【Mizuno-CH中国・ベトナムビジネス情報】ダイジェスト版Vol.86
2023-07-14【中越ビジネスマニュアル 第 86 回】
中国・ベトナムにおける無形資産について
中国とベトナムの無形資産の計上要件について解説します。
■ 1.中国
(1)無形資産の計上
会計上(企業会計準則)は、「当該資産に関連する経済的利益が企業に流入する可能性が高く、原価を信頼性をもって測定できる場合に、無形資産として計上」できると規定されています。また、自己開発の場合は、支出を「研究段階の支出」と「開発段階の支出」に分け、研究段階の支出は当期損益として計上し、開発段階の支出は一定の要件を満たした場合に、無形資産としての計上が認められます。
税法上(企業所得税法)は特許権、工業所有権、商標権、著作権、土地使用権、非特許技術、のれん等が例示されています。計上基準は、会計とおおむね一致しています。
(2)償却方法
会計上は、無形資産の耐用年数、残存価値、効果の発生を合理的に算定することが求められ、耐用年数が合理的に算定できる場合は耐用年数に応じ、耐用年数が不確定である場合は償却を行わず、毎期末時に減損テストを実施し、減損が生じた場合に減損処理を行います。
償却方法は、効果の発生に応じて償却しますが、効果の発生が合理的に予測できない場合は、定額法により償却します。
また、耐用年数が有限である場合は、残存価値はゼロと見なします。
税法上は、無形資産の償却は定額法によります。
償却年限は、受益期間が定められている場合は受益期間により償却し、受益期間の定めが無い場合は 10 年以上の期間で償却を行います。また、外部購入したのれんは、関連する企業の譲渡・清算時に損金算入が認められます。
■ 2.ベトナム
(1)無形資産の計上
会計上(企業会計基準 04 号・第 16 条)は、以下4つの計上基準をすべて満たす場合、無形資産として計上します。
- (A)将来の経済的利益が確実に得られる。
- (B)取得原価が信頼できる方法で決定されている。
- (C)耐用年数が1年以上と見積もられている。
- (D)現行基準に従い、全ての価値基準を満たしている。
また、自己開発の場合は、支出を「研究段階の支出」と「開発段階の支出」に分け、研究段階の支出は当期損益として計上し、開発段階の支出は、一定の要件を満たした場合に、無形資産としての計上が認められます。研究段階の支出と開発段階の支出を区別できない場合は、無形固定資産としての計上は認められず、費用計上します(同号・第 37 条・38 条・39 条)。
税務上(財務省通達・第 45/2013/TT-BTC 号)は、特許権、発明、文学、芸術作品、工業意匠権、商標権、土地使用権(使用料の支払いがある場合などに限定)等が例示されています。
有形固定資産には該当せず、以下3つの基準をすべて満たす場合、その実費は、無形資産と見なされます。
- (A)当該資産の使用により将来の経済的利益が確実に得られる。
- (B)使用期間が1年以上である。
- (C)取得原価は正しく測定されており、その価額が 3,000 万ドン以上である。
(2)償却方法
会計上は、無形資産の耐用年数を合理的に算定することが求められており、償却期間は最長で 20 年です。経済的利益の回収に応じて償却することが求められていますので、償却方法は実情に基づき、定額法、定率法、生産高比例法から選択できると規定されています。会計上の償却対象は、取得原価から見積もられる廃棄費用控除後の残存価額を控除したものとなりますが、税法上は、取得原価全体が償却対象となっています。最長償却期間は、会計同様に 20 年です。償却方法は、有形固定資産も含む固定資産一般の規定において、定額法、定率法、生産高比例法、加速度償却法が定められていますが、定額法以外の方法は、機械・設備であること等一定の条件がありますので、実質は定額法の一択となります。
中国・ベトナムにおける損金算入制限がある経費について
法人税の課税所得を算定するに当たり、支払額がそのまま損金として認められない代表的な項目を紹介します。
■ 1.中国
中国では、増値税発票(税務インボイス)が経理処理に際して極めて重要な役割を果たしていますので、これが取得できない場合は、損金算入ができません。
また、発票があっても、以下のような損金算入制限を受ける費目があります。
(1)福利費等
1)従業員福利費
賃金給与総額の 14%以内が損金算入可能(企業所得税法第 40 条)。
2)労働組合費(工会費)
賃金給与総額の2%以内。
3)従業員教育費
賃金給与総額の8%以内。超過部分は翌納税年度に繰り越し可能(企業所得税法実施条例・第 42 条および財税[2018]51 号)。
(2)交際費
支払額の 60%かつ販売(営業)額の 0.5%の範囲内で損金算入が可能です(企業所得税法実施条例第 43 条)。
(3)広告宣伝費
販売(営業)額の 15%が控除可能ですが、超過部分は翌年度に繰り越し可能です(企業所得税法実施条例第 44 条)。
(4)グループ・企業内部の支払い
企業間で支払う管理費、企業内の営業機構間(本支店間)で支払う賃貸料、特許費用、金利は損金算入が認められません(企業所得税法実勢条例第 49 条)。
中国の税法上の観点では、管理費とは「明確な対価が無いにもかかわらず支払うグループ内課金」を意味しています。よって、グループ企業間の管理費用(財経、法務、人事総務、審査などの管理機能使用対価)である場合は、管理費という名目は使用せず、提供された対価の内容を明確にした上で、受け払いを行うことが望ましいでしょう。
■ 2.ベトナム
ベトナムでも、インボイスが経理処理に際して極めて重要な役割を果たしていますので、これが取得できない場合は、損金算入ができません。また、2,000 万ドン以上の支払いについては、現金決済は認められませんので、銀行送金等の証票も損金算入には必要となります。
上記インボイス等の証憑があっても、以下のような損金算入制限を受ける費目があります。
(1)福利費等
1)従業員福利費(生命保険・年金基金は除く)
賃金給与の月次平均額以内。
2)生命保険、年金基金
1人当たり月額 300 万ドン以内。
(2)交際費・広告宣伝費等
かつては、交際費、広告宣伝費、販売促進費、コミッション等の合計は、損金合計の 15%以内とされていましたが、2015 年1月1日以降、この上限は撤廃されています。ただし、交際費のうち、特定個人の利用が想定されるゴルフ会員権・プレー代に対する支払いは認められません。
(3)支払い利息
1)上限規定
18 年度までは、EBITDA(Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation, and Amortization)の 20%以内でしたが、現在は 30%以内です。EBITDAとは、税引前利益に支払い利息と償却額を加えた利益を指しますが、支払い利息の定義も、支払い利息総額から預金利息・貸付利息控除後の支払い利息へと変更されています。30%を超える支払い利息に関しては、5年間の繰越しも可能です。
2)資本未拠出の場合
未拠出額に相当する借入金額に対する支払い利息は認められません。
3)個人からの借入
支払い金利の上限は、中央銀行金利の 1.5 倍以内。
以上