【Mizuno-CH中国・ベトナムビジネス情報】ダイジェスト版Vol.93

2024-01-18

【中越ビジネスマニュアル 第 93 回】

中国・ベトナムにおける外国人給与について

中国・ベトナム国内で勤務する外国人が受領する給与にかかる決済と課税について解説します。

■1.中国

(1)支払い通貨

中国の「外貨管理条例」は、中国内での外貨決済を禁止しています。かつては、外国人社員に対する給与は例外的に外貨払いが認められていましたが、2002年に国家外貨管理局より支払い禁止の通知が公布されました。ただ、実務上はそれ以降も企業の保有外貨の範囲内であれば、外貨払いが認められてきましたが、徐々に管理が厳しくなり、現在では少数の例外を除いて、人民元払いが原則となっています。

なお、中国の銀行口座内の人民元資金は、個人所得税の申告所得の範囲内であれば、外貨に換金の上、国外の自分名義の口座に送金することができます。

これは銀行手続きだけであり(外貨管理局・税務機関の送金許可は不要であり)、金額制限もありません。

(2)親会社等が立て替えた給与の精算

中国駐在員の給与の一部を出向元である日本の親会社等が、日本で立て替え払いするのが一般的です。これは、駐在員の日本での必要資金(家族の生活費、年金の支払い等)に充当するためですが、出向先の中国法人が国家税務総局・外貨管理局2013年第40号に基づいた手続きを行えば、立て替えた親会社等に対して、対外送金することができます。この手続きとは、全出向社員に関する精算額が1回当たり5万米ドル超であれば(個々人の分割手続きは不可)、所管税務機関で備案(実質的な送金許可手続き)することとなります。

(3)課税対象給与

外国人は、年間183日以上中国に滞在する場合は居住者に該当しますので、全世界所得課税と規定されていますが(個人所得税法)、同法実施条例に連続滞在6年未満の場合は、国外源泉所得に対する課税が免除されることが規定されています。つまり、国内源泉課税となります(6年のカウントは、2019年1月1日から起算となります)。

ただ、国際課税の常識として(日本でも同様ですが)、所得源泉は支払い場所ではなく、何を対価とした支払いかにより判定されますので、中国駐在の対価として受領するのであれば、日本払い部分も中国源泉所得として中国で課税対象となります。

■2.ベトナム

(1)支払い通貨

ベトナムの中央銀行通達・第32/2013-NHNN号「ベトナム領域内での外国為替使用禁止規定施行指針」は、ベトナム内での外貨の流通および外貨建値の設定を原則として禁止していますが(同通達・第3条)、外国人社員の給与については、例外的に外貨払いを認めています(同通達・第4条・第14項)。

なお、ベトナムの銀行口座内の外貨資金は、個人所得税の申告所得の範囲内であれば、国外の口座に送金することができます(自分名義口座のみとする限定は無いため、他人名義口座への送金も可能です)。これは銀行手続きだけであり(外貨管理局・税務機関の送金許可は不要であり)、金額制限もありません。給与振込時に銀行に提出する給与台帳には個人所得税の源泉徴収額も記載されていますので、通常、国外送金に際して追加での書類は求められません。

(2)親会社等が立て替えた給与の精算

ベトナム駐在員の給与の一部を出向元である日本の親会社等が日本で立て替え払いするのが一般的です。これは、駐在員の日本での必要資金(家族の生活費、年金の支払い等)に充当するためですが、出向先のベトナム法人が外国為替法(第28/2005/PL-UBTVQH11号)に基づいた手続きを行えば、立て替えた親会社等に対して対外送金することができます。ベトナムでは、非貿易・経常項目に関わる送金は原則自由とされていますので(同法・第2章・第6条)、銀行に送金内容に関するする証憑を提示することで対外送金ができます。具体的には、「雇用契約書、派遣元の日本法人が給与の一部を立て替え払いすることに関する合意書、給与明細書、労働許可書等」が該当します。

(3)課税対象給与

外国人は、年間183日以上ベトナムに滞在する場合は居住者に該当しますので、全世界所得課税と規定されています(個人所得税法)。

中国のような、一定基準未満の連続滞在期間に基づく国外源泉所得に対する課税免除の規定はありません。


中国・ベトナムにおける外国人の個人所得税について

外国人の個人所得税申告について解説します。

■1.中国

(1)居住者と非居住者

個人所得税法では、年間(暦年)183日以上滞在する外国人は居住者であり、183日未満の場合は非居住者とすることが規定されています。居住者と非居住者の納税方法の違いは、以下の通りです。

1)居住者

毎月の源泉徴収が義務付けられていますが、課税所得は年度で確定します。超過払い込みがある場合などは、翌年3月1日~6月30日の間に確定申告をすれば還付されます。

基礎控除と特別付加控除の適用が可能ですが、国税発[1997]54号の優遇を受けている場合、特別付加控除は使用できません。

2)非居住者

毎月の所得に対して税額を確定させます。基礎控除は適用できますが、特別付加控除の適用はできません。

(2)課税対象所得

居住者は全世界所得課税。非居住者は中国内源泉所得課税と規定されています。

ただ、居住者であっても、2019年1月1日以降、連続183日以上滞在の年が連続6年未満の場合は、国外源泉所得に対する課税が免除されます(個人所得税法実施条例、財政部・税務総局公告2019年第34号)。結果として、(19年1月1日以降、現時点では6年未経過であるため)中国内に全世界所得課税対象の外国人はいないことになります。

ただ、中国駐在の対価として受領する報酬は、支払地を問わず中国源泉所得ですので、例えば、日本で支払われている給与があっても中国での納税が必要です。

(3)海外組織と兼務している場合

中国内組織と外国組織の兼務をしている場合、所得が中国源泉所得と中国外源泉所得に分かれることになりますので、財政部・税務総局公告2019年第35号の公式に基づいて、国内源泉所得部分を算定して、納税することになります。

納税式は、滞在日数や役職、さらには租税条約の適用を希望するか否か(納税者が選択可能)により変わりますが、基本的には滞在日数(中国内勤務日数の比率)と給与負担比率(中国内組織が負担する給与の比率)を乗じて、中国での納税額を算定する形となります。

■2.ベトナム

(1)居住者と非居住者

個人所得税法では、以下のいずれかに該当する外国人は居住者であり、それ以外は非居住者とすることが規定されています。年間(暦年もしくは入国日から1年)183日以上の滞在、ベトナム居住法に基づく恒久的居住地に関する登記の保持、レジデントカードの保持、ベトナム住居法に基づく住居用の賃貸借契約を課税年度において183日以上締結している者が居住者です。居住者と非居住者の納税方法の違いは、以下の通りです。

1)居住者

毎月の源泉徴収が義務付けられていますが、課税所得は年度で確定します。超過払い込みがある場合などは、翌年1月1日~4月30日の間に確定申告をすれば、以降の申告で控除できます。制度上は還付申請も可能です。また、基礎控除と扶養控除の適用が可能です。

2)非居住者

毎月の所得に対して税額を確定させます。基礎控除と扶養控除は適用はできません。

(2)課税対象所得

居住者は全世界所得課税。非居住者はベトナム内源泉所得課税と規定されています。

ただ、ベトナム駐在の対価として受領する報酬は、支払地を問わずベトナム源泉所得ですので、例えば、日本で支払われている給与があってもベトナムでの納税が必要です。

(3)海外組織と兼務している場合

非居住者がベトナム内組織と外国組織の兼務をしている場合、所得がベトナム内源泉所得とベトナム外源泉所得に分かれることになりますので、ベトナム内源泉所得部分を算定して、納税することになります。

納税式は、租税条約の適用を希望するか否か(納税者が選択可能)により変わりますが、基本的にはベトナム駐在の対価が明確な場合はその金額に基づき、ベトナムでの納税額を算定する形となります。ベトナム駐在の対価が明確でない場合は(ベトナム組織での給与負担が無い等)、ベトナム国外の給与額を滞在日数(ベトナム内勤務日数の比率)に基づき按分し、納税額を算定します。

以上