広州物流園区Q&A解説

2010-10-15

広州物流園区 Q&A 解説

今回は、2009 年 5 月 12 日に広州で開催された、広州物流セミナーの Q&A をお届け致します。
当セミナーでは、一部では広州保税区関係者(税関、税務局、保税管理局)からの説明を、二部では、Q&A を実施致しました。

Q&A では、事前に 15 の想定質問を用意し、それに対して政府関係者が回答・水野が解説を致しました。
前日には、政府機関と弊社ですり合わせを行いましたが、法律解釈に関する双方の意見がなかなか折り合わず、激論が交わされた一幕もありました。
今回の Q&A、及びその準備で、水野が印象に残った点をご紹介します。

1.物流園区内の販売会社設立(Q 2、5、6)

政府側の当初の回答は、「物流園区内には販売会社は設立できない。保税区に作るべき」というものでした。
ただ、法制上は、物流園区内の販売会社設立は禁止されておらず(商貿字[2005]76 号には、物流園区企業が国内流通権・貿易権を申請できる事が明記されている)、販売会社の設立を認めないという回答をするのは、あるべき論としておかしい、という事になり、当日は添付の通り、推奨しないという回答に落ち着きました。
但し、実務上は、販売会社は保税区に集約しようという姿勢は明確であり、広州物流園区内に販売・貿易会社の設立を申請しても、許可は下りない様です(広州物流園区は、物流会社に特化しての誘致)。

2.区内企業が輸入する自己使用設備(Q 7)

区内物流企業が輸入する自己使用設備に関しては、関税・増値税が免除されるとの回答です。
これは、「保税物流園区に対する管理弁法(税関総署令[2005]第 134 号)」 に基づく回答ですが、保税区域企業の設備免税輸入に付いては、保税区域により、対応が不統一となっています。
これは、2009 年 1 月の増値税暫定条例の改定(固定資産購入に伴う支払い増値税が控除可能になった)に伴い、免税輸入制度が廃止された事に起因します。
上海市外高橋保税区の税務機関、区外の税務局にヒアリングした際には、「増値税に関しては、全ての免税輸入制度が廃止された。保税区域でも同様」という回答が返ってきています。
広州では免税輸入可能という回答でしたが、これに付いては、実際輸入する際に、逐次確認した方がよいと思います。
因みに、税務局の回答として、保税物流中心 B 型の管理弁法が根拠として引用されていますが、本来これは、物流園区の管理規定(税関総署令[2005]第 134 号)になるべき筈で、この意味でも、物流園区に対する理解度の不足が伺えます。

3.物流園区遊の所要時間(Q 10)

今回の広州物流園区の説明で、一番興味深かったのはこの点で、つまり、「加工貿易貨物を区内に搬入してから搬出するまでの時間が 20〜30 分」との説明です。
前日、水野より、「それは短すぎるのではないか。外高橋は 2〜4 日かかって いるが」と質問しましたが、彼らの説明は、以下の通りです。 * 外高橋でそれだけの時間を要しているのは知っている。
但し、広州物流園区では、事前検査制度を採用しており、貨物を区内に搬入する前に検査を行う。よって、搬入までに時間はかかるが、区内にとどまっている時間は短い。
実例からみても、その時間で搬入・搬出ができている。 搬入貨物が増えれば(広州物流園区の活用が増えれば)所要時間は増えると思いますが、それでも、当日中の搬出が可能なようです。
因みに、保税監督区域外貨管理弁法では、物流園区遊に絡む外貨送金(区外企業 ⇒ 外国企業)を行う際に、区内の倉庫会社が発行した、保管協議書が必要な事が定められています。
数十分しか区内にとどまらない場合(倉庫が使われない場合)どうするのか、という点ですが、この様な場合でも、区内の物流・倉庫会社が、(送金用の資料として)保管協議書を発行する様です。
外高橋にも確認しましたが、「特に急ぎの場合は、この様な対応(数時間で搬入・搬出を行い、物流会社が仮協議書を発行)をする事はある、との事でした。

4.P/E 認定(Q 14)

物流園区遊をした時の非居住者の P/E 認定の問題ですが、今回の事前すり合わせで、一番苦労したのがこの点です。
最初の税務局の回答は、「中国内源泉所得は中国で課税される」というもので、水野より、「そんな回答したら、誰もこの物流園区使わなくなりますよ。租税条約で単純な保管引き渡しは P/E を構成しないと決まっているでしょう」と指摘し、議論する事 40 分。
やっと、「中国内の所有権移転だが、経済行為は境外で生じているので課税対象外」という結論に落ち着いたものです。
議論の過程でわかったのは、広州物流園区側が、まだ、園区内での所有権移転により非居住者の所得が発生するという行為自体を理解していないという点。
実例に伴い、理解は増していくと思いますが、この点、立ち上がったばかりの物流園区、という印象を受けました。

5.物流園区企業の加工委託(Q15)

物流園区の販売会社が、来料・進料加工の委託者になれるか(外国企業に 代替できるか)という質問です。
一応、回答がされていますが(質問の趣旨が十分理解されていない為、回答のポイントが若干ずれています)、本音は、「区内の販売会社設立は方針として認めないので、この質問自体無意味」という事の様です。