【Mizuno-CH中国・ベトナムビジネス情報】ダイジェスト版Vol.75

2022-09-19

【中越ビジネスマニュアル 第 75 回】

中国・ベトナムにおける流通税について

中国とベトナムの流通税について解説します。

■ 1.中国

中国の流通税は、増値税と消費税となります。そのうち、消費税は特定物品のみに課税される奢侈税です。

(1)増値税

1)増値税の概要 増値税は、物品売買、役務提供、無形資産売買、金融サービスなど、全ての商行為を課税対象としています。
1994 年に流通税改革が行われた際(現在の増値税が導入された際)、物品売買・加工補修役務に対しては増値税、その他に対して営業税が課税されていましたが、2016 年に営業税は廃止され、増値税に一本化されました。現在は、財貨の増値税(増値税暫定条例を根拠とし、物品売買・加工補修役務が課税対象)と役務の増値税(営業税から増値税に転換されたもので、財税[2016]36 号を課税根拠とする)に分かれています。

2)税率

  • 財貨の増値税
    • 基本税率 13%…財貨の販売、加工補修役務
    • 特定物品9%…農産品(食糧を含む)、水道水、暖房、石油ガス、天然ガス、食用植物油、冷気、熱水、ガス、住居用石炭製品、食用塩、農機、飼料、農薬、農業用フィルム、化学肥料、メタンガス、メチルエーテル、図書、新聞、雑誌、映像製品、電子出版物
    • 小規模納税義務者の税率…3%
    • なお、輸出に対してはゼロ税率(免税+仕入増値税の還付)が適用されます。
  • 役務増値税
    • 基本税率…6%
    • 有形動産リース…13%
    • 交通運輸、郵便、基礎電信、建築、不動産リース、不動産販売、土地使用権譲渡…9%
    • 小規模納税義務者の税率…3%(不動産については5%)
    • なお、役務増値税のクロスボーダー取引については、業種・取引内容によって、ゼロ税率が適用される場合と免税措置(売上時の課税はないが、仕入増値税は原価となる)が適用される場合に分かれます。
(2)消費税

消費税はたばこ・酒・貴金属・化粧品など、特定の奢侈品に対して課税される奢侈税で、原則として「製造企業の出荷段階および輸入通関段階」で課税されます。

(3)付加税

流通税に対しては、城市建設税・教育費付加・地方教育費付加などの付加税が課税されます。税率は地方によって異なるので一概には言えませんが、総じて流通税額の 10%前後となっています。

■ 2.ベトナム

ベトナムの流通税は、付加価値税と特別消費税となります。そのうち、特別消費税は特定物品・サービスのみに課税される奢侈税です。

(1)付加価値税

1)付加価値税の概要

付加価値税は、物品売買、役務提供、金融サービスなど、全ての商行為を課税対象としていますが、中国と異なり、技術・知的財産の移転、コンピューターソフトウエアなどの無形資産売買は非課税となっています。また、付加価値税と営業税という区分は無く、財貨と役務による区分もありません。付加価値税の基本税率は 10%であり、0%、5%の軽減税率対象が定められていますので、それ以外の物品・サービスに対しては 10%の基本税率が適用されます。

2)税率

  • 0%軽減税率対象…輸出する物品および国際輸送。輸出する非課税対象物品およびサービス。ただし、以下の物品・サービスは除く:技術・知的財産の国外移転、国外の再保険、金融サービス、資本譲渡、通信・郵便、未加工の輸出資源・鉱物。
  • 5%軽減税率対象…製造・生活用水、肥料、肥料用鉱石、動植物用殺虫剤・成長促進剤、牛・家畜等飼料、農業用水路・溜池等の造成、作付け・害虫駆除、農産品の半加工・保管、半加工のゴム・樹脂、漁網用の網・縄・繊維、生鮮食品、製糖、黄麻・竹・スゲ・籐・ヤシ・ウォーターヒヤシンス製品、農産手芸品、半加工綿、新聞印刷用紙、農業用機械・設備、医療用機器、医療用ガーゼ・包帯など。
  • 10%基本税率対象…0%・5%軽減税率対象以外の物品・サービス。
    コロナ禍における企業支援策として、22 年2月~ 12 月までは2%が減税され、8%税率が適用されます。ただし、通信、IT、金融、保険、証券、不動産、鉱業(石炭採掘を除く)、石油、化学、特別消費税対象となる商品・サービスは対象外です。
(2)特別消費税

特別消費税はたばこ・酒・貴金属・24 席以下の自動車・ガソリン・トランプ・ディスコ・マッサージ・カラオケ・カジノ・ゴルフ場・宝くじなど、特定の奢侈品・サービスに対して課税される奢侈税で、原則として「製造・輸入・サービス提供段階」で課税されます。

中国・ベトナムにおける流通税の納税人区分について

流通税の納税人区分について解説します。

■ 1.中国

中国の流通税である増値税の納税人区分(一般納税人・小規模納税人)と、一般納税人取得区分について解説します。

(1)増値税の一般納税人・小規模納税人

増値税の納税義務者は、一般納税義務人と小規模納税人に分けられます。
一般納税義務人とは、増値税発票を自社で発行でき、増値税の仕入控除・輸出還付の適用が受けられる納税義務者を指します。
一方、小規模納税人とは、一般納税人の要件を満たさない納税義務者であり、正規の方式ではなく、代替的な納税方法が適用される納税者を指します。小規模納税人の場合は、仕入控除・輸出還付の適用を受けることができません。
では、いずれが有利かというと、物品売買を行う場合は確実に一般納税人です。物品を販売する時は、必ず対応する仕入がありますので、税率は低くても、仕入控除ができない(13%の増値税が仕入原価になってしまう)小規模納税人は不利です。
一方、役務の場合は対応する仕入が無い場合があるので、その場合は小規模納税人が有利な場合があり得ます。このように、メリット・デメリットは会社・取引の状況によって異なります。

(2)一般納税人資格取得条件

増値税の一般納税人資格取得基準は、財貨・役務ともに年間課税売上高 500 万元超となります。かつては、財貨の増値税の場合は製造業年間 50 万元超・その他年間 80 万元超(それを満たさないと一般納税人資格申請はできない)であり、役務増値税の 500 万元とは異なっていました。これが、「増値税小規模納税人基準の統一に関する通知(財税[2018]33 号)」により、500 万元超に統合されました。
同時に、売上基準の位置付けも、500 万元以下の場合は一般納税人・小規模納税人を選択できるが、それを超過した場合は一般納税人登記が義務付けという形に変更されました。

■ 2.ベトナム

ベトナムの流通税である付加価値税(VAT)の納税人区分(一般納税人・小規模納税人)と、一般納税人取得区分について解説します。

(1)付加価値税の一般納税人・小規模納税人

付加価値税の納税義務者は、一般納税義務人と小規模納税人に分けられます。
一般納税義務人とは、付加価値税の計算方法として控除方式が適用される納税義務者を指します。控除方式は、売上VATから仕入VATを控除し計算する方法ですので、付加価値税の仕入控除とともに輸出還付制度が定められています。
一方、小規模納税人とは、一般納税人の要件を満たさない納税義務者を指し、付加価値税の計算方法として、簡便法である付加価値に基づく直接方式(付加価値に対して1%から5%の税率を直接乗じて計算する方式)が適用されますので、仕入控除・輸出還付の適用を受けることができません。
ベトナムの小規模納税人は、年間売上が 10 億VND(約 500 万円)に満たない個人事業主や小規模組織ですので、一般的な外資企業は該当しませんが、中国同様に仕入れがある事業形態では、仕入れ控除ができない点がデメリットとなります。

(2)一般納税人資格取得条件

付加価値税の一般納税人資格取得基準は、会計およびインボイスに関する法律に基づき活動する組織であり、年間売上が 10 億VND以上であることが求められています。ただし、年間売上が 10 億VND未満の組織であっても、会計およびインボイスに関する法律に基づき活動する組織は、自発的に一般納税人として控除方式の登記を行うことが認められていますので、一般納税人・小規模納税人の選択が可能です。

以上