【Mizuno-CH中国・ベトナムビジネス情報】ダイジェスト版Vol.77

2022-10-18

【中越ビジネスマニュアル 第 77 回】

中国・ベトナムにおける銀行口座内資金の換金について

中国、ベトナム企業の銀行口座内資金の換金ルールについて解説します。

■ 1.中国

(1)経常項目口座

経常項目口座内の資金は、外貨と人民元の換金は随時可能です。

(2)資本金口座(外貨)

資本金として払い込まれた外貨は、過去には使用時(請求書を基に支払い手続きを取る時点)まで換金が認められませんでしたが、「外商投資企業の外貨資本金元転管理方式の改革に関する通知(匯発[2015]19 号)」により、随時換金ができるようになりました。
換金された人民元は、待機口座に移され、使用時まで利用は制限されます。

(3)借入金口座

借入には、中国内の借入と対外借入(外債)があります。
中国内の借入については、外貨と人民元の換金ができませんので、用途に基づき借入通貨を決定する必要があります。
対外借入の管理は、資本金と同様、「資本項目元転管理の改革と規範に関する政策の通知(匯発[2016]16 号)」に基づきます。外債口座資金の換金は資本金と同様、外貨から人民元への換金は随時可能ですが、換金された人民元は待機口座に移され、使用時まで利用は制限されます。

(4)借入金返済のための換金

外貨借入金の返金は、保有外貨からの返済が優先されますが、手元外貨が不足する場合は人民元から外貨への換金が認められます。
使用する資金については、経常項目口座内の外貨だけでなく、資本金口座・借入金口座内の外貨をそのまま充当することも可能です。また、人民元資金については人民元口座内の資金だけでなく、外貨から元転して待機口座に保管されている人民元(資本金・外債資金からの元転資金)を再度外貨に換金した上で外債の返済に充当することが、「資本項目元転管理の改革と規範に関する政策の通知(匯発[2016]16 号)」で認められています。

■ 2.ベトナム

(1)経常項目口座

経常項目口座内の資金は、外貨からベトナムドンの換金は随時可能ですが、ベトナムドンから外貨への換金は、銀行に対してその必要性を示す書類の提示が必要となります。

(2)資本金口座(外貨)

資本金として払い込まれた外貨を資本金口座から直接費用決済に充てることはできないため、ベトナムドン経常項目口座に資金移動することにより換金します。

(3)借入金口座

借入には、ベトナム内の借入と対外借入(外債)があります。
ベトナム内の借入の受け払いは経常項目口座を利用します。ベトナム内の借入は、外貨、ベトナムドンともに可能ですが、外貨収入が無く外貨での返済能力が無い場合、外貨借入は認められません。外貨からベトナムドンへの換金は随時可能ですが、ベトナムドンから外貨への換金は、銀行に対して、その必要性を示す書類の提示が必要となります。
対外借入の受け払いは資本金口座を利用しますので、入金額の換金はベトナムドン経常項目口座に資金移動を行います。

(4)借入金返済のための換金

外貨借入金の返金は、保有外貨からの返済が優先されますが、手元外貨が不足する場合はベトナムドンから外貨への換金が認められます。
ベトナム内借入は経常項目口座から返済しますが、対外借入は経常項目口座から資本金口座に資金移動を行い返済します。

中国・ベトナムにおける外国企業の国内口座について

外国企業(日本企業など)が中国・ベトナム内に開設する銀行口座について解説します。

■ 1.中国

(1)外貨口座

外国企業の中国内外貨口座開設は、「国外機構の国内外貨口座管理に関する問題についての通知(匯綜発[2009]29 号)」で認められました。
口座開設に当たっては、銀行に「当該企業が(外国において)合法的に設立されたことを示す資料」を提出し、口座を開設します。口座開設に際して行政機関の許可は不要であり、銀行限りで開設が認められます。

(2)人民元口座

外国企業の中国内人民元口座開設は、「国外機構の人民元銀行決済口座管理弁法(銀発[2010]249 号)」・「国外機構の人民元決済口座の開設と使用に関する問題の通知(銀発[2012]183 号)」で認められました。
人民元口座の開設も、(外貨口座と同様)当該企業が合法的に設立されたことを示す資料を銀行に提出することで、口座開設が認められます。銀行は口座開設後に、関係資料を所管の人民銀行に提出します。

(3)非居住者口座の特徴

開設された外貨口座は、非居住者口座として管理され、当該口座と居住者口座間の決済は、外国決済に準じて扱われ、関係資料の提示が義務付けられ、銀行審査を受けます。
口座の外貨は、原則として(一部の例外を除き)換金は禁止されますし、外貨現金の入出金も禁止されています。
このように、非居住者口座は、外国口座扱いであるため、制限の多い口座です。また、年度検査時には日本法人の代表者の身分証明書の提示など口座維持の手間もかかります。
一方、メリットは、国内口座との振り替えに際しては、国内口座振替手数料が適用されるため、手数料削減メリットがあることです。

■ 2.ベトナム

(1)外貨口座

外国企業のベトナム内外貨口座開設は、設立前準備口座として認められています。設立前準備口座は、外貨での開設のみ認められていますので、ベトナムドンでの開設はできません。口座開設に当たっては、銀行に「当該企業が(外国において)合法的に設立されたことを示す資料」、「印鑑登録証明」を提出し、口座を開設します。口座開設に際して行政機関の許可は不要であり、銀行限りで開設が認められます。

(2)ベトナムドン口座

外国企業のベトナム内ベトナムドン口座開設は、間接投資資本口座として認められています。間接投資資本口座は、ベトナムドンでの開設のみ認められていますので、外貨での開設はできません。ベトナムドン口座の開設も、(外貨口座と同様)「当該企業が(外国において)合法的に設立されたことを示す資料」、「印鑑登録証明」を銀行に提出することで、口座開設が認められます。銀行によっては、登録者のパスポート写しなども求められます。

(3)非居住者口座の特徴

開設された外貨口座は、非居住者口座として管理され、設立後のベトナム法人から当該口座へ入金した立替金を国外送金するためには、関係資料の提示が義務付けられ、銀行審査を受けます。口座の外貨は、原則として(一部の例外を除き)換金は禁止されますし、外貨現金の入出金も禁止されています。また、ベトナムドン口座は、出資金支払い、配当金受取などの資本的決済に限定され、国外への送金に際しては、関係資料の提示が義務付けられ、銀行審査を受けます。このように、非居住者口座は、制限の多い口座ですが、メリットは中国と同様に、国内口座との振替に際しては、国内口座振替手数料が適用されるため、手数料削減メリットがあることです。

以上