【Mizuno-CH中国・ベトナムビジネス情報】ダイジェスト版Vol.74

2022-09-08

【中越ビジネスマニュアル 第 74 回】

中国・ベトナムにおける外資販売会社の設立について

■ 1.中国

中国における外資販売会社設立は、「外商投資商業領域管理弁法(商務部令 2004 年第8号)・失効」によって認められましたが、施行後は、以下の規制緩和が実施され、現在、設立はそれほどの難易度があるものではなく、また、販売会社を設立すれば、貿易権も取得できます。

  • 非商業外資企業に対して卸売り流通権取得申請(製造業と販売業の兼業)が認められた(商資函[2005]第 9 号)
  • 保税区貿易会社に対して国内流通権・貿易権の取得申請が認められた(商貿字[2005]76 号)
  • 認可権限が国家(商務部)から省級商務主管部門に移管された(商資函[2008]51 号)
  • 設立に際して商務主管部門の許可が不要となり手続きが簡素化された(商務部令 2016 年第 3 号)
  • 2020 年 1 月 1 日に外商投資法が施行され、商務主管部門での手続が不要となった(市場監督局で直接営業許可証取得申請が認められた)

以上の結果、外資販売会社の設立に要する時間は4~5カ月程度(危険化学品取扱など、特殊な許可を必要としない場合)となります。
因みに、2015 年以降の行政手続き合理化により、手続きの迅速化が実施されましたが、一方、管理強化された部分があります。
税務登記・銀行口座(人民元基本口座)開設時には、法定代表人の実名登記(パスポートと顔写真の登録など)が必要になっています。よって、法定代表人がこのタイミング(基本口座開設・税務登記時)で中国出張できない限り、手続きが進みません。
もちろん、現在の感染病まん延による往来規制を考慮して、海外の法定代表人に対してはウィーチャット動画による審査で口座開設を認める銀行があるなど、実務的な便宜は徐々に図られています。

■ 2.ベトナム

ベトナムは 07 年1月 11 日のWTO加盟に伴い、09 年1月以降に国内流通権・貿易権の開放をしましたので、その後外資販売会社の設立は認められています。
規定上、投資登記証(IRC:Investment Registration Certificate)の発行は申請後 15 日以内(投資法・第 61/2020/QH14 号・第 38 条・第1項)、企業登記証(ERC:Enterprise Registration Certificate)の発行は3営業日以内(企業法・第 59/2020/QH14 号・第 26 条・第5項)となっていますが、実務上は総じて4週間から6週間程度で設立(両登記証の発行)が可能です。

(1)迅速化された部分

18 年1月 15 日に政令番号第 09/2018/ND-CP 号が発効し、以下の合理化・簡便化が図られています。
1)HSコード登録 外資企業にのみ求められていた取扱品目のHSコード登録は、輸出・輸入・卸売事業に関しては不要となりました。ただし、小売り事業に関しては、引き続きHSコード登録が求められています。
2)営業許可証 輸出入および卸売業を行う外資企業に求められていた営業許可証の取得が、ベトナムのWTOコミットメントで合意された物品に関しては不要となりました。石油・潤滑油の輸入および卸売に関しては、引き続き営業許可証の取得が必要です。また、アルコールや薬品等の取り扱いに関しては、各業法に基づくサブライセンスの取得が別途必要ですので、企業登記後、実際の取り扱い時に倉庫契約等の必要条件を具備したうえで申請する必要があります。
3)商業施設内に開設する小売店(ミニスーパー、コンビニエンスストアは除く)へのエコノミックニーズテストが撤廃されました。

(2)法定代表人の本人確認

登記申請・銀行口座開設時の本人確認は、公証済みパスポートの写しで足りるため、中国のように法定代表人が窓口に赴く必要はなく、ベトナムでの諸手続きは、委任状に基づき代理人が行うことが可能となっています。

中国・ベトナムにおける外資企業の管理根拠について

外資企業を管理する法律について、概要を解説します。

■ 1.中国

(1)根拠法

外資企業の管理は長い間、独資企業法(1986 年~ 2019 年末)・中外合資企業法(79 年~ 19 年末)・中外合作企業法(88 年~ 19 年末)、総称して三資企業法に基づいて管理されてきました。
ただ会社法(93 年~)も、内資企業だけでなく、外資企業も適用対象としていますので、双方の考慮が必要でした。特に 05 年の会社法改定(施行は 06 年1月1日)は大規模なもので、外資企業にも大きな影響を与えたため、「外商投資企業審査批准登記管理法の適用に関する若干の執行意見(工商外企字[2006]102 号)」(廃止)が公布され、双方の内容が異なる場合の調整が図られていました。
現在では、外商投資法(20 年1月施行)と会社法に従いますが、外商投資法は旧外資三法とは異なり、全体方針的な規定が主で、実務的な内容(決議機関・利益処分・会計税務処理等)は規定されていません。よって、実務上の指針は会社法に基づくことになります。

(2)外商投資法施行の影響

外商投資法施行により、最高意思決定機関の統一(出資者総会に統一)、利益処分方法の変更などの変更がありました。ただ、それ以上に重要なのは内国民待遇が進んだことです。
外商投資法第4条には、「外商投資に対しては、参入前の内国民待遇にネガティブリストを加えた管理制度を実行する」と規定されています。この詳細に関する規定はありませんが、外商投資法施行後、非ネガティブリスト外資企業の設立・解散・営業許可内容の変更に際しては、商務主管部門での許可・備案(届け出)が不要になり、企業登記を管理する市場監督局で、直接営業許可取得・変更申請ができるようになりました(内資企業と同じ)。その上で、手続き後に商務主管部門で営業許可内容をオンライン報告するよう改められています。

■ 2.ベトナム

(1)根拠法

外資企業は長い間、外国投資法(87 年~ 06 年6月末)に基づいて、内資企業とは別の法律にて管理されてきましたが、WTO加盟前に内外格差是正の観点から、06 年7月からは「投資法・第 59/2005/QH11 号」・「企業法・第 60/2005/QH11 号」が外資・内資の区別なく共通法として導入され、共通投資法、統一企業法と呼称されました。15 年7月以降は、その改正法である「投資法・第 67/2014/QH13 号」・「企業法・第 68/2014/QH13 号」、21 年1月からは「投資法・第 61/2020/QH14 号」・「企業法・第 59/2010/QH14 号」が施行されており、決議機関・利益処分等は企業法に規定されています。会計税務処理に関しては会計法、税法に規定されています。

(2)内外格差の是正

06 年7月以降、投資法・企業法が内資・外資の区別なく適用されるようになり、内外格差の是正が図られてきていますが、いまだに制度上、運用上の違いは存在しています。例えば、外資企業は企業登記前に投資登記を行う必要がありますが、内資企業は、投資登記は不要であり、企業登記のみが求められています。また、外資企業は投資登記時に登記住所地の賃貸借契約書などが求められますが、内資企業には求められない等、実際の運用面でも取り扱いに違いがあります。金融、広告、通信、農業、物流業等は業法により、外資の出資比率に一定の規制も加えられています。
法人税率に関しては外資誘致の目的より、03 年末までは、外資企業には 25%、内資企業には 32%と異なる税率が適用されていましたが、04 年に双方の税率が 28%に統一され、その後、段階的な引き下げが実施され、09 年には 25%、14 年には 22%、16 年には 20%となり、現在に至っています。

以上