【Mizuno-CH中国・ベトナムビジネス情報】ダイジェスト版Vol.79
2022-11-15【中越ビジネスマニュアル 第 79 回】
中国・ベトナムにおける非貿易項目の対外送金について
中国とベトナムの非貿易項目対外送金について解説します。
■ 1.中国
(1)対外送金の原則
非貿易項目の対外送金に関しては、国家税務総局・国家外貨管理局 2013 年第 40 号の規定に基づき、送金額が5万米ドルを超過すると、所管税務機関での備案(届け出)が要求され、銀行に備案証を提示することで、対外送金ができます。
(2)送金内容に基づく違い
1)配当 配当に際しては、事前に法定準備金である準備基金の積み立てが必要になります。準備基金は、資本金の 50%に達するまで(50%に達した時点で追加積み立て不要)、純利益の 10%以上を積み立てます。
2)立替金 中国の決済は当事者間で行われるのが原則であるため、立替金の国際間決済は 2013 年に初めて根拠規定ができました。匯発[2013]30 号(現在では廃止され、匯発[2020]14 号)により、関連会社間(直接・間接の資本関係がある企業間)に限定して、国際間立替金が認められます。
3)業務委託料(役務費) 役務提供者が提供した時間と単価に応じて価格を設定するのが原則です。他の非貿易項目送金と同様、5万米ドルを超過する場合は所管税務機関の備案証の提示(以下の場合は銀行審査のみ)で、対外送金が認められます。
4)コミッション
成立した売上にコミッション率を乗じて、対価を設定するのが原則です。
国家税務総局・国家外貨管理局 2013 年第 40 号により、貿易取引に関するコミッションのみ対外送金可能です(中国国内取引は不可)。また、コミッションの場合は、5万米ドルを超過しても、税務機関での備案が免除されます。
5)ロイヤルティ ロイヤルティは、知的所有権の使用許諾の対価で、契約時に商務主管部門で技術輸入許可もしくは備案が必要です。商務主管部門の手続き時に、対価の妥当性も審査されます。
■ 2.ベトナム
(1)対外送金の原則
非貿易項目送金に関しては、「外国為替法(28/2005/PL-UBTVQH11)」に基づき、経常項目に関わる送金は原則自由とされていますので(同法・第2章・第6条)、銀行に送金内容に関するする証憑を提示することで、対外送金ができます。
(2)送金内容に基づく違い
1)配当 配当に際しては、法定準備金の積み立ては求められていません(金融業等は除く)。送金実行予定日の7営業日前までに管轄税務局への書面での通知が必要ですので、銀行での送金手続きにはこの通知書のほか、監査済み財務諸表、法人税確定申告書・納付書、配当に関する社員総会・株主総会決議書等の提出が必要です。
2)立替金
国外で発生した立替金の決済も認められますので、銀行には、立替金契約書、請求書等を提示します。また、国外で給与支払いが立て替えられた場合などは、送金前に個人所得税の源泉徴収を行う必要があるため、源泉徴収証明書等の提示が求められる場合もあります。
なお、これらの費用を法人税法上の損金とするためには、ベトナム法規において求められるインボイスと同等の内容が記載された領収書、証憑のベトナム語訳等も必要となります。
ベトナム法人設立前の立替金の送金可否に関しては、各銀行で扱いが異なるため、事前の確認が必要です。
3)業務委託料(役務費) 契約書、請求書を銀行に提示すれば対外送金が認められます。ベトナム国内でサービス提供がなされた場合、外国契約者税が源泉徴収されます。
4)コミッション ベトナムのWTOコミットメントにおいて、外資企業に対するコミッションビジネスは開放されていないことから、外国企業がベトナム国内販売にかかるコミッションの受取ができるかは不透明です。国外販売にかかるコミッションに関しては契約書、請求書を銀行に提示すれば対外送金が認められると考えられます。
5)ロイヤルティ フランチャイズ・商標権は商工省、技術移転は科学技術省での登録が求められますので、これらの登録書類に加え、契約書、請求書を銀行に提示します。外国企業は、ベトナムから所得を得ることになるため、外国契約者税の源泉徴収も必要です。
中国・ベトナムにおける出向者の日本払い給与の精算について
海外駐在員の給与の一部が日本で支払われる場合の、親会社(日本企業)の立替金の回収について解説します。
■ 1.概要
海外駐在員の給与・賞与を全額海外駐在地で支払うのではなく、一部を出向元の日本企業(通常は親会社)が、駐在員の日本口座に支払うことが一般的に実施されています。これは、駐在員の日本での支払い(年金、住宅ローン返済、留守宅費用など)に充当するためですが、日本の税務上、海外子会社に出向している社員の人件費は、その海外子会社が全額負担するのが原則です。この結果、日本企業の支払いは立て替え払いということになり、海外子会社から回収する必要が出てきます。
■ 2.中国
中国では、国際間の立替金決済根拠ができたのは 2013 年9月1日(匯発[2013]30 号・失効)であることは、第 119 回の連載で解説しました。ただ、この人件費精算自体はそれ以前から実施されていましたが、根拠となる外貨管理規則がないため、突然送金ができなくなるなどの事態も過去に発生しており、ルールが確立されたのが 13 年ということになります。
現在では、中国子会社の本社に対する送金額が1回当たり5万米ドルを超過した場合、所管税務機関での備案(届け出)が必要となり、その際に「雇用契約書(出向契約書)、派遣元の日本法人が給与の一部を立て替え払いすることに関する協議書、給与明細書、その他税務局が要求する資料」を提示して審査を仰ぎます。
その際、一定の条件に該当すると(日本企業が出向者派遣の対価を受領している場合や、出向後も依然として当該出向者に対して指揮命令権を行使している場合など)は、「非居住者企業の派遣人員が中国域内で提供する役務に対する企業所得税徴収にかかる問題の公告(国家税務総局公告 2013 年第 19 号)」に基づき、PE(Permanent Establishment:恒久的施設)認定を受ける場合がありますので、これが注意点となります。
■ 3.ベトナム
ベトナムでは、非貿易項目送金に関しては「外国為替法(28/2005/PL-UBTVQH11)」に基づき、経常項目に関わる送金は原則自由とされていますので(同法・第2章・第6条)、銀行に送金内容に関する証憑を提示することで、対外送金ができます。具体的には、「雇用契約書、派遣元の日本法人が給与の一部を立て替え払いすることに関する協議書、給与明細書、労働許可書等」が該当します。
ベトナム子会社が負担した給与がベトナム子会社の損金として認められるため、および日本企業の立替金の回収が収益の受け取りでないことを証明するためにも、上記の書類が必要となります。十分な書類がない場合、ベトナム法人での損金算入が認められないとともに、日本企業がベトナムから収益を得たと見なされ、外国契約者税が課税される場合がありますので、これらが注意点となります。
以上