中国・ベトナムにおける電子マネーの普及状況と決済方法、ビザと就業許可について【水野コンサルタンシー中国・ベトナムビジネス情報】ダイジェスト版Vol.97
2024-06-17【中越ビジネスマニュアル 第 97 回】
中国・ベトナムにおける電子マネーの普及状況と決済方法について
中国・ベトナムにおける電子マネーと決済に関する状況について解説します。
■1.中国
(1)決済状況
中国は、電子マネーが極度に普及・発展していますので、商店・ホテル・交通・レストラン等、各所の決済はアリペイ、ウィチャットペイの電子マネーで支払います。
携帯電話があれば買い物ができるので、財布を持たずに外出するケースが多いと言われますが、コンビニなどでは、中国公民は顔認証のみで決済ができるので、何も持たずに物品を購入することも可能です。
(2)電子マネー使用の条件
電子マネーを使用するためには、実名認証が必要になります。よって、使用申請時に必要情報を記載するだけでなく、身分証明書(外国人の場合はパスポート)を持った状態の顔写真をアップロードして、審査を受けます。
その上で、中国内の銀行口座に連動します。
(3)外国人の使用
アリペイ・ウィチャットペイは、中国内の銀行口座に連動させるのが原則ですが、2017年以降、中国では外国人非居住者に対する銀行口座開設が制限されています(中国内口座開設時に、パスポートと居留許可証を提示する必要があります)。
このため、外国人の中国訪問者は電子マネー使用ができない状況でしたが、数年前に国際クレジットカードに連動できるようになりました。
ただ、使用制限金額が低く、使い勝手が悪かったため、24年3月7日に、阿里巴巴集団(アリババグループ)は、非居住者外国人に対して、アリペイでの支払いを1回当たり1,000米ドル、年間累計額1万米ドルから、1回当たり5,000米ドル、年間累計額5万米ドルに引き上げると発表しました。
(4)今後の方向性
国務院は24年3月7日に、「支払いサービスのアップグレードと利便性の一層の改善に関する国務院弁公室の意見(国弁発[2024]10号)」を公布しました。
ここでは、高齢者、中国を訪問する外国人の利便性を考慮し、現金、銀行カード支払い等の伝統的な支払いに関する利便性向上や、現金受け取り拒否に対する罰則適用を指示しています。
■2.ベトナム
(1)決済状況
24年1月と前年同月のキャッシュレス決済のデータ(VISA)を比較しますと、決済数は63.3%増加、決済金額は41.45%増加しています。そのうち、QRコードによる決済に関しては、決済数は892.95%増加、決済金額は1,062%増加しており、電子マネーが少額決済において、急速に普及・発展してきている状況がうかがえます。外国人経営のレストランに関しては、まだまだ導入していない店舗が多くみられますが、コンビニエンスストア、カフェ、タクシー等の決済はMOMO、ShopeePay、VNPAY等の電子マネーでの支払いが可能となっています。
(2)電子マネー使用の条件
電子マネー使用をするためには、実名認証が必要になります。よって、使用申請時に必要情報を記載するだけでなく、ベトナムの携帯電話番号、身分証明書(外国人の場合はパスポート)、顔写真をアップロードして、審査を受けます。銀行口座との連携も可能ですし、コンビニエンスストア等にて現金でのトップアップも可能です。
(3)外国人の使用
MOMO、ShopeePayは、現金でのトップアップが可能ですので、外国人非居住者にも利用可能ですが、出金ができない点は注意が必要です。国際クレジットカードは、以前は連動できましたが、数年前から連動できなくなっています。VNPAYは、ベトナム国内銀行のスマートフォンアプリがあれば、QRコードを読み取ることにより決済できますので、銀行口座を有する外国人にとっては便利な決済方法です。使用制限金額に関しては、マネーロンダリング防止の観点から中央銀行が設定しており、1日の上限は2千万VND(約12万円)、1カ月の上限は1億VND(約60万円)です。
(4)今後の方向性
首相は21年10月28日に、「21年~25年の期間におけるベトナムのキャッシュレス決済の発展スキームへの承認(首相決定・第1813号)」を公布しました。
ここでは、キャッシュレス決済を年平均20%~25%増加させること、そのうちモバイル決済に関しては、決済数を年平均50%~80%増加させ、決済金額は年平均80%~100%増加させることを目標として定めています。
いまだに、ベトナムでは現金決済が好まれる傾向にありますので、中国のように現金受け取りが嫌がられるという段階には至っていません。
中国・ベトナムにおけるビザと就業許可について
中国とベトナムの査証(ビザ)と就業許可について解説します。
■1.中国
(1)ビザの種類
「外国人出入国管理条例(国務院令2013年第637号)」・「外国人の入国及び短期業務遂行に関する入国手続の通知(人社部発[2014]78号)」に、ビザの種類が規定されています。中国でのビジネス(出張・駐在)を前提とした場合、該当するビザは「Zビザ(工作許可証の取得を前提とした就労のためのビザ)」、「Mビザ(商業貿易活動を前提とした出張用ビザ)」、「Fビザ(交流・視察等を目的としたビザ)」となります。
なお、Mビザ・Fビザは、短期訪問を目的としたものであり、中国内で個人が給与所得等の報酬を得るための活動を行うことは認められません。
ちなみに、M・Fビザの中国内での延長は原則不可でしたが、国家移民管理局は2024年1月11日に、これを認める方針を発表しています(合理性が認められる場合に限定)。
(2)就業許可
中国での工作許可証申請の根拠となるのは、「外国人中国就労許可制度の全面的実施に関する通知(外専発[2017]40号)」で、ここでは外国人のランクをA~Cの3種類に分けています。C類は期間限定など特殊な場合ですので、出向に際してはA類・B類のいずれかで工作許可証を申請します。
分類は、年収、ポイント、その他の方法の適用によりますが(いずれかの条件を満たせば取得可能)、年収基準の場合、A類は「平均給与が当該地域(市)の前年度の平均給与の6倍以上」、B類は「4倍以上」となります。ポイントの場合、A類は85点以上、B類は60点以上となります。
ただ、「学士以上の学位、2年以上の職務経験、年齢60歳以下」の3条件を全て満たす場合、B類に該当しますので、(ポイント計算などはせずに)この条件により、工作許可を取得するケースが多いです。
■2.ベトナム
(1)ビザの種類
「ベトナムにおける外国人の入国・出国・乗継・居住に関する法律(第47/2014/QH13号)」・「同改正法(第51/2019/QH14号)」に、ビザの種類が規定されています。
ベトナムでのビジネス(出張・駐在)を前提とした場合、該当するビザは、「LDビザ(労働許可証の取得を前提とした就労のためのビザ)」、「DNビザ(商業貿易活動を前提とした出張用ビザ)」。
なお、DNビザは、短期訪問を目的としたものであり、ベトナム内で個人が給与所得等の報酬を得るための活動を行うことは認められません。
ちなみに、ビザのベトナム内での延長は原則として認められていますが、労働許可証の再取得がビザの有効期間内に間に合わない場合などは認められません。また、ベトナム内でのビザの種類の変更は、就労を前提としたLDビザへの変更などに限定されています。
(2)就業許可
ベトナムでの労働許可証申請の根拠となるのは、「ベトナムで就労する外国人労働者等に関する規定(第152/2020/ND-CP号)」・「同規定へ改正・補則(第70/2023/ND-CP号)」で、ここでは、労働許可への申請を職務内容に基づき、管理職、技術者、専門家の3種類に分けています。
1)管理職:社員総会の会長・構成員、会社会長・社長などの職位にある者、支店や駐在員事務所などの長である者、1部門以上を直接管理する長であり、その部門が属する組織の長の直接の指揮・管理下にある者。
2)技術者:就業予定の職位に関連する1年以上の訓練および3年以上の職務経験を有する者。
3)専門家:学士以上の学位を有し、就業予定の職位に関連する3年以上の職務経験を有する者。
以上