対外借入管理の制度と実務 執筆日:2019年10月5日
2020-05-30対外借入管理の制度と実務
外債とは、中国企業が国外企業から融資を受ける行為を指しますが、現在の制度と実務運用について解説します。
1.外債の制度
① 対外借入の方法
中国の外資企業が、中国外から借入を行う場合の方法は、「外債管理弁法(国家発展計画委員会・財政部・国家外貨管理局令[2003]第 28 号)」により、2003 年から開始された「投注差方式」と、「全国範囲で全範囲クロスボーダー融資のマクロプルーデンス管理を実施する事に関する通知(銀発[2016]132 号・銀発[2017]9 号)」により、2016 年から開始された「マクロプルーデンス方式」の 2 種類から選択します。
前者は、対外借入額を定款に規定する総投資と登録資本金の差額に制限する方法(但し、外貨短期借入以外は、返済しても借入枠は復活しない)。後者は、一定の調整を加えた借入残高を、前年度の会計監査報告書の自己資本の 2 倍以内に制限する方法(返済すれば借入枠は復活する)です(注)。
注:
2020 年 3 月 11 日に、「全範囲クロスボーダー融資マクロプルーデンス政策因数の調整に関する通知(銀発[2020]64 号)」が施行され、マクロプルーデンス方式による借入枠は、自己資本の 2.5 倍に拡大されました。
② 選択方法
銀発[2016]132 号が施行された、2016 年 5 月 3 日以降の最初の対外借入時に選択し、継続適用が義務付けられます(初回の借入時は、施行前に投注差を選択していた場合でも変更可能)。
但し、上海自由貿易試験区の企業は、上海匯発[2019]62 号により、同法施行の 2019 年 7 月 10 日より 1 年以内は、既に投注差方式選択済の外資企業でも、1 回のみ変更が認められます。
尚、投注差方式は、外資企業にのみ認められた方式です。一方、マクロプルーデンス方式は、内資企業(中国内の外資企業が、持分出資方式で設立した会社を含む)でも選択可能です。
2.外債の実務運用
外債の実務運用については、地域によって違いがあると思われますが、上海地域の実務運用を、外貨管理局でのヒアリングを踏まえて解説します。
① 金利
金利は、実勢に基づき当事者間で決定できます。
但し、子会社支援の観点で、無金利、若しくは、低金利で融資が行われるケースも少なくありません。
上海市外貨管理局が認める外債金利の利率は 0%~ 7%の範囲という事であり、0%、若しくは、7%を適用する場合は、その理由を記載した説明書類の提示が必要との事です。
② 借入手続
外債の手続は、融資契約書締結後、15 営業日以内に外貨管理局で契約登記を行い、登記完了後、銀行で外債口座を開設し、融資を受ける事になります。
上海外貨管理局での登記時に提出する書類は、以下の通りです。
1)申請書(借入金額、期限、用途、企業の財務状況、返済計画などを記載)
2)境内機構外債情報表(外貨管理局指定の様式)
3)企業の営業許可証、批准証書(備案証明)のコピー
4)融資契約書(外国語の場合は、中文訳も提示)
5)マクロプルーデンス方式を採用する場合は、直近の監査報告書、その他の資料
6)外貨管理局が要求する、その他の書類
外債契約の登記は、通常、申請日から約 20 営業日となります。
③ 清算資金の提供
子会社の清算に当たり、債務弁済資金が不足する場合、破産を避けるために増資、若しくは、融資を行う場合が有ります。
融資形式(外債形式)で資金拠出する場合、返済が行われませんので、その場合は、契約登記時に、その事実を外貨管理局に説明する必要があります。