オフショア取引決済に関する規制強化 執筆日:2017年2月11日

2020-05-30

オフショア取引決済に関する規制強化

2012 年 8 月の貨物代金決済改革(匯発[2012]38 号)により、中国において、オフショア取引ができるようになりましたが、2016 年の外貨管理強化で、再度、規制強化が実施され、対応が難しくなっています。

1.オフショア取引決済の経緯

オフショア取引とは、中国外で貨物が移送される取引に関して、中国企業がインボイススウィッチ形式で売買に関与する形式を言います。

2012 年 8 月 1 日の貨物代金決済改革(匯発[2012]38 号)以前は、貨物代金決済に際し、輸出入通関単(税関が発行する輸出入通関証明)の確認が行われていましたので、中国内で通関が行われないオフショア取引は決済が認められませんでした(保税区域の企業のみは例外的に決済可能)。これが、貨物代金決済改革以降、保税区域企業だけではなく、非保税区域の販売会社でも、決済が認められる様になりました。

尚、上記、「貨物貿易外貨管理法規に関する問題の通知(匯発[2012]38 号)」の施行に際して、輸入貨物代金支払いは、契約書・インボイス・輸入通関単元本の何れか一つ。輸出貨物代金の入金は、銀行に対する入金申請書のみとなり、証憑提示義務が軽減されました。

更に、オフショア取引に関しては、それ以前は、販売代金を先に回収し、その後、仕入れ代金を支払う事が義務付けられていましたが(先受け・後払い)、先払い・後受けも可能となりました。

この様な規制緩和が、2012 年に実施された経緯が有ります。

2.規制強化の経緯

① 2016 年 4 月

上記の経緯で規制緩和されたオフショア取引ですが、2015 年年末より規制強化が実施されました。規制強化は、先ず、上海自由貿易試験区で、「中国(上海)自由貿易試験区の外貨管理改革試行措置の更なる推進の実施細則(上海匯発[2015]145 号)」が施行され、それが、2016 年 4 月 29 日に、「貿易投資の利便性を一層促進し、真実性審査を完備させることに関する通知(匯発[2016]7 号)」により、全国に拡大しました。

結果として、オフショア取引を行う場合は、契約書・インボイス・船積書類・船荷証券・倉荷証券等の証票に基づき決済する事、オフショア取引の売買(売上・仕入)は、同一通貨で行う事が義務付けられました。また、B 類企業のオフショア取引が禁止され(C 類は以前より禁止)、オフショア取引に対応できるのは A 類企業のみとなりました。

この様に、取引実態が、中国内で把握しにくいオフショア取引に関しては、通常の貨物決済時の証憑確認原則とは異なり、船荷証券、倉荷証券など、貨物の所有権を証明する書類の提示を前提とする事が規定されました。

但し、船荷証券、倉荷証券などの権利証書の中で、具体的にどの権利証書が必要かについては、匯発[2016]7 号には明記されておらず、判断が銀行に委ねられています。よって、銀行により、倉荷証券でも認められる場合、船荷証券が無いと認められない場合など、対応状況に違いが生じる状況でした。

② 2016 年 9 月以降

2016 年 9 月、国家外貨管理局綜合司より「銀行外為業務違反事例の通報(匯綜発[2016]103 号)」が銀行向けに公布された事により、オフショア取引規制が一層強化されています。

これは、具体的な規制強化内容の指示ではなく、外貨操作に関する 15 の違反事例を例示し、各銀行に対して、一層の証憑確認義務の履行を指示するものです。

結果として、オフショア取引に関しては、倉荷証券や AWB でも決済が認められない等、その内容は銀行によって異なりますが、決済に関する証憑確認が強化されています。

このため、オフショア取引を行う場合は、具体的な証憑提示条件を、取引銀行に事前確認する事が必須となっています。