【水野コンサルタンシー中国ビジネス情報】ダイジェスト版Vol.166
2022-06-08【中国ビジネス・トレンド】
■ 華南ビジネス・トレンド
華南地域(広東省)の最近のビジネストピックスを、地方通知などを踏まえてご紹介します。
1.広東省外商投資権益保護条例(公告第 101 号)
『外商投資法』に基づき広東省が公布した、外資企業の権益保護と投資利便性の強化を目的とした条例です。『外商投資法』に準拠し、且つ省の状況と個別政策を反映したとしています。『外商投資法』の基本方針に従い、以下のような条項が示されています。
- 1)外資企業の「内国民待遇」(企業設立前の段階から一貫した内資企業と同等で公平な処遇、政府調達・入札、スタンダード制定への参与など。但し、ネガティブリスト対象業種は別途規定)
- 2)行政サービスの拡充、利便性強化(地域、部門を跨ぐ行政サービス連携メカニズム構築など)。
- 3)知的財産権の保護政策強化(地域、部門を跨ぐ共同保護メカニズム、権益侵害に対する処罰強化など)
- 4)外資企業への各種の配慮、優遇(外資誘致を目的とした特殊経済区域設置、投資指南書、人民元・外貨の自由な出し入れ、外国籍従業員の報酬の海外送金、行政サービスなど)
広東省の事情を踏まえた独自の記述部分は、以下の条項などに見られます。
- 第 17 条:「広東・香港・マカオグレーターベイエリア発展戦略」に基づく自由貿易試験区の先行トライアル、外商投資権益保護の試験的政策、及びその成果の省内各地への複製・拡張。
- 第 18 条:外資企業が招聘する外国ハイエンド人材の年齢・学歴・職歴を問わない駐留・就業許可、並びに外国専門家の駐留・就業規則の緩和。
- 第 21 条:市場監督管理、環境保護、労働、安全生産、消防等の各種行政検査の「総合一括検査」化の推進。
- 第 22 条:「イノベーションの推進」、新技術、新産業、新業態、ニューモデルなど多様な外資企業に対し、柔軟で個別的な監督管理。
- 第 24、25 条:外国投資者、外資企業が行政機関、職員の行為に対し権益侵害を申し立てる際の「苦情申立て機構」の設置、その機構が行うべき職務と遂行期限の明記。
2.広東省の商事制度改革の全面的深化に関する三年行動計画(粤府弁[2021]51 号)
2023 年末までに、広東・香港・マカオグレーターベイエリアの市場一体化のグレードアップ、国際的ハイスタンダード市場体系、開放型経済の新体制の構築による「全方位開放型市場」の形成などを掲げた「行動計画」です。
5 つのテーマで合計 23 項目の行動計画が示されています。
(1)市場主体(企業、事業主、非営利組織市場活動組織などの総称)の登記制度改革深化
- 「商事登記確認制(市場主体設立の自己申告と告知承諾をすれば直ちに経営資格が与えられる制度)」の拡大。広東・香港・マカオグレーターベイエリアの市場参入規則の整合の推進。主要経営場所の制限緩和(住宅を経営場所とする等)
- 信用失墜企業等の「市場強制退去制度」、市場撤退時の納税取消手続き簡便化、など
(2)市場主体の登記手続きの便利化、規範化改革
- 一連の手続きを「1表申請・1ネット手続・1日完了」に。スマート管理。省を跨ぐ一貫手続き、など
(3)経営許可制度改革
- 経営許可制度簡略化・「証照分離改革」(備案制、告知承諾制)、「一照通行改革」(ワンストップ、ワンリスト手続、証照情報のワンコード検索など)
(4)商事制度改革に適応した監督管理措置の完備
- 登記審査の情報化/スマート化、身分認証電子化、「統一社会信用コード」による市場主体の信用記録の合法的確立。「双随機・一公開」(ランダム抽出検査・情報公開)、ブラックリスト/地域・業界を超えた連合的懲罰、など
(5)業務体制強化
- 市場監督管理局の部門間の連絡強化、関係機関との連携、「省市一体化ビッグデータセンター」による管理強化、国のデータプラットフォームとの情報交換、など
3.広東省におけるサービス貿易の高品質な発展の行動計画(2021-2025 年)(粤府函[2021]3 号)
第 14 次五か年計画期間(2021-25 年)に、サービス貿易のハイグレードな発展のため、貿易規模の拡大、構造改善、対外開放を進めるという行動計画です。 本計画の達成目標として下記 3 つの数値を掲げています。
- (1)サービス貿易総額:4 兆 5,000 億元超え・全国トップ 3
- (2)新興サービス貿易/デジタル貿易額・年平均成長率:15%以上
- (3)サービス業務請負額年平均成長率:5%以上
重点テーマは下記の通りです。
- 新興サービス貿易の加速的発展:
- デジタル貿易の重点的発展。技術貿易の育成。専門分野のサービス貿易の開拓。金融サービスの重点的レベルアップ。知的財産権の保護と運用強化。
- デジタル貿易キャリヤー/「デジタルサービス輸出集積区」の育成。「国家デジタル貿易モデル区」創建。
- 伝統的サービス分野の構造改革とグレードアップ:
- 伝統的サービス分野のデジタル化改造。旅行分野の重点的発展、運輸サービスの持続的発展。カルチャー分野の発展。漢方薬の特色あるサービス貿易発展。
- 外注請負サービスのハイグレード発展。広東・香港・マカオグレーターベイエリアで世界的規模の「貿易デジタル化先導地区」を建設。
- サービス貿易主体(企業、事業主、その他活動組織の総称)の育成とプラットフォーム建設:
- 「前海深港現代サービス業合作区」と「横琴広東・マカオ深度合作区」でサービス貿易改革を深化。サービス貿易重点プラットフォーム、サービス貿易の創新的発展のトライアルポイントと請負サービス業モデル都市建設。「広東・香港・マカオグレーターベイエリアサービス貿易大会」など催事・展覧の実施。
- サービス貿易促進体系の完備:
- 主導政策強化。対外開放の深化。「生産分野のサービス業企業」の秩序だった安定的な対外投資の推進。金融サポート、融資・輸出信用保険等のサポート。
- サービス貿易統計完備。
4.健全な緑色・低炭素・循環型経済発展体系の実施意見(粤府[2021]81 号)
広東省政府が、国務院の『健全な緑色・低炭素・循環型経済発展体系の指導意見(国発[2021]4 号)』に準拠し、同省における「緑色・低炭素・循環型経済発展」の実施について、各部門、省内各地政府、直属機関に対し通達した指示文書です。
2035 年を目標達成最終年、2025 年を中間点として、経済/生活の両面での「緑色・低炭素・資源循環利用」に係る項目を網羅する形で、記されています。 但し、どの項目にも具体的な目標数値は記載されていません。
添付資料「重点任務分担表」に、取り組むべき業務 85 項目が列記され、その各々に責任部署(省政府内の関係部局、委員会、関係機関)が指名されています。85 項目の概要は下記の通りです。
1)健全な緑色・低炭素・循環型発展のための生産体系の構築
- 工業の緑色グレードアップ:「サプライチェーンと製品の全工程における緑色製造体系」など 8 項目
- 農業の緑色発展の加速:「生態循環型農業」「林業循環経済」など 7 項目
- サービス業の緑色発展レベルアップ:「情報サービス業の緑色構造転換」など4項目
- 壮大な緑色産業の発展:「国家緑色産業モデル基地建設」など 3 項目
- 産業園区と産業群の循環経済化レベルアップ・緑色サプライチェーン:「既存産業園区と産業群の循環経済化推進」「多種エネルギーの相互補完的総合利用」など 3 項目
2)健全な緑色・低炭素・循環型流通体系の整備
- 緑色物流の整備:「国家物流ハブステーション、コールド物流基地建設」など 2 項目
- 再生資源回収利用の強化:「再生資源回収とゴミ分類/回収の融合的発展」など 3 項目
- 緑色貿易発展の加速:「高付加価値の緑色製品貿易」「グリーン“一帯一路”国際合作」など 3 項目
3)健全な緑色・低炭素・循環型消費体系の整備
- 緑色消費レベルの向上:「温室効果ガス表示制度検討」「省エネ家電、緑色建材、新エネルギー車等の普及促進の仕組み構築」など 5 項目
- 緑色・低炭素生活方式の提唱:「地域事情に応じた生活ゴミ分類と減量化、資源化」「プラスチック廃棄物汚染の一貫的対策」など 7 項目
4)基礎インフラの緑色グレードアップ加速
- 清潔・低炭素・安全・高効率エネルギー体系の構築:「海上風力発電、天然ガス発電、水素エネルギーの積極推進」「太陽光、陸上風力、地熱、海洋エネルギー、バイオエネルギー発電並びに安全で高効率の原子力発電」など 7 項目
- 環境基礎インフラ施設整備:「都市下水道網の完備と全面管理システム建設」「廃棄物ゼロ都市、廃棄物ゼロ試験区の建設」など 4 項目
- 緑色・低炭素・高効率交通運輸体系の構築:「道路、鉄道、航路、港、空港の緑色化」「新エネ車の充電・充水素ステーション整備」など 3 項目
- 美しく住みやすい低炭素の都市/郷里の建設:「新築建物の省エネスタンダード厳格化」「農村トイレ改造・生活ゴミ分類処理・汚水処理」など 3 項目
- 土地開発の環境保護の新たな仕組みの構築:「自然生態保護、都市開発時等の境界線の監督/制御」など 2 項目
5)市場主導の緑色技術イノベーション体系の構築
- 緑色・低炭素技術の研究開発:「緑色建築技術、スマート技術と融合した超省エネ建築技術の開発」など 3 項目
- 科学技術成果の転化応用の加速:「緑色技術革新成果の転化応用メカニズム完備」など 2 項目
6)法規・政策の整備
- 健全な法規制度の確立:「気候変動に係る法規の見直し修正」など 2 項目
- 緑色費用徴収・価格メカニズム:「汚水処理費用徴収政策の整備」「省エネ・環境保護電力価格政策」など 3 項目
- 財政・税務サポート強化:「資源有効利用、環境汚染の第三者管理に対する所得税、増値税優遇」「資源税徴収」など 1 項目
- 緑色金融の発展強化:「緑色・低炭素融資体系・緑色融資チャネル開拓」「広州緑色金融改革革新試験区の建設」など 3 項目
- 緑色スタンダード、緑色認証体系の整備と統計観測制度の整備:「緑色製品評定スタンダードの制定と実施」など 2 項目
- 緑色取引市場メカニズム:水使用権、エネルギー使用権、汚物排出権、炭素排出権の市場取引の推進 など 2 項目
7)真剣な組織的な業務遂行
- 課題解決貫徹:「緑色・低炭素・エコ循環年度報告書」作成。他省、グレーターベイエリア、世界各国との交流・協力強化 など 2 項目
- 啓蒙宣伝の強化:「各地、各部門の先進事例顕彰」など 1 項目
5.広東省総合立体交通網計画要綱
2035 年までに中国全土で「総合的立体交通網」完成を目指す『国家総合立体交通網計画要綱』(中共中央、国務院、2021 年 2 月公布)に対応する広東省の立体交通網建設の計画です。 広東省の計画も完成年限は 2035 年ですが、2025 年の中間目標数値も定めています。当要綱の附表に詳細が示されています。
《基本理念》
- 「一核一帯一区」(珠江デルタ-沿岸経済ベルト-北部生態発展区)発展、「一帯一路」国際交易ルートとの融合のための陸海空(河川含む)を網羅した「総合的立体交通網」の建設。
- 優良な輸送体制(集約、高効率、環境対策)の建設。各地域の高度なレベルの需給バランスと「エコ・省エネ輸送」の実現。先進的情報技術の活用による交通インフラ整備。
《基本発展目標》
- 2035 年までに「高速基幹交通網」「幹線網」「通常交通網」を組み合わせた総合的な交通・運輸網とハブ都市体系の整備。
- 「12312 交通圏」(珠江デルタ内都市間:1 時間、珠江デルタから省東部・西部・北部まで:2 時間、国内他地域・東南アジア主要都市まで:3 時間、世界主要都市まで約 12 時間)、「123 快速貨物輸送圏」(国内:1 日、東南アジア主要都市まで:2 日、世界主要都市まで:3 日)の目標実現。
- 「広東・香港・マカオグレーターベイエリア」の総合交通網を世界の先進レベルに。(更に 2050 年までには全世界のトップに)
《総合立体交通網の概要》
- 鉄道網を主軸、道路網を基礎とし、水運、航空、パイプラインを加え、優位性を十分発揮出来る立体交通網の建設。
- 2035 年までに交通網の総規模:28.2 万 km の完成。
- ち、鉄道:1.1 万 km、道路:24.5 万 km、ハイグレード水運:1,800km、オイル/ガスパイプライン:9,500km、臨海主要港:5 か所、河川主要港:3 か所、民間用空港:15 か所、郵政速達貨物ハブ:11 か所
- 「三横六縦両聯」交通網の完成(横方向 3 本、縦方向 6 本、省東部と西部の北上線)。
- 「2+3+8+8多層ハブ都市」体系の構築(国際的総合ハブ 2 か所:広州、深セン、全国性総合交通ハブ 3 か所:珠海、汕頭、湛江、区域的総合ハブ 8 か所:仏山、韶関、梅州、恵州、東莞、中山、江門、肇慶、その他一般的ハブ都市 8 か所)。
5 件の添付資料(附表 4 件、交通図 1 件)があり、計画の全容が具体的な項目名、数値、地名などで一覧的に示されています。
6.広東省中新広州知識城条例(中国-シンガポール・広州知識城に関する広東省条例)
(公告第 102 号)
広東省の『中新広州知識城総合発展計画(20-35 年)』(2020 年)、『同実施方案』(21 年)に対応し、「広州知識城」における、科学技術イノベーションと知的財産権保護・運用、知識集約型産業発展とハイエンド人材確保、優遇、対外開放と国際合作の推進の具体的施策を提示し、それに対する省政府の支援、行政的保障政策、「中新広州知識城管理委員会」への管理権限付託の規定を定めた広東省人民政府の条例です。
「知識城」と中国(広東)自由貿易試験区、広州高新技術産業開発区、経済技術開発区等との連携発展。合作の新ルート、イノベーションの新方式の推進・支援。また「知識城」では「積極的な先行トライアル、失敗しても責任問わず、目標未達でも私利、故意で無い限り組織も個人もマイナス評価されない」という方針が強調されています。
奨励すべき知識集約型産業として、生物医学と健康産業、新世代情報技術産業、新材料・新エネルギー産業、科学教育サービス、デジタルクリエイティブ産業、スマート製造、集積回路、その他の知識集約産業を掲げています。
対外開放・国際協力では、知識城の「広東・香港・マカオグレーターベイエリア国際科技イノベーションセンター」建設への参画、シンガポールとの全方位的合作と“一帯一路”開放政策への国際協力が推奨されています。
金融面では、人民元建ての金融資産クロスボーダー移転、人民元/外貨一体型の資金プーリングなど人民元国際化の推進を推奨し、知識城での中国-シンガポール合資金融機関の設立やシンガポールの金融機関の支店開設を目標としています。
7.広東省交通運輸庁による港口市場監督管理“双随機・一公開”検査業務細則(粤交港口字[2022]43 号)
広東省における港湾関連分野の市場監督管理を更にレベルアップするための現場検査業務に関する細則です。
交通運輸庁或いはその委託組織が港・埠頭の市場監督管理を行う際、「双随機、一公開」抽出検査(検査対象のランダム抽出、現場派遣の検査員のランダム抽出、抽出内容と検査結果を直ちに公開)の方式で行います。
当細則には、この検査の抽出方法、抽出の為のデータ、1 度目検査/2 度目検査の手順、検査記録の作成・報告、公開など具体的な規定の詳細が記されています(なお、この検査方式は上級機関による検査には適用されません)。
検査結果は、「港湾情報システム」と省交通運輸庁のパブリックサイトで公開されます。但し、国家機密、商業上の秘密情報、秘匿すべき個人情報は『国家秘密保持法』、『政府情報公開条例』に従い、制限を受けます。
当細則には下記の3つの附表が添付されています。
- 附表1》「港湾市場監督管理検査項目表」(港湾関係業種、業種別の検査事項、評定、備考)
- 附表2》「港湾市場監督管理検査記録表」(検査事項、結果、検査員所見、アドバイス等)
- 附表3》「港湾市場監督管理“双随機”抽出検査事項明細」(抽出検査に係る準拠法規、対象、検査内容、抽出法式、抽出比率と頻度、備考)
8.深センに中国の特色ある社会主義先行モデル区を建設し市場参入を緩和する特別措置に関する意見(発改体改[2022]135 号)
「中国の特色ある社会主義先行モデル区」に指定されている、深セン市への市場参入制約の緩和とモデル区の優良な発展環境整備のための特別措置を定めた、国家発展改革委、商務部から広東省政府、深セン市政府、並びに中央政府関係部門、直属機関宛ての指令書です。 特別措置の重点対象として、下記の6領域、合計 24 項目が掲げられ、その各々に責任部署が指定されています。
(1)先端技術の応用と産業発展領域
- 電子・集積回路国際交易センター。データエレメント交易・越境データ移転。国際先端技術応用推進センター。新世代情報技術、国際技術標準設定へ参画。等
(2)金融投資領域の参入方式改善
- 農産品サプライチェーンへの金融能力向上。深セン・香港・マカオの保険市場相互流通。越境貿易決済の便利度アップ。不動産投資信託基金市場環境整備。等
(3)医薬・健康領域の市場参入メカニズムの革新
- 医薬・医療機器の参入制約緩和。処方箋薬のインターネット販売。幹細胞、DNA 治療等先端医療の審査批准の管理方式整備。医療関係機関の参入制限緩和、等
(4)教育文化領域の参入制限の緩和
- 高等教育、職業教育の改革。オンラインゲーム、ビジュアルコンテンツ、ライブ配信市場環境の整備。監督管理方法、法規整備。等
(5)交通運輸領域の参入制約緩和、参入環境整備
- クルーズ船、遊覧船業界の参入環境整備。陸海空無人システムの参入標準設定と応用プラットフォーム構築。航空分野の参入制限緩和。新エネルギー車充電・電池交換ステーション建設と運営。等
(6)その他重点領域の市場参入制限緩和
- 宝飾業界の参入体系完全化。通信業界の参入制限緩和。検査測定・認証の改革。都市整備・老朽更新業務市場の全周期管理推進。養老・託児市場の発展環境整備。
9.横琴広東マカオ合作区建設の支持・保障に関する意見(法発[2022]4 号)
『横琴広東・マカオ緊密合作区建設総合方案』(中共中央、国務院、21 年 9 月)に対応する司法体制を整備するため最高人民法院が公布した意見文書です。 「一国二制度」の下でマカオの法律法規との整合、法構造の連携を図り、合作区の条例制定への積極的な参画、「珠海経済特区」の“第二の創業”、「広東・香港・マカオグレーターベイエリア」建設への貢献、を主要な目標としています。 以下のような具体的施策を提示しています。
- (1)合作区人民法院の域外法規の解明と活用の機構の設立支持、ポルトガル語系国家(地区)の法規、アモイ内の域外法規の解明の重点的な強化。香港、マカオ、台湾、その他外資企業が横琴合作区で域外法規を選択して紛争解決することの許可、等
- (2)商事紛争解決の多元化メカニズム構築、ポルトガル語系国家(地区)の法務関係機関との合作支持、条件に適合する外国及び香港マカオ地区の調停組織、調停員の国際商事紛争、知的財産権の紛争関与の司法確認、等
- (3)「一国二制度」の優良な「新型モデル法院」形成、横琴合作区市場の経営主体(企業、事業主等)の合法権益保護と投資への安心維持、財産権、契約、公正な競争保護と有効な監督管理、「市場化・法治化・国際化経営環境」、等
- (4)「スマート法院」訴訟サービス向上、「国際化・標準化・知能化訴訟サービスプラットフォーム」建設、「商務研究・リスク予報メカニズム」構築、等
- (5)広東、香港、マカオ司法機関の協力/交流。香港・マカオ訴訟案件の審判プロセスの簡素化、人民法院の組織的保障体制の強化、等
10.貿易型本部企業の発展政策実施に関する意見(試行)
『ハイレベルの貿易発展に関する業務方案(中共深セン市委、深セン市人民政府、深発[2021]13 号)』に対応し、深セン市の世界的な商業貿易センター建設の促進を目的として、「貿易型本部企業」発展政策を実施することに関する試行段階の指令的意見です。 「貿易型本部企業」の定義は、深セン市に設立された国内/国外企業で、購買、分配、営業販売、代金清算、物流など単一組織で総合的な機能を有する企業です。
「貿易型本部企業」の適格条件は以下の通りです。
- 1)深セン市に登記した独立法人
- 2)深セン市以外に 2 か所以上の分店/支社機構を有し、一定の業務比率で統一管理をしている企業
- 3)「重大信用失墜事業者リスト」に入っておらず、過去 3 年以内に刑事処罰を受けていない企業
- 4)下記の条件のいずれかに適合している企業
- 国内卸売り/小売りを主たる営業項目とし、その営業収入が総収入の 50%以上、且つ前年度の営業収入(販売収入)が 100 億人民元超え。
- 国際貨物貿易を主たる営業項目とし、その営業収入が総収入の 50%以上、且つ前年度の営業収入(販売収入)が 60 億人民元超え。
- 物流/貯蔵或いは国際サービス貿易を主たる営業項目とし、その営業収入が総収入の 50%以上、且つ前年度の営業収入(販売収入)が 40 億人民元超え。
- “プラットフォーム交易”(オンライン売買、取引等を仲介する交易プラットフォーム)を主たる営業項目とし、その登録会員又はプラットフォーム利用企業が 5,000 社以上で、且つそのうち深セン市以外が 30%を超し、且つ消費者向けのプラットフォーム企業の年間交易額が 50 億元超え、又は企業向け(BtoB)プラットフォーム企業の年間交易額が 150 億元超え。
貿易型本部企業に対し以下のような支持政策を示しています。
- (1)財政資金投入メカニズムの拡充、輸出時税還付分担の仕組み、専門資金申請に対する優先的支持など
- (2)市上層幹部重点サービス対象企業名簿への優先登録
- (3)金融機関との戦略的合作の奨励。債券、エクイティファイナンス等多元的な融資方式支持。信用保険金融。人民元国際化、デジタル人民元トライアル制度活動への支持、人民元/外貨一体化資金プール業務トライアル、越境人民元業務推進、財務公司設立による国内外投資先への集中的資金管理支持、等
- (4)国内外優秀人材招聘の優遇政策、貿易人材実地訓練基地、等
- (5)中国人職員の海外出張の簡便化、外国人職員の 180 日マルチビザ、経営トップ層への 2 年以上の居留許可と 2 回目以降の 5 年居留許可、等
行政管理では、貿易型本部の「企業データ共有メカニズム」構築による経営状況把握、市商務局と関係部門による認定済み企業の経営動態トレース・評価とその結果条件不合格となった企業の資格取り消しを定めています。
11.深セン前海深港現代サービス業合作区における金融業発展の支援のための専用資金の管理に関する暫定弁法(深前海規[2021]4 号)
「深セン前海深港現代サービス業合作区」に関する中央政府と深セン市の法規(『前海深港現代サービス業合作区改革法案』、『深セン前海深港現代サービス業合作区産業発展資金管理弁法』等)に対応し、同区の実情を踏まえて策定された、「金融業発展の支援のための専用資金の管理弁法(暫定)」です。
本弁法の支援対象は「金融企業本部」及びその専門子会社、「金融持株企業」、「金融機関の深セン市支店」、「政府から批准されたその他の金融機構」、「地方金融機関」、「その他の金融及び金融サービス機構」、「本弁法に規定されたその他の法人/非法人組織」で、リース、保険、証券基金、ファクタリング、インターネット金融などを含む外資/内資の金融組織を幅広く網羅しています。
本弁法の要点は下記の通りです。
1)幅広い分野(上述)の金融機関が深セン市場に参入し、また深セン市で金融サービスを展開する際に提供される支援政策、奨励金、補助/優遇条件を、それぞれケース毎に、詳細に具体的な数値で記載。
(例)
- 金融持株会社、商業銀行の金融専門組織、金融企業本部の深セン支店/専門子会社、その他政府批准の金融機構が、深セン市に新規登録、初めて移転した際の 1 回性の「参入奨励金」100 万元~ 1,000 万元
- 飛行機、船舶、海洋工事設備等重点項目のリース業務(契約期間 1 件当たり 3 年以上)に対し当年のリース契約或いはリース資産購買契約金額の 1%の奨励金供与(最高額 1,000 万元まで)、など
2)合作区の名称の通り、香港との合作を重点的に奨励。
(例)
- 外商独資の証券投資基金管理機構(WFOE PFM)の参入奨励金、「深セン・香港金融科学技術加速器(組織)運営企業」への奨励金、
- 「越境理財通(金融商品)」の奨励と香港マカオ個人投資者/国内個人投資者の理財通口座開設/運用への奨励金
- “香港・マカオ青年イノベーション創業”とそれに対する区内銀行の金融支援の奨励(利子補助)、など
3)将来型/イノベーション型の金融分野の奨励と支援を強調。
(例)
- デジタル人民元運営機構、デジタル人民元応用展示センター等への支援
- 緑色金融/グリーン債権業務支援、など。
本弁法には「深セン前海深港現代サービス業合作区における金融業発展の支援のための専用資金の申請・ガイダンス」(第 1 次受付分)が添付され、奨励金の申請期間、申請手順、提出資料、審査、公示、資金供与までのプロセスを説明しています。
(第 1 次受付分の申請期間は 2021 年 11 月 22 日~ 12 月 15 日まで、既に終了)
また、提出書類の書式(用紙)が添付されています。 「専用資金申請書」「産業載体(企業情報)申請書」「《暫定弁法》申請材料明細」「《実施細則》申請材料明細」「企業承諾書」
12.広東省危険化学品の安全リスク集中管理実施方案(粤安[2022]1 号)
『全国危険化学品安全リスク集中制御方案』(国務院安全生産委、21 年 12 月 31 日公布)に対応する広東省の実施方案です。2022 年 1 月から 23 年 1 月までの 1 年間を、3つの段階に分け業務目標を達成するという進捗計画が示されています。
《第 1 段階》
- 22 年 1 月:各地、各関係部門が連携し、実施計画詳細、目標と任務の明確化、進捗計画、考査方法を策定、啓蒙宣伝開始。
- 2 月 15 日までに実施詳細計画を省安全生産委弁公室に提出。 《第2段階》
- 2 月 15 日~ 12 月:各地・各部門を動員し、隠れた安全リスクに対する全面的検査実施
- 問題と対策の明細表作成。時間表と路線図を制作し“検査しながら同時に改善”の方式を急いで実施、集中管理・制御を確保し計画通りの完了を目指す。
- 各四半期開始月の 10 日までに、前四半期の業務達成状況を省安全生産委弁公室に報告。 《第3段階》
- 23 年 1 月:各地・各部門の重点任務の達成状況の評価、集中管理・制御の業務報告作成。
- 23 年 1 月末まで:省安全生産委弁公室への最終報告
5 つの管理課題、合計 37 項目(要点下記)を掲げています。 (1)統一的管理・調整の体制構築、責任部門明確化
- 省安全委員会の統一管理・調整機能の発揮。危険化学品の重大な安全に問題の解決法研究。省内の重点化学工業都市の業務協調メカニズム構築
- 「広東省危険化学品安全監督管理部門職責」資料作成
- 化工園区安全管理機構の設置と専門監督員配備(園区級別に 4 人~ 10 人) など 5 項目
(2)本質的安全水準のグレードアップ
- ホスゲン、硝酸化合物、ジアゾ化合物などの危険化学品、硝酸アンモニウム、二トラフェニルヒドラジン等の爆発性化学品の厳格制御、
- 化工園区の外部遮断化管理。対テロ、危険物輸送リスク制御、応急能力アップ
- 人口密集地区、地質的災害危険地区の観測、警報。潜在リスクエリア改造
- 危険物輸送車両専用駐車場、事故多発エリア、港貯蔵区等の精査・対策 など 20 項目
(3)重大リスク防止・解決メカニズムの完備
- 「危険化学品企業連合監督管理メカニズム」、安全生産、消防の企業主体責任
- 「オンライン/オフライン安全リスク・クラス別管理・制御メカニズム」
- 化学品重点県、ハイリスクプロセス企業、化工園区への専門家派遣、指導 など 4 項目
(4)危険化学品専門要員の能力・素質レベルアップ
- 全省危険化学品企業労災予防能力向上訓練。安全意識、操作技能レベルアップ
- 化学工業関係職業学校、化工安全学科の設置、専門人材養成 など 3 項目
(5)危険化学品安全リスク管理・制御の数値化、智能化レベルの向上
- 危険化学品安全生産リスク観測・警報システムのグレードアップ
- 「IoT +危険化学品安全生産」トライアル化工園区とトライアル企業 10 社
- 安全監督「ベースデータ庫」、「一企・一品・一コード」QR コード管理 等 5 項目