【Mizuno-CH中国・ベトナムビジネス情報】ダイジェスト版Vol.90

2023-11-14

【中越ビジネスマニュアル 第 90 回】

中国・ベトナムにおける持分譲渡について

外資企業の持分譲渡について解説します。

■ 1.中国

(1)持分譲渡の手続き

外資企業の持分譲渡は「外商投資企業出資者の持分変更に関する若干の規定(対外貿易経済合作部・国家工商行政管理局[1997]外経貿法発第 267 号)」が根拠法となっていましたが、これは商務部令 2019 年第3号で廃止されています。ただ、根拠法の廃止は外商投資法施行に伴う規制緩和を受けてのものですので、基本的な手続きには影響はありません。

外商投資法施行以降、外資企業の持分譲渡に関しては、商務主管部門での事前手続きは廃止されましたので(非ネガティブリスト業種の場合)、股東会(出資者総会)決議後、市場監督局で、出資者変更などの申請を行います。

(2)持分譲渡代金決済と課税

持分譲渡代金は、現・新出資者間で直接決済します。日本企業が中国企業に売却する場合は、中国から日本への対価の送金が必要になり、金額が5万米ドルを超過した場合、所管税務機関での備案(届け出)が必要になります。この備案が受理されるのは、持分譲渡益に対する課税後(譲渡益に対して 10%の課税)ですが、この手続きは一連の手続きの最終段階で行われます。

(3)特殊性税務処理

一定の組織再編(グループ内組織再編)に際しては、財税[2009]59 号などに定める特殊性税務処理の適用が認められます。持分譲渡に関しても、この制度はありますが、非居住者が関連する場合、特殊性税務処理の適用は極めて困難です。これは非居住者が受益者である場合、組織再編後のコミットメント(一定期間の持分再譲渡不可など)の保証が難しいことがあります。さらには、香港・シンガポールが関与する場合(仮に中国内法人の出資者が日本法人から香港・シンガポール法人に代わる場合)、配当・利子・使用料の課税に関して軽減税率が認められ、課税関係の変更が生じ、特殊性税務処理の前提要件が満たせないためです。

■ 2.ベトナム

(1)持分譲渡の手続き

有限会社(ベトナムでの一般的な会社形態)の持分譲渡では、計画投資局において、企業登記証の変更申請を行い(企業法・第 30 条)、その後投資登記証の変更申請を行います(投資法・第 41 条)。

さらに、外資企業では上記手続きの前段階として、以下のいずれかの要件に該当する場合、計画投資局での事前登録が求められます(投資法・第 26 条)。

1)外資条件付き投資分野で活動する企業への外国投資家の保有割合が増加する場合。

2)外国投資家・外資企業の保有割合が定款資本の 50%超の企業で外国投資家の保有割合が増加する場合。

3)国防・治安維持に影響する区域の土地使用権を有する場合。

(2)持分譲渡代金決済と課税

持分譲渡代金は、ベトナム居住者間の譲渡もしくはベトナム非居住者間の譲渡の場合、現・新出資者間で直接決済しますが、ベトナム居住者と非居住者間の譲渡は、持分譲渡対象企業の資本口座を通じて決済します(中央銀行通達・第 06/2019/TT-NHNN 号)。従って、日本企業がベトナム企業に売却する場合は、ベトナムから日本への対価の送金に際して、ベトナム企業は持分譲渡益に対する課税額(譲渡益に対して 20%の課税)を源泉徴収し納付する必要があります(財務省通達・第 78/2014/TT-BTC 号・第 14 条)。

(3)特殊性税務処理

一定の組織再編(グループ内組織再編)に際しての特殊性税務処理制度は設けられていません。


中国・ベトナムにおける外資企業の国内拠点(支店)について

中国・ベトナムに設立した外資企業の国内拠点拡大方法として、支店の開設と持分出資子会社の設立を解説します。

■ 1.中国

中国では、支店は分公司と呼称されます。

(1)分公司の種類

分公司は、営業活動を行う経営性分公司と、連絡活動のみを行う非経営性分公司に分かれます。経営性分公司は、増値税の納税人登記を行い、発票を発行することができますので(収益が発生する)、分公司として独立した会計記帳、税務申告が要求されます。

一方、非経営性分公司は、増値税の納税単位とはならないため(収益は発生しない)、分公司単位の会計処理は要求されません(総公司の一組織として、経費が計上されるのみ)。

(2)分公司登記

外資企業の分公司の登記は、それほど難しいものではありません。市場監督局などで一定の手続きをすれば、開設は可能です。

分公司登記に際して、以前は経営性・非経営性の区分が明確にされていましたが、現在では登記上は区分されておらず、発行される営業許可証(経営範囲)も、ほぼ同様です(非経営性分公司でも、総公司の営業範囲をそのまま記載している場合もあります)。

(3)税務上の扱い

経営性と非経営性を分けるのは、税務上の手続きで、その違いは以下の通りです。

1)経営性分公司

経営性分公司は、分公司所在地の所管税務機関で、各種税務登記(増値税納税人登記を含む)が必要となります。

2)非経営性分公司

分公司を開設する場合、総公司は自身の所管税務局にオンライン報告をしますが、それに際して、「分公司での納税無し」と登録します。それが受理されたのちに、分公司所管税務局に提出し、税務登記をすれば、非経営性分公司とすることができます。

■ 2.ベトナム

(1)支店の種類

支店は、本店とは独立した会計単位として財務諸表を作成する独立支店と、本店から独立した会計単位ではない従属支店に分かれます。独立支店は、会計単位として独立していますので、独立した会計記帳、税務申告が要求されます。

一方、従属支店は、法人税の納税単位とはならないため、支店単位の会計処理は要求されません(本店の一組織として、経費が計上されるのみ)が、管轄税務局が異なる場合、事業税、個人所得税、付加価値税の申告が求められます。

(2)支店登記

外資企業の支店登記は、それほど難しいものではありません(追加投資案件は除く)。計画投資局などで一定の手続きをすれば、開設は可能です。

発行される支店活動登記証明書において、独立支店と従属支店との区分はありません。両者の区分は、税務登記上の区分となります。

(3)税務上の扱い

独立支店と従属支店を分けるのは、税務上の手続きのみとなります。支店登記において、計画投資局に提出する支店活動登記通知書に会計処理方法のチェック欄がありますので、「独立」もしくは「従属」のどちらかを選択し、チェックマークを付けるのみです。

以上