【水野コンサルタンシー中国・ベトナムビジネス情報】ダイジェスト版Vol.95
2024-04-18【中越ビジネスマニュアル 第 95 回】
中国・ベトナムにおける輸入関税評価額に加算する対外支払いについて
輸入通関価格に加算することが要求される対外支払い項目について解説します。
■ 1.中国
輸入貨物に関しては、関税・増値税、特定商品に関しては消費税が課税されますが、このベースとなる価格(関税評価額)は、CIF価額となること。ただし、取引価格が不適切であると判断される場合は、適正時価を算定し、それに基づく課税となることは【水野コンサルタンシー中国・ベトナムビジネス情報】 ダイジェスト版 Vol.94 で解説しました。
ただ、このような取引価格の修正だけでなく、「個別に支払われるものの、本来的には貨物価格に含まれるべきもの」として、関税評価額に加算が必要となる項目が存在します。
「税関輸出入貨物課税価格査定弁法(税関総署令 2013 年第 213 号)」には、輸入貨物に関連する一定の対外支払いは、輸入貨物の関税評価額に加算することが要求されていますが、それは以下のようになります。
(1)本来輸入貨物価格に含むべき費用(第 11 条)
1)買い手が負担するコミッション(商品買付手数料除く)とブローカー費用、梱包(こんぽう)材、貨物と一体となる容器費用。
2)買い主が無料もしくは安価に提供した材料、工具、消耗材、設計などのサービス。
3)買い主(中国企業)が売り主(外国企業)に対して直接・間接的に支払う中国内販売収益など。
(2)輸入貨物に関連するロイヤルティー(第 13 条)
1)特許・専有技術により製造・設計されたものなど。
2)商標をつけて、そのまま(もしくは簡単加工をした上で)販売できるもの。
3)著作権内容を含む輸入貨物。
4)そのままもしくは簡単加工後に国内販売できる輸入貨物に関する販売代理権など。
(3)輸入貨物購入のための権利金など(第 14 条)
中国内販売貨物のための輸入であり、それを支払わないと、当該貨物の買い付け、契約締結ができない費用などの支払い。
■ 2.ベトナム
輸入貨物に関しては、関税・付加価値税、特定商品に関しては特別消費税が課税されますが、このベースとなる価格(関税評価額)は、CIF価額となること。ただし、取引価格が不適切であると判断される場合は、適正時価を算定し、それに基づく課税となることは、【水野コンサルタンシー中国・ベトナムビジネス情報】 ダイジェスト版 Vol.94 で解説しました。
ただ、このような取引価格の修正だけでなく、「個別に支払われるものの、本来的には貨物価格に含まれるべきもの」として、関税評価額に加算が必要となる項目が存在します。
「輸出入貨物課税価格規定(財務省通達・第 39/2015/TT-BTC 号)」には、輸入貨物に関連する一定の対外支払いは、輸入貨物の関税評価額に加算する事が要求されていますが、それは以下のようになります。
(1)本来輸入貨物価格に含むべき費用(第 13 条)
1)買い手が負担するコミッションとブローカー費用(費用がベトナムの税を含む場合は税を除く)、梱包材(輸送に複数回用いられるコンテナおよびラックは除く)、梱包材運搬費用、梱包人件費。
2)買い主が無料もしくは安価に提供した材料、工具、消耗材、設計などのサービス。
3)買い主(ベトナム企業)が売り主(外国企業)に対して、直接・間接的に支払うベトナム内販売収益など。
(2)輸入貨物に関連する著作権等(第 13 条・14 条)
1)特許・専有技術により製造・設計されたものなど。
2)商標をつけて、そのままベトナム国内で販売できるもの、もしくは簡単加工を施すもの。
(3)輸入貨物購入・販売のためのロイヤルティなど(第 14 条)
輸入貨物の購入およびその販売に際して、それを支払わないと、当該貨物の買い付け、契約締結ができない費用(ロイヤルティ、ライセンス料)などの支払い。
中国・ベトナムにおける保税開発区について
中国とベトナムの保税開発区について解説します。
■ 1.中国
(1)概要
中国には多種類の保税開発区があります。
2022 年 12 月末の税関総署の発表では、全国 253 カ所の保税開発区とされており、内訳は以下の通りです。
● 保税区8カ所、輸出加工区1カ所、総合保税区 156 カ所、保税港区2カ所、保税物流中心B型 85 カ所、クロスボーダー園区1カ所
上記には、本来あるべき保税物流園区が記載されていません(保税物流園区は保税区内に設置されるため、保税区の一部として扱われているものと推測されます)。
一方、上記発表の輸出加工区1カ所は広州輸出加工区ですが、23 年末に閉鎖が決定しています。このように、保税開発区は絶えず変動しています。
(2)経緯と今後の方向性
1)設置の経緯
中国の第1号保税開発区は保税区で、1990 年認可。その後は輸出加工区(2000 年)、保税物流園区(03 年)、保税物流中心B型(04 年)、保税港区(05 年)、総合保税区(06 年)という形で認可されました。 また、少々特殊な形態ですが、ボーダーをまたぐ保税工業園として、クロスボーダー園区(第1号は珠海・マカオ)があり、これは 03 年に珠海側が認可されています。
このように、種類が多い上に、個々の機能が異なっています。 例えば保税区、保税港区、総合保税区は、生産型企業・サービス企業を広く受け入れますが、増値税輸出還付政策は異なる部分があります。 また、保税物流園区、保税物流中心B型は物流機能に特化しています。 輸出加工区は輸出加工企業を中心として受け入れているなど、機能をかなり限定した開発区もあります。
2)今後の方向性
上記の通り、機能の把握・保税開発区利用時の選択が難しいことを理由として、「税関特別監督管理区域の科学的な発展を促進する事に関する指導意見(国発[2012]58 号)」が公布され、全国の保税開発区のうち、条件が整った開発区を総合保税区に転換する方針が決定されました。 このため、かつては最大数であった輸出加工区は、総合保税区への転換(もしくは廃止)が相次ぎ、制度廃止に。保税港区も総合保税区に転換される予定です。
これにより、クロスボーダー園区を除けば、保税開発区の種類は総合保税区、保税区(区内に保税物流園区を包括する)、保税物流中心B型の3種類に集約されると思われます。
■ 2.ベトナム
(1)概要
ベトナムの保税区域として、輸出加工区があります。
22 年 12 月末の計画投資省の発表では、ベトナム全土には 292 カ所の稼働中の工業区があり、この大部分は非保税区域ですが、この一部は内部に輸出加工区を設置しています。
ただ、既にライセンスが付与(未稼働のものを含む)された工業区総数は 407 カ所ありますので、今後、輸出加工区の数も増加していくことが予想されます。
なお、非保税区域である工業区内部にも、保税加工を認められた輸出加工企業(EPE)が設立されていますが、これは中国と同様です(中国でも、非保税工業団地内に保税取引が認められた加工貿易企業あり)。
(2)経緯と今後の方向性
1)設置の経緯
輸出加工区は、輸出加工企業の誘致を目的としているため、ホーチミン・ハノイ市内およびその近郊の都市部に設置されています。
一方、保税特別地域である経済特区(現時点で 26 カ所の国境経済特区および 18 カ所の沿岸経済特区が認可)は企業誘致を望む、経済的発展が遅れた地域で開設される傾向があります。
2)今後の方向性
上記の通り、都市部にも輸出加工区が設置されていますが、ベトナムの経済発展に伴い、都市部は単純な輸出加工ではなく、クリーン・ハイテクの大型投資が望まれる傾向が顕著になっています。 これにより、輸出加工区の新設は近年、全国に分散される方向にあります。
以上