万米ドル以上に減額。また「分社機構」の場合は、親会社からの運営資金送付額 200 万米ドルから「至近 3 年以内で累計 100 万米ドル」と改定されたこと。
  • 優遇政策・行政サービスの拡大:奨励金/資金援助、オフショア貿易支持、総合保税区内保税メンテナンス事業許可、イノベーション企業/バイオ医薬品開発等のサポート(ホワイトリスト加入等)、通関/出入境利便化、知的財産権保護強化(上海市重点商標保護リスト等)、駐在外国人への行政優遇拡充、等。

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9.南京税関、蘇州市人民政府の入境特殊物品に対する連合監督管理メカニズムのトライアルポイント展開に関する公告(南京税関公告 2022 年 2 号)

江蘇省政府『全省のバイオ医薬産業の高品質な発展促進に関する若干の政策措置(蘇政発[2021]59 号)』を貫徹し、特殊物品の入境の全行程の監督管理を改善し、通関の利便性向上を図り、蘇州地区に国際的に一流のバイオ医薬産業の集積地を建設することを目指す政策措置です。
南京税関が蘇州市政府と連携し、「蘇州工業園区」のトライアルポイント企業に対する“特殊物品入境”の「連合監督管理体制(メカニズム)」を構築するとしています。
工業園区の商務局が、園区科技イノベーション委、計画建設委、市場監督管理局、生態環境局、園区税関などを組織し、全行程の連合監督管理を行います。
連合監督管理体制で企業の資質信用度、バイオ医薬品自主コントロール能力の評価が行われ、優秀企業をトライアルポイント対象企業として、その入境特殊物品の研究開発、生産、輸送、貯蔵、販売、廃棄物処理など全サイクルのリスク制御と合理的な使用等に対する総合評価を行うとしています。
南京税関は、その連合監督管理体制が行った総合評価意見に従い、トライアルポイント企業に対する税関審査プロセスの合理化、通関手続きの速度アップをします。
また連合監督管理体制は、評価業務メカニズムも構築し、トライアルポイント企業とその特殊物品に対する定期的なリスク評価も行い、問題ある企業にはトライアルポイント認定取り消しも行います。

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10.企業の女性従業員の産休期間の社会保険補助金のトライアルに関する通知(浙人社発[2022]85 号)

2022 年 6 月 7 日より、女性従業員が法律に従って子供を産む場合に関し、浙江省の産休(出産/生育)政策(21 年の改正後 1 人目:158 日、2 人目/3 人目:188 日)を確実に定着させ、且つその期間に当該女性従業員のために社会保険料を納付する雇用主企業に対して、社会保険料に関する補助金を支給し、女性従業員の産休を勘案した全体就業体制を確保させるための政策(トライアル)です。
補助金は、該当の女性従業員のため企業が実際に納付する基本養老保険料、基本医療保険料、失業保険料の 50%で、従業員の出産当月から 6 ヶ月間です。
この補助金の財源は「就業補助金」からとされています。
女性従業員の産休期間中に、対象企業が既に就業困難人員の雇用に関する社会保険補助金、中小零細企業が高校卒業生を雇用することに関する社会保険補助金等を享受している場合、本通知の補助金を同時に享受することはできません。
本通知の補助金を享受した後、その他の補助金の享受期間が残っており、且つ申請条件を引き続き満たしている場合は期間満了まで延期できます。
当通知には「女性従業員産休期間社会保険補助申請表」の書式が付されています。

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