【Mizuno-CH中国・ベトナムビジネス情報】ダイジェスト版Vol.78

2022-11-09

【中越ビジネスマニュアル 第 78 回】

中国・ベトナムにおける国際間の相殺について

国際間の相殺可否について解説します。

■ 1.中国

国際間の相殺については、「多国籍企業のネッティング・双方向プーリング」の届出を正式に行っている企業とそれ以外の企業で、状況が異なります。

(1)多国籍企業

多国籍企業が関連政府機関(外貨の場合は外貨管理局、人民元の場合は人民銀行)に申請し、登記を受けることによって、ネッティング・双方向プーリングが認められます。
外貨の根拠は「多国籍企業の外貨資金集中運用に係る管理規定(匯発[2015]36 号)」、人民元の根拠は「多国籍企業グループのクロスボーダー双方向人民元プーリング業務展開の更なる利便化に関する通知(銀発[2015]279 号)」となります。
この登記が認められれば包括的な相殺行為(ネッティング)が可能となりますが、企業に求められる要求は高く、一定の難易度があります。

(2)通常企業

上記(1)以外の場合、包括的な相殺行為は認められません。
個別相殺に関しては、中国の外貨管理規定には相殺行為を明確に禁止する条文はありません。ただ、「外貨管理条例(国務院令[2008]第 532 号)」では、人民元で受け払いすべき金額を外貨により受け払いすること(第 40 条)、無断で為替決済・為替販売業務を営むことが禁止(第 46 条)されていますので、少なくとも、異種通貨間の相殺はできないと判断できます。同一通貨間の相殺は不可とは言えませんが、これが租税回避行為につながる場合(本来、納税すべき税金を申告・納税しなくなる場合)は、当然問題となります。
このような状況ですが、明確に相殺行為を肯定する外貨管理文書もないため、相殺行為を行えば、実務に一定の支障が生じます。例えば、貨物代金とクレームを相殺する行為は、かつては、差額核銷という名称で制度化されていましたが、これは 2012 年に廃止され(匯発[2012]38 号)、現在では実務の中で解決する必要があります。ただ、この相殺行為を行えば、通関価額と決済価額の不一致が生じるため、金額が大きければ、外貨管理上の問題(外貨ランク降格・外貨管理局の立入検査等)につながる可能性があり、これが注意点となります。
なお、進料加工の差額決済(製品輸出代金と原材料輸入代金の相殺)も、差額核銷制度の中で認められてきました。差額核銷制度廃止とともに、根拠となる法律は無くなりましたが、これは以収抵支などの名称に変更されて、実務上は継続されています。

■ 2.ベトナム

ベトナムは、国際間の相殺については中国のような届出制度はないため、中国同様の企業区分はありません。
相殺可否への直接的規定ではありませんが、付加価値税法に係るガイダンスである財務省通達・第 219/2013/TT-BTC 号・第4条において、仕入付加価値税控除に関する現金以外の決済手段として相殺にかかる記述があるため、原則として、相殺は決済手段として認められているものと考えられます。
ただし、債権・債務の存在、相殺を証明する責任は企業に求められますので、債権・債務の発生を証する書類である契約書、通関書類、相殺に関する契約書等を具備するとともに、都度の相殺に際しても、相殺内容、相殺額を明示した合意書の作成が必要となるため留意が必要です。

中国・ベトナムにおけるオフショア取引について

中国・ベトナムにおけるオフショア取引規制について解説します。

■ 1.中国

三国間取引(中国語:転口貿易)とは、貨物が中国外で直接運搬される商流に、中国企業がインボイススウィッチ形式で介入する取引を指します。
中国では、貿易取引を行う企業は、A~Cの3分類に分けられますが(A類のみが正常ランク)、オフショア取引が認められるのはA類のみです。

(1)決済の条件

「貿易投資の利便性を一層促進し、真実性審査を完備させることに関する通知(匯発[2016]7号)」では、オフショア取引に関しては、銀行は「契約書・インボイス・船積書類・船荷証券・倉荷証券などの証憑」を確認することを義務付けています。ただ、実際の銀行実務を見ると、無記名式のオリジナルB/Lが無い限り、決済は認められません。よって、空輸・陸輸の場合は決済不可となります。
また、オフショア取引の売買(売上・仕入)は、同一銀行で同一通貨で決済することが義務付けられています。

(2)通関・決済の調整

中国の貨物代金決済管理では、企業の通関データと決済データがシステム管理されており、乖離(かいり)が著しいと外貨管理局の立入検査を受けることになります(外貨操作に問題がある場合は、外貨ランク降格)。ただ、オフショア取引(国際収支番号 122010 をインプット)の場合、この齟齬(そご)が自動調整されます。

(3)他国にある貨物の売買

多国にある貨物の売買に中国企業が関与する場合も、外貨管理上は三国間取引と同様に管理されています。この決済が可能だった時期はありますが(2012 年8月1日~ 16 年初め)、匯発[2016]7号による規制強化の結果、この取引は不可となりました。
これは、外貨管理局の指導もありますが、同一他国内の取引の場合、オリジナルB/Lが取得できず、決済に必要な証憑がそろわないためでもあります。

■ 2.ベトナム

三国間取引とは、物流としては、A国の輸出者からB国の輸入者に貨物が直接搬送されるものの、商流としては、輸出者と輸入者の間に第三国であるC国の仲介者が介入する取引を指します。

(1)三国間取引への規制

ベトナムでは、三国間取引のうち、ベトナム企業が仲介者として介入し、貨物がベトナム外で直接搬送される形式に関しては、ベトナムの内資企業に対する規制はありませんが、18 年5月 15 日付・政令・第 69/2018/ND-CP 号により、ベトナムの外資企業が仲介者となることは禁止されています。ベトナム企業が輸出者もしくは輸入者となる三国間取引に関しては、内資企業、外資企業ともに規制はありません。

(2)決済の条件

外国為替法施行細則である「政令・第 160/2006/ND-CP 号」に準拠し、輸入者の支払いに関しては、銀行に「契約書(もしくは発注書、インボイス)、通関書類などの証憑」を提出します。前払いの場合は、通関書類は提出できないため、「契約書(もしくは発注書、インボイス)に加え、取引完了時に通関書類を提出する旨の念書」を提出します。
仲介者の支払いに関しては、「輸入契約書(もしくは発注書)、輸出契約書、インボイス、輸入を証明するB/L、輸出品の売上が支払者の銀行口座に送金される旨の念書などの証憑」を提出します。

以上