【水野コンサルタンシー中国・ベトナムビジネス情報】ダイジェスト版Vol.94
2024-02-08【中越ビジネスマニュアル 第 94 回】
中国・ベトナムにおける通関手続きについて
中国とベトナムの通関方法について解説します。
■1.中国
(1)輸入時点の課税と関税
関税の根拠となるのは「輸出入関税条例(国務院令2003年第392号)」・「輸出入貨物課税価格査定弁法(税関総署令2013年第213号)」等であり、具体的な関税率は毎年公布される「輸出入税則」に基づきます。
(2)輸入段階の課税
輸入に際しては、関税、増値税および特定品目に対しては消費税が課税されます(消費税は特定のしゃし品のみが課税対象となります)。
輸入段階課税は、全て所管税関に対して納付することになり、税関は、納付証明書(海関キョウ款書、キョウ=激のさんずいが糸へん)を企業に対して発行します。
なお、増値税の納税額は以下の通り計算します。つまり、関税・消費税を含んだ金額に対して、増値税が課税されます。
増値税課税評価額=関税評価価額(CIF)+関税+消費税
納付税額=増値税課税評価額×税率
関税は、輸入関税と輸出関税に分けられ、計算基準は従価(価格に基づき課税)、従量(数量に基づき課税)、混合(従価と従量の併用)に分けられます。
・従価課税額=課税価格×関税税率
・従量課税額=貨物数量×単位税額
(3)関税の種類
関税の種類は、以下の通りとなります。
1)最恵国税率
WTO加盟国および中国と相互に最恵国待遇を与える条項を含む2国間協定を締結している国・地域原産の輸入貨物に適用。
2)協定税率
関税優遇条項を含む地域貿易協定(RCEP、CEPA、中国アセアンFTA等)を結んでいる国・地域原産の輸入貨物に適用。
3)特恵税率
特殊関税優遇条項を含む貿易協定を結んでいる国・地域(特定の発展途上国)原産の輸入貨物に適用する最恵国関税より有利な税率。
4)普通税率
上記に該当しない国・地域原産の輸入貨物および原産地が不明な輸入貨物に適用。
5)輸出関税
一部の輸出を奨励しない製品(約100品目)に対しては、輸出関税が課税される。
(4)税関信用ランク
貿易行為を行う企業は、「税関登録登記・備案企業信用管理弁法(税関総署令2021年第251号)」に基づき税関信用ランクが付与されます。 税関ランクは高級認証企業、信用喪失企業、その他企業の3種類に分かれており、高級認証企業は優遇を、信用喪失企業は懲罰的対応を受けます。
1)高級認証企業
高級認証企業は、AEO(Authorized Economic Operator)であり、税関優遇措置の対象となります(輸出入検査率の引き下げ、優先的な通関手続き、税関担保免除申請の許可、税関調査の回数軽減など)。
2)信用喪失企業
信用喪失企業は、密輸犯罪・密輸行為、年間罰金累計100万元超等の理由により降格された企業であり、懲罰的な対応を受けます(輸出入貨物の検査率80%以上、加工貿易に際しての全額担保強制、査察や検査頻度の引き上げ等)。
(5)通関価格の原則
従価方式が採用される場合の課税価額は、輸入の場合、原則として実際の成約価格(CIF価格)となります。 ただし、「輸出入貨物課税価格査定弁法(税関総署令2013年第213号)」では、税関が取引価格を不適切と判断する場合、以下の順序で関税価格を査定・確定することを規定していますが、その場合は以下の優先順位で適正時価を算定します。
1)同時期に輸入された同種貨物の成約価格
2)同時期に輸入された類似貨物の成約価格
3)逆控除価格(同一、類似商品の中国内の販売価格を基に輸入価格を逆算する方法)
同時期に輸入された同種・類似輸入貨物を最初の販売段階で特殊関係のない買い手に販売した中で、総販売量が最も大きい物の価格を採用(輸入段階価格への調整後)。
4)計算価格
製造原価、関連経費等を元に適正価格を算定する方法
5)その他の合理的な価格
■2.ベトナム
(1)輸入時点の課税と関税
関税の根拠となるのは「輸出入税法(第107/2016/QH13号)」であり、具体的な関税率は「輸入品に対する標準税率適用に係る首相決定(第15/2023/QD-TTg号)」等に基づきます。
(2)輸入段階の課税
輸入に際しては、関税、付加価値税および特定品目(たばこ、酒類等のしゃし品)に対しては特別消費税が課税されます。
輸入段階課税は、全て所管税関に対して納付することになりますが、納税証明書の発行は、納税者が税務局に依頼する必要があります。
なお、付加価値税の納税額は、「付加価値税法(第13/2008/QH12号)」に基づき、以下の通り計算します。 つまり、関税・特別消費税を含んだ金額に対して、付加価値税が課税されます。
付加価値税課税評価額=関税評価価額(CIF)+関税+特別消費税
納付税額=付加価値税課税評価額×税率
関税は、輸入関税と輸出関税に分けられ、計算基準は従価(価格に基づき課税)、従量(数量に基づき課税)、混合(従価と従量の併用)に分けられます。
・従価課税額=課税価格×関税税率
・従量課税額=貨物数量×単位税額
(3)関税の種類
関税の種類は、以下の通りとなります。
1)優遇税率
WTO加盟国およびベトナムと相互に最恵国待遇を与える条項を含む2国間協定を締結している国・地域原産の輸入貨物に適用。
2)特別優遇税率
関税優遇条項を含む経済連携協定(RCEP、JVEPA、AJCEP、CPTPP等)を結んでいる国・地域原産の輸入貨物に適用。
3)一般税率
上記に該当しない国・地域原産の輸入貨物および原産地が不明な輸入貨物に適用。
4)輸出関税
一部の輸出を奨励しない製品(白檀、硫化鉄鉱、硫黄、天然黒鉛、珪砂等)に対しては、輸出関税が課税される。
(4)税関信用度に基づく優遇
貿易行為を行う企業は、「税関法(第54/2014/QH13号)」に規定される一定の条件を満たすことにより、通関時の優遇制度を享受することができます。
1)適用条件
優遇制度の適用には、以下の全ての条件を満たすことが必要です。
a.連続する2年間における税関法および税法の厳守
b.規定値に達する年間輸出入額(政令に基づく)
c.電子申告に基づく通関および税務申告の実施、税関当局のネットワークに接続された輸出入活動の管理のための情報技術プログラムの保有
d.金融機関経由での支払い
e.関連する内部統制システムの保持
f.会計および監査規定の厳守
2)優遇内容
a.通関書類に関連する書類の検査免除および通関手続き実施時における実物検査の免除。 ただし、法令違反の兆候が見られる場合もしくは法令順守状況の評価の必要性から実施する無作為検査の場合はこの限りでない。
b.不完全な通関書類もしくは通関書類の代替書類による通関手続きの実施。 ただし、通関申告者は、不完全な通関書類による登録もしくは通関書類の代替書類による提出から30日以内に、完全な通関書類および通関書類に関連する書類を提出しなければならない。
c.税法に基づく、貨物に関わる税務手続きの優先実施。
(5)通関価格の原則
従価方式が採用される場合の課税価額は、輸入の場合、原則として、実際の成約価格(CIF価格)となります。 ただし、「輸出入貨物課税価格規定(財務省通達第39/2015/TT-BTC号)」では、税関が取引価格を不適切と判断する場合、以下の順序で関税価格を査定・確定することを規定していますが、その場合は、以下の優先順位で適正時価を算定します。
1)輸入された同一貨物の成約価格
2)輸入された類似貨物の成約価格
3)控除価格
取引・同一・類似商品のベトナム内の販売価格から、輸送費や保険料などの合理的な費用および利益を控除して、輸入価格を逆算する方法。
4)計算価格
製造原価、関連経費等を元に適正価格を算定する方法。
5)その他の合理的な価格
以上