【水野コンサルタンシー中国ビジネス情報】ダイジェスト版Vol.154
2021-11-26【中国ビジネス・トレンド】
以下の重要規定について解説します。
1. 中華人民共和国税関登録登記・備案企業信用管理弁法(税関総署第 251 号 令)
2021 年 9 月 13 日に、税関総署より「税関登録登記・備案企業信用管理弁法(税関総署令 2021 年第 251 号)、以 下、新弁法」が公布され、同年 11 月 1 日より施行されています。
1)税関信用ランクの推移
(1)過去の制度変更
税関信用ランク制度は、最近では、2014 年(税関総署令[2014]225 号)、2018 年(税関総署令 [2018]237 号)に変更されていますので、今回は、3 年ぶりの制度変更となります。
2014 年の制度変更は、比較的大がかりなもので、それ以前は、「AA・A・B・C・D 類」という 5 段階の分類(標準は B 類)が、「高級認証、一般認証、一般信用、信用喪失」の 4 分類に変更されました。
変更に際しては、旧 AA 類は高級認証企業、旧 A 類が一般認証企業、旧 B 類が一般信用企業、旧 C・D 類が信用喪失企業とい うように、自動的に再分類されました。
(2)今回の制度変更
今回の制度変更では、税関分類は、高級認証企業、信用喪失企業、その他の企業という 3 分類になり、また信用喪失企業の中 で、違反状況が著しい場合は、重要信用喪失企業リストに組み入れられることになります。
2)各ランクの対応
(1)高級認証企業
高級認証企業は、AEO(Authorized Economic Operator)であり、税関優遇措置が受けられます。 かつては、高級認証企業と一般認証企業が AEO でしたが、今回の制度改定で、高級認証企業のみが AEO となります。
(2)信用喪失企業
信用喪失企業降格要件は、以下の通りです。
- 密輸犯罪または密輸行為がある場合。
- 1 年以内の税関監督規定違反回数が、前年度の税関申告書・輸出入備案等の総数の 0.1%を超え、且つ、税関の罰金累計 金額が 100 万元を超過した場合。
- 関企業の場合、1 年以内に税関の監督管理規定違反回数が前年度の税関申告書・輸出入境備案総票数の 1 万分の 5 を超え、 かつ、税関の罰金累計金額が 30 万元を超えた場合。尚、前年- の税関申告書・輸出入備案等の総数が把握できない場合は、 罰金の金額で判断される。
- 税金の 3 か月超の滞納
- 罰金の 6 か月超の滞納。没収された違法所得や貨物等の価格が 1 万元超である場合。
- 検査拒否。検査非協力。税関員に対する賄賂の提供により、罰金や刑事責任に問われた場合。
この内容は、制度改定前と概ね同様ですが、若干の定義の明確化が行われている部分があります。
3)税関信用ランク変更後の実務
税関信用ランク変更の詳細は上記の通りですが、新制度への変更に際して関心が高かった、「旧一般認証企業は、どの様に扱 われるか」という点に付いて、2021 年 10 月 28 日に、「税関登録登記・備案企業信用管理弁法(署企発 [2021]104 号)、以下、管理弁法」が公布され(施行は、2021 年 11 月 1 日)、ある程度の方向性が示されてい ます。
(1)旧一般信用企業に対する扱い
管理弁法・第 3 条には、「税関は、高級認証企業管理を申請する元一般認証企業に対しては、優先して教育し、優先して認証 する」と規定されています。 つまり、旧一般認証企業は、その他企業(通常企業)に振り分けるものの、高級認証企業への昇格を促していく方向性を採用 する事としています。
(2)旧一般認証企業に対する経過措置
管理弁法・第 7 条には、以下の内容が規定されています。
・実転方式が採用される 81 種類の製品(HS コード分類)に付いては、中西部地域のその他企業(高級認証・信用喪失以外 の企業)の場合は、保証金を支払う必要は無い。
東部地域のその他企業は、実転に基づき保税原材料を輸入する場合は、輸入関税と増値税の合計額の 50%の保証金を支払う ものとする。企業に対する影響を軽減するために、旧一般認証企業が制限類商品の加工貿易を展開する場合、暫定的に、元の 規定に基づき執行し、保証金を納付する必要は無い。
加工貿易保証金に関しては、商務部・税関総署公告[2008]第 97 号、及び、商務部・税関総署公告[2015]第 63 号に以下の通り定められています。
- 高級認証企業:積立不要
- 一般認証企業:積立不要
- 一般信用企業:輸入制限品目(81 品目)の一部に対しては 50%を積立。それ以外の品目は、積立不要。但し中西部の企 業は全て積み立て不要。
- 信用喪失企業:100%を積立
つまり、旧一般認証企業は、その他企業に転換されても、暫定的に、旧認証企業に対して付与されていた優遇(制限類商品を 扱う場合でも、保証金は不要)を認める、という移行措置が認められています。
(3)信用喪失企業 信用喪失企業に対しては、「税関登録登記・備案企業信用管理弁法(税関総署令 2021 年第 251 号)」に基づき再審査を 行う事が、管理弁法第 4 条に規定されています。 但し、再度信用喪失企業に認定された場合でも、その期間は、元の認定日から計算する事になります。 尚、信用回復を希望する企業は、税関に規定された書類を提出して、再審査を申請する事になります。
(原文)
2. 中華人民共和国税関輸出入貨物商品分類管理規定
本規定は、輸出入品の荷受人、荷送人、その代理人による輸出入品の商品分類、及び税関による商品検査・分類に適用されま す。 本規定でいう商品分類とは、HS コード商品分類リスト体系のもと、中華人民共和国輸出入税則を基礎とし、中国の関連商品 分類規定にしたがって輸出入貨物の商品コードを確定する行為を指します。 本規定は 2021 年 11 月 1 日から施行されており、同時に 2007 年 3 月 2 日公布の税関総署令第 158 号、2014 年 3 月 13 日改定の税関総署令第 218 号《中華人民共和国税関輸出入貨物商品分類管理規定》、2008 年 10 月 13 日公布の 税関総署令第 176 号《中華人民共和国税関化学検査管理弁法》は廃止されています。
(原文)
3. 研究開発費の加算控除政策の更なる実施に関する問題の公告(国家 税務総局公告 2021 年第 28 号)
企業の研究開発費への投資拡大を奨励するための、研究開発費用の加算控除政策に関する公告です。 企業が 10 月に第 3 四半期または 9 月の企業所得税を予定申告する際に、第 3 四半期までの研究開発費について自主的に加算 控除の優遇政策の享受を選択することができます。10 月の予定申告期間に優遇享受を選択しない場合は、2022 年に 2021 年の企業所得税課税額を確定申告する際に一律に享受することができます。
(原文)
4. 石炭火力発電の電力卸売価格市場化改革の更なる深化に関する通知 (発改価格[2021]1439 号)
石炭火力発電の固定価格買取制度の市場化改革を深化させるための方針が述べられています。 改革内容として、石炭火力発電の固定価格買取制度を秩序立てて自由化すること、市場取引されている電気料金の上下変動幅 の拡大、産業用および商業用ユーザーの市場への参入促進、家庭用・農業用の安定した電力価格の維持が挙げられています。
(原文)
5. 知的財産権強国建設要綱(2021-2035 年)
知的財産の創造、応用、保護、管理、サービスの水準を総合的に向上させ、社会主義近代化の建設における知的財産制度の重 要な役割を十分に発揮させるために策定された旨が述べられています。
発展目標として、2025 年までに特許集約型産業の付加価値は GDP の 13%、著作権産業の付加価値は GDP の 7.5%、知的財産権の使用料の年間輸出入総額は 3,500 億元、人口 1 万人当たりの高額発明特許件数は 12 件にそれぞ れ達し、2035 年までに中国の知的財産権の総合的な競争力は世界トップレベルになるとされています。 その他、社会主義近代化のための知財システムの構築、国際的な一流のビジネス環境を支える知的財産権保護システムの構 築、革新と発展を促す知的財産市場運営メカニズムの構築、“便民利民”である知的財産に関する公共サービスシステムの構 築、知的財産権の高品質発展を促進する人文社会環境の建設などについて述べられています。
(原文)
6. 信用調査業務管理弁法(中国人民銀行令[2021]第 4 号)
本弁法は、信用調査業務及び関連活動を規範化し、情報主体の合法的権利を保護し、信用調査業界の健全な発展を促進し、社 会信用体制の建設を推進するため、《中華人民共和国人民銀行法》、《中華人民共和国個人情報保護法》、《信用調査業管理 条例》に基づき制定されました。2022 年 1 月 1 日から施行されます。
本弁法は、中華人民共和国の領域内において信用調査業務及び関連活動を行う法人・非法人組織・個人に対して適用されま す。 ここでいう信用調査業務とは、企業や個人の信用情報を収集、照合、保存、処理し、情報の利用者に提供する活動を指しま す。また信用情報とは、金融等のサービス提供のために、法律にもとづき収集された企業や個人の信用状況を把握・判断する ための基本情報、借入・貸付情報、その他の関連情報、およびこれらの情報に基づいて作成された分析・評価情報を指しま す。 その他、信用情報の収集、整理、保存、加工、提供、使用などについて規定されています。
(原文)
7. 商務分野における消費促進重点業務に関する通知(商消費函 [2021]491 号)
2021 年下期及び 2022 年上期の消費が合理的な範囲で推移するようにし、新たな発展パターンの構築に向けてより良い サービスを提供するための方針に関する通知です。 重点業務として、新車消費の促進、中古車消費の拡大、家電・家具・内装消費の促進、飲食消費の促進などが挙げられていま す。
(原文)
8. 「第 14 次 5 カ年計画」に基づく沿黄重点地域産業プロジェクトへ の参入及び高汚染、高水消耗、高エネルギー消費のプロジェクトに対する厳格管理を推進する通知(発改弁産業 [2021]635 号)
本通知は、黄河流域の生態系・環境管理と高品質な開発の推進のため、「第 14 次 5 カ年計画」に基づく黄河沿いの重点地域 (蘭州、洛陽、鄭州、済南等)の産業プロジェクトへの参入に関し、厳格な管理を実施することに関する通知です。 管理方針として、関連工業園区の整理、申請済みだが未着工の工業プロジェクトの適切な工業園区への移転、登記されたが未 着工の高汚染、高水消耗、高エネルギー消費プロジェクトの再審査、建設中のプロジェクトに対する日常的な監督管理強化な どが挙げられています。
(原文)