中国・ベトナムにおける確定申告、外資企業の営業範囲について【水野コンサルタンシー中国・ベトナムビジネス情報】ダイジェスト版Vol.99

2024-08-19

【中越ビジネスマニュアル 第 99 回】

中国・ベトナムにおける確定申告(法人税・個人所得税)について

法人税と個人所得税の確定申告について解説します。

■1.中国

(1)企業所得税

1)確定申告期限

中国の会計年度は暦年(12月決算)で統一されています。

会計年度終了後、5カ月以内に確定申告をする必要がありますので、確定申告期限は翌年の5月末となります。

開始時期は、実務上は4月1日になりますので、4月1日~5月31日が確定申告期限となります。

2)予納との調整

企業所得税は、四半期予納が義務付けられているため、確定申告で差額調整を行います。また、損金不算入経費の調整、減価償却方法の調整など、会計処理と税務処理が異なる場合の調整も、確定申告で行います。

3)会計監査

会社法第208条(2024年7月1日施行の新会社法)には、「会社は毎年会計年度終了時に、財務会計報告を作成し、会計事務所の監査を受けなければならない」と規定されています。ただし、実務上は14年以降は外資企業に対しても、確定申告時の監査報告書提出は免除されています。この点は、法律と実務が異なりますが、5万米ドルを超過する配当を実施する場合は(対外送金の必要上)匯発[2016]7号により、会計監査報告書の提示が必要であり、従来通り会計監査を実施する外資企業が多いと言えます。

(2)個人所得税

1)確定申告期限

確定申告要件を満たす個人は、翌年3月1日~6月30日に確定申告手続きを行う必要があります。

2)確定申告要件

「2カ所以上から総合所得を取得し、課税所得が6万元を超過する場合」、「追納、還付を申請する必要がある場合」などの要件を満たす場合は確定申告が必要です。

19年1月1日の個人所得税法改定により、特別付加控除が認められたこと、過納付税額の還付が認められたことなどから、確定申告期限が長くなり、また、対象となる個人も増えました。

■2.ベトナム

(1)法人税

1)確定申告期限

ベトナムの会計年度は、原則暦年(12月決算)ですが、3月・6月・9月決算を選択することも可能です。

会計年度終了後、3カ月以内に確定申告をする必要がありますので、確定申告期限はそれぞれ、翌会計年度の3月末、6月末、9月末、12月末となります。

2)予納との調整

法人税は、四半期予納が義務付けられているため、確定申告で差額調整を行います。また、損金不算入経費の調整など会計処理と税務処理が異なる場合の調整も、確定申告で行います。予納額は確定申告額の80%を下回ってはならず、下回った場合はその差額に対して遅延利息が発生する点には注意が必要です。

3)会計監査

外資企業に対しては、企業規模や上場の有無にかかわらず、監査法人による会計監査が義務付けられています。よって、毎年の決算終了後、法人税の確定申告前に会計監査を行い、確定申告時に所管機関に監査報告書を提出する必要があります。また、配当金の対外支払い時には、監査報告書を銀行に提示する必要があります。

(2)個人所得税

1)確定申告期限

確定申告要件を満たす個人は、翌年1月1日~4月30日に確定申告手続きを行う必要があります。

2)確定申告要件

課税所得を有するベトナム居住者は、確定申告が必要です。

20年7月1日からは、国会常任委員会決議・第954/2020/UBTVQH14号により、基礎控除額、扶養控除額はそれぞれ1,100万ドン、440万ドンへと引き上げられています。また、改正租税管理法・第38/2019/QH14号により、確定申告期限も4月30日までと長くなっています。


中国・ベトナムにおける外資企業の営業範囲について

中国・ベトナムでは、会社の活動範囲は定款・営業許可証・投資登記証に記載された経営範囲に制限されますが、その制度について解説します。

■1.中国

(1)経営範囲

中国で法人を設立する際は、営業許可範囲を申請・取得する必要があり、法人の活動範囲はこの内容に限定されます。

法人の営業許可の記載は、過去には地域によって異なっていましたが、「市場主体登記登録作業の統一規範レベルの向上に関する通知(市監注[2020]85号)」により、全国的な統合が実施されました。

現在では、経営範囲の内容は国家市場監督管理局が公布した「経営範囲規範表述目録(試行)」に基づく必要があります。

(2)特別経営許可

以下の経営範囲を取得する場合は、事前に相応の経営許可証を取得する必要があります。

●証券、金融、学校、たばこ、爆発物、武器、警備、放送、出版、危険化学品、先物、保険、クーリエ、労働派遣等。

危険化学品を例にとると、危険化学品の事前申請をしない限り、取得できる化学品の経営範囲は、「化学製品の販売(許可類化学製品を含まない)」となり、危険化学品の取り扱いを希望する場合は事前に手続きが必要となります。

(3)経営期限

現在では、外資企業も内資企業と同様、長期(無期限)という設定が認められています。よって、設立時の「公司登記(備案)申請書」には、「経営期限:長期、または_年」の記入欄があり、ここに申請者が任意記載することになります。

■2.ベトナム

(1)経営範囲

外国法人がベトナムで法人を設立する際は、まずは投資登記証明書を取得し、その後に企業登記証明書を取得するという2段階の手続きになっています。営業可能範囲の申請は、この最初の手続きである投資登記証明書の申請・取得に際して行う必要があり、法人の活動範囲は投資登記証明書の内容に限定されます。

法人の営業許可の記載に関して、特に地域による違いはありません。

経営範囲の内容は、投資法で規定されている投資禁止分野による制限を受けます。

(2)特別経営許可

以下の経営範囲を取得する場合は、企業登記後に相応の経営許可証を取得する必要があります。

●証券、金融、保険、法律、会計、監査、警備、学校、人材紹介等。

(3)経営期限

経営期限の上限は原則50年です。例外として、経済区等への投資プロジェクトは最大70年まで認められています。

投資登記証明書の申請に際して、この期限内にて申請者が任意記載することになりますが、実際に認可される期間は、投資登記機関が事業規模・事業内容・進出地域を勘案して決定します。

以上