【Mizuno-CH中国・ベトナムビジネス情報】ダイジェスト版Vol.88

2023-09-15

【中越ビジネスマニュアル 第 88 回】

中国・ベトナムにおける個人所得税について

中国とベトナムの個人所得税について解説します。

■ 1.中国

(1)根拠法

2019 年1月1日に施行された「個人所得税法」が根拠となります。

(2)居住者・非居住者の課税方法

個人所得税の課税年度は暦年(1月1日~ 12 月 31 日)となり、居住者の場合は課税年度を基に申告所得を計算します。非居住者の場合は月次で申告所得を確定します。居住者と非居住者の課税方法は以下の通りです。

● 居住者

中国内に住所がある個人(中国公民を指す)および住所はない(外国人を指す)が、納税年度に、累計満 183 日中国内居住した個人を指します。

居住者は、全世界所得に対して課税されますが、外国人居住者の場合、満 183 日滞在が連続6年未満の場合は、国外源泉所得に対する課税が免除されます(実施条例第4条)。

なお、外国人の6年の起算は 19 年1月1日以降開始しますが、途中連続 30 日超の出国があった場合、年数カウントはリセットされ、再計算が認められます。

● 非居住者

年間中国滞在が 183 日未満の外国人個人が該当し、中国源泉所得に対して課税されます。

(3)基礎控除と特別付加控除

居住者に対しては、年間6万元の基礎控除が認められます。その他、特別付加控除として、子女教育費(子女一人当たり毎月 1,000 元)、継続教育費(毎月 400 元)、大病医療費(個人負担が1万 5,000 元を超過する医療支出で、8万元を上限として控除可)、住宅ローン金利(毎月 1,000 元)、住宅家賃(毎月 800 ~ 1,500 元)、老人扶養などが認められます。非居住者に対しては基礎控除のみが認められます(月 5,000 元)。

(4)税率

3~ 45%の超過累進課税となります。

■ 2.ベトナム

(1)根拠法

09 年1月1日に施行された「個人所得税法」が根拠となります。

(2)居住者・非居住者の課税方法

個人所得税の課税年度は、原則として暦年(1月1日~ 12 月 31 日)となりますが、例外として、暦年では居住者に該当しないが、ベトナムへの初めての入国日から 12 カ月間に 183 日以上ベトナムに滞在する場合、最初の課税年度は入国日から1年間となります。居住者と非居住者の課税方法は以下の通りです。

● 居住者

以下のいずれかに該当する個人を指しますが、課税年度におけるベトナムでの滞在日数が 183 日未満であり、他国の税務当局が発行した居住者証明書等で他国の居住者であることを証明できる場合は除きます。

1)暦年もしくはベトナムへの初めての入国日から 12 カ月間以内に 183 日以上ベトナムに滞在する個人

2)ベトナム居住法に基づく恒久的居住地に関する登記を有する個人

3)レジデンスカードを有する者

4)ベトナム住居法に基づく住居用の賃貸借契約を課税年度において 183 日以上締結している個人

居住者は、全世界所得に対して課税されます。

● 非居住者

居住者に該当しない者を指し、ベトナム源泉所得に対して課税されます。

(3)基礎控除と特別付加控除

居住者に対しては月額 1,100 万ドンの基礎控除が認められます。また、被扶養者1人につき、月額 440 万ドンの扶養控除も認められますが、被扶養者の年齢が労働年齢に該当する場合、原則として扶養控除は認められません。現在の労働年齢は男性が 18 歳から 60 歳9カ月、女性が 18 歳から 56 歳となります。労働年齢は段階的に引き上げられますので、男性は 28 年に 62 歳、女性は 35 年に 60 歳まで引き上げられます。

非居住者に対しては、基礎控除および特別付加控除は認められません。

(4)税率

居住者の給与・賃金所得に対しては5~ 35%の超過累進課税となります。非居住者の給与・賃金所得に対しては 20%の固定税率となります。


中国・ベトナムにおける非居住者に対する個人所得税課税について

非居住者に対する個人所得税課税について解説します。

■ 1.中国

日中間には、日中租税条約が締結されており、日本居住者の中国滞在が暦年で 183 日を超過しなければ、中国での個人所得税課税が免除されることが規定されています。ただし、給与の一部が中国内で負担されている場合は、滞在日数にかかわらず、この部分は課税対象となります。

また、課税の詳細については、「中国内に住所がない個人の居住時間判定基準の公告(財政部・税務総局 2019 年第 34 号)」・「非居住者個人及び住所のない居住者個人の関連個人所得税政策に関する公告(財政部 税務総局公告 2019 年第 35 号)」が根拠となります。

(1)滞在日数と勤務日数

1)滞在日数

租税条約に定められた 183 日ルール適用に際しての日数カウントは、34 号公告に基づきます。ここでは、入出国日(中国滞在が、24 時間に満たない日)は双方滞在日数としてカウントしないこととされています。

2)勤務日数

上記1)に基づいて、中国での納税義務が発生した非居住者は、中国で勤務した日数に基づき税額を計算しますが(給与総額に対して、個人所得税法に基づき算定した税額に、勤務日数 ÷ 当該月の日数を乗じて、中国での税額を算定)、この際の勤務日数は入出国日は共に 0.5 日とカウントします。

(2)183 日を超過した場合

非居住者の中国滞在日数が、年間 183 日を超過した場合(実務的には 183 日以上となった場合)、以下の公式で課税所得を算定します。

● 当月課税所得=給与合計額 ×(当月中国内勤務日数 ÷ 当月日数)

その上で、月次基礎控除(5,000 元)を適用した上で、税率(3~ 45%の超過累進税率)を適用し、税額を計算します。

(3)非居住者の納税のタイミング

183 日に達した月の翌月 15 日までに、最初の月からの個人所得税をまとめ納付します。

なお、35 号公告では、日数に達するか否かを事前判定し、それに基づき申告・納税を開始するのが原則であると規定されていますが、事後で変更があった場合(当初は 183 日未満を予定していたが、結果として超過した場合)も罰則はありません。

■ 2.ベトナム

日越間には、日越租税条約が締結されており、日本居住者のベトナム滞在が暦年で 183 日を超過しなければ、ベトナムでの個人所得税課税が免除されることが規定されています。ただし、課税を免除されるためには、事前の免税申請が必要ですので、中国のように条件を満たせば自動的に免除されるわけではありません。また、免税申請も一般的では無い状況となります。なお、給与の一部がベトナム内で負担されている場合は、滞在日数にかかわらず、この部分は課税対象となります。

課税の詳細については、「財務省通達(第 111/2013/TT-BTC 号)」「税務総局オフィシャルレター(第 728/TCT-TNCN 号)」「改正租税管理法(第 38/2019/QH14 号)」が根拠となります。

(1)滞在日数と勤務日数

1)滞在日数

租税条約に定められた 183 日ルール適用に際しての日数カウントは、111 号通達に基づきます。ここでは、入国日・出国日(ベトナム滞在が 24 時間に満たない日)はそれぞれ1日としてカウントします。111 号通達の記載が明瞭ではないため、入出国日を合わせて1日とする文献が見られますが、728 号レターにおいて、それぞれを1日とすることが明示されています。なお、入出国日が同日である場合は合わせて1日とします。

2)勤務日数

ベトナムでの納税義務が発生した非居住者は、ベトナム源泉所得に対して、固定税率 20%の税額が発生します。ベトナム源泉所得が明らかな場合は、固定税率を乗じるだけですが、国外所得からベトナム源泉所得を分離して把握できない場合、勤務日数もしくは滞在日数に基づき、国外所得を按分し課税所得を計算します。具体的には、ベトナムへの滞在は無いが、ベトナム源泉所得が発生する場合(駐在員事務所代表がベトナムに滞在していないケース等)は、勤務日数(ベトナム業務対応分)に基づき計算し(勤務日数 ÷ ベトナム年間労働日数 × ベトナム国外所得+ベトナム国内所得)、ベトナムへの滞在がある場合は、滞在日数に基づき計算します(滞在日数 ÷365 日 × ベトナム国外所得+ベトナム国内所得)。

(2)非居住者の納税のタイミング

免税申請を行っていない場合、183 日ルールは適用できませんので、商用にて1日でもベトナムに滞在すれば、申告・納税をしなければなりません。また、滞在が無くとも、ベトナム源泉所得が発生している場合にも申告・納税が必要です。個人での申告は、四半期翌月の末日が期日となります。

以上