【Mizuno-CH中国・ベトナムビジネス情報】ダイジェスト版Vol.67
2022-05-18【中越ビジネスマニュアル 第 67 回】
■ 中国・ベトナムにおける法定代表人と最高意思決定機関について
中国とベトナムにおける外資企業の意思決定機関について解説します。
1.中国
かつては、外資企業の最高意思決定機関は、独資企業(100%外資企業)は股東会(出資者総会)、中外合弁企業は董事会となっていましたが、2020 年1月1日の外商投資法施行に伴い、股東会に統一されました(既存の中外合弁企業は、5年間の猶予期間あり)。
これに伴い、外資企業は、董事会と股東会の双方を設置することとなりますが、この関係は、取締役会(董事会)と株主総会(股東会)に類似したものとなります。
<1>董事会
董事会は、3名以上 13 名以下で構成され、股東会の招集、股東会決議事項の執行、経営計画・予決算案の作成、利益処分案の作成、増減資・組織再編案の作成、総経理の任命解任と報酬決定、その他の職権を行使します。
外商投資法施行に伴い廃止された中外合資企業法実施条例・中外合作企業法実施細則では、定款変更、期前解散、増減資、合併・分割は、董事会の満場一致決議が要求されていました。現在ではこの制限は無くなっているため、議決方法は定款で定めることができますが、外商投資法施行前に設立された中外合弁企業の場合、満場一致決議を取りやめるためには、まず、定款を変更する必要があります。
<2>股東会
股東会は、外資企業の最高意思決定機関であり、出資者は、その出資比率に基づいて議決権を行使します。
股東会は、経営方針の決定、董事・監事の任命解任と報酬決定、董事会・監事会決議事項の承認、予決算・利益処分案の承認、増減資・組織変更・期前解散の決議、定款変更決議などの権限を有します。
議決方法は定款の定めに従いますが、定款変更、増減資、合併分割、期前解散、会社形態の変更については、3分の2以上の可決が必要となります。
2.ベトナム
外資企業の最高意思決定機関は有限会社の場合、出資者総会であり、株式会社の場合、株主総会です。出資者が1名のみである一人社員有限会社に関しては、特例として出資者総会を設置しないことも認められており、その場合の最高意思決定機関は、会社会長となります。また、株式会社の組織には取締役会が存在しますが、有限会社の組織には取締役会は設けられていません。
<1>取締役会
取締役会は3名以上 11 名以下で構成され、経営戦略・投資計画・マーケティングの立案・決定、総資産の 35%以上の価額となる売買・金銭消費貸借・その他契約の承認(株主総会決議事項は除く)、取締役会会長・社長の任命解任と報酬決定、分枝機構の設立決定、利益処分案の作成、組織再編の提案、その他の職権を行使します。
取締役会決議は原則として、全取締役の4分の3以上の出席が必要であり、1人1票による多数決により決定します。定款に定めることにより、多数決よりも多い割合での議決とすることも可能です。ただし、取締役の報酬に関しては、満場一致決議が要求されています。
<2>株主総会
株主総会は、株式会社の最高意思決定機関であり、議決権を有する株主は、その出資比率に基づいて議決権を行使します。
経営方針の採択、利益処分の決定、取締役・監査役の任命解任と報酬決定、総資産の 35%以上の価額を有する資産の投資・売却決定、定款変更、予決算の承認、組織再編・解散の決定、内部管理規則の承認などの権限を有します。株主総会の開催には、原則として、議決権総数の 50%超を有する株主の出席が必要であり、出席者持分の 65%以上の承認により決議されます。優先株式を保有する株主に不利になる決議に関しては、優先株式総数の 75%以上の承認も必要となります。
<3>出資者総会
出資者総会は、有限会社の最高意思決定機関であり、出資者は、その出資比率に基づいて議決権を行使します。経営方針・年次経営計画の決定、増減資の決定、事業戦略・市場開拓・マーケティングの立案・決定、総資産の 50%以上の価額となる売買・金銭消費貸借・その他契約の承認、出資者総会会長・社長の任命解任と報酬決定、予決算・利益処分案の承認、分枝機構の設立決定、定款変更決議、組織変更・解散の決議などの権限を有します。
出資者総会の開催には、原則として、出資比率 65%以上に相当する出資者の出席が必要であり、出席者持分の 65%以上の承認により決議されます。総資産の 50%以上の資産売却、定款変更、解散決議については、出席者持分の 75%以上の承認が必要です。
■ 中国・ベトナムにおける外資企業の配当について
中国・ベトナム外資企業の配当について解説します。
1.中国
<1>配当
1)利益処分決議
2020 年1月1日の外商投資法施行(三資企業法の廃止)により、外資企業の最高意思決定機関は出資者総会(股東会)になりましたので(出資者が1名の場合は出資者)、股東会で配当を決議します。
過去には準備基金・福利基金・企業発展基金(三項基金)が法定準備金でしたが、外商投資法施行により、準備基金のみが強制積立を要する準備金となりました。準備基金は、資本金の半額に達するまで、毎期の税引後利益の 10%以上を積み立てる必要があります。
2)配当の原則
前期末の剰余金から、準備基金を積み立てた後の金額が、配当可能利益となります。
中国では、中間配当は例外的であり、期末配当が原則となりますが、当期の利益に手を付けない限りは(その場合、中間配当になる)、何度配当をしても、期末配当として扱われます。
<2>対外送金と課税
1)送金手続
配当の対外送金は、国家税務総局・国家外貨管理局公告 2013 年第 40 号、経常項目外為業務ガイド(匯発[2020]14 号)に基づき、5万米ドル以内であれば銀行審査のみ。それを超過する場合は、所管税務局での届出(備案)後に送金が可能となります。また、5万米ドル超の配当に際しては、会計監査報告書の提示が必要となります(匯発[2016]7号)。
2)課税
配当送金に際しては、企業所得税法実施条例第 91 条に基づき、10%の源泉徴収が必要となります(企業所得税のみ。増値税の納付は不要)。
なお、納税義務の発生時点は、かつては配当決議日とされており、このタイミングで納税をしないと、配当送金時に滞納金を徴収されるケースがありましたが(国家税務総局公告 2011 年第 24 号)、国家税務総局公告 2017 年第 37 号で配当送金日に修正されたため、この様な問題が解消しました。
2.ベトナム
<1>配当
1)利益処分決議
外資企業の最高意思決定機関は、有限会社の場合は出資者総会であり(出資者総会を有しない一人社員有限会社では会社会長)、株式会社の場合は株主総会ですので、それぞれの組織の最高意思決定機関にて配当を決議します。有限会社に関しては、企業法において法定準備金に関する規定はありませんが、株式会社に関しては、法令および定款の定める積立が必要と定められています。
2)配当の原則
前期末の剰余金から、法令および定款の定める積み立てを行った後の金額が、配当可能利益となります。適切な納税を行うとともに、弁済期限が到来する債務の履行に支障が無いことが前提です。中間配当に関しては、ベトナムでも当期の利益に手を付けることは認められませんが、前期末の剰余金を原資とする場合は限定的に認められるものと考えられます。
<2>対外送金と課税
1)送金手続
配当の対外送金は、資本口座からの送金が求められます。送金実行予定日の7営業日前までに管轄税務局への書面での通知が必要です。銀行での送金手続きには、この通知書のほか、監査済み財務諸表、法人税確定申告書・納付書、配当に関する社員総会・株主総会決議書等の提出が必要です。
2)課税
04 年に利益送金税は廃止されたため、法人出資者への配当送金に際しては、法人税の源泉徴収は不要です。但し、個人出資者への配当送金に際しては、原則として、個人所得税5%の源泉徴収が必要となります。例外として、一人社員有限会社の出資者が個人の場合、支払われる配当は個人所得税の課税対象外と定められているため、個人所得税の源泉徴収は不要となります(財務省通達・第 92/2015/TT-BTC 号)。
以上