【Mizuno-CH中国・ベトナムビジネス情報】ダイジェスト版Vol.66
2022-05-09【中越ビジネスマニュアル 第 66 回】
■ 中国・ベトナムにおける法定代表人と最高意思決定機関について
中国とベトナムにおける法定代表人の役割と、外資企業の最高意思決定機関について解説します。
1.中国
<1>法定代表人
中国では、外資企業は、「董事長、執行董事、総経理のいずれかから」法定代表人1名を選定する必要があります。 執行董事とは、小規模な会社(出資者1名の会社など)が、意思決定の簡便化のために、あえて董事会を設置せず、権限を1名に集約させる場合に任命される役職です。 以上より、董事会を設置している場合は、董事長か総経理のいずれか(副董事長、一般董事、副総経理は不可)、董事会を設置していない場合は、執行董事か総経理のいずれかから1名を選定します。 法定代表人は、必ずしも居住者であることは求められていませんので、非居住者を選任することもできます。ただし、法定代表人は、行政機関への報告に責任を持つ役職ですので、非居住者の場合、提出書類への署名に際して郵送の手間と時間が必要となりますし、さらには、法人設立時の人民元基本口座開設、基本口座の年次検査に際して、銀行訪問が必要(銀行によっては、パスポート原本の提示)であるため、居住者が務めた方が便利ではあります。
<2>最高意思決定機関
2020 年1月の外商投資法施行に伴い、最高意思決定機関が変更となっています。 それ以前は中外合資企業法・中外合作企業法(共に失効)に基づいて、中外合弁企業は董事会が最高意思決定機関で、株主総会(股東会)は設置しない。 100%外資企業は股東会(出資者が複数の場合)、出資者(出資者が1名の場合)が最高意思決定機関でした。 これが、外商投資法施行に伴い、全ての有限責任会社は、股東会が最高意思決定機関となっています。ただし、施行前に設立された中外合弁企業に関しては、5年間の移行期間があり、依然として股東会を設置していない(董事会を最高意思決定機関としている)会社があります。
2.ベトナム
<1>法定代表人
ベトナムでは1名、もしくは、複数の法定代表人を選定することができます。法定代表人は、会社を代表して権利・義務を行使する個人であり、外資 100%での一般的な企業形態である1人社員有限会社の場合、少なくとも1名は、「出資者総会会長、会社会長、社長」(2人以上社員有限会社の場合は「出資者総会会長、社長」、株式会社の場合は「取締役会会長、社長」)のいずれかから選定する必要があります。 また、1人社員有限会社では、定款に別段の定めがない場合、出資者総会会長、もしくは、会社会長が法定代表人となることが定められています(2人以上社員有限会社の場合は出資者総会会長、株式会社の場合は取締役会会長)。 さらに、法定代表人は少なくとも1名はベトナム常駐者である必要があるため、法定代表人が1名の会社の場合、法定代表人が権利・義務を遂行する代理人を定めずに 30 日超ベトナム不在となる場合は、その他の個人を法定代表人に選定する必要があります。
<2>最高意思決定機関
有限会社の場合、最高意思決定機関は原則として、出資者総会であり、株式会社の場合は株主総会となります。 ただし、1人社員有限会社は、その閉鎖性から出資者総会を設置しないことも例外的に認められており、設置しない場合は、会社会長が最高意思決定機関と位置付けられます。
■ 中国・ベトナムにおける外国企業の駐在員事務所について
中国・ベトナムにおける外国企業の駐在員事務所の人員的な制限を、最近実施されたベトナムでの制度変更を踏まえて解説します。
1.中国
<1>代表者
外国企業の駐在員事務所(常駐代表処)開設の根拠となる「外国企業常駐代表機構登記管理条例(国務院令 2010 年第 584 号)」には、常駐代表処の代表者は4名以内(首席代表1名、一般代表3名以内)と規定されています。
外国人は、常駐代表登記を前提に就業許可を取得しますので、常駐代表処の場合、駐在できる外国人は4名以内となります。
なお、代表者は必ずしも居住者でなくても大丈夫ですが、代表登記された非居住者は、日中租税条約に基づく 183 日ルールの適用が認められず、滞在日数に基づき個人所得税が課税されます。
これは、「非居住者個人及び住所を有しない居住者個人の関連個人所得税政策に関する公告(財政部・税務総局公告 2019 年第 35 号)」に、国内所属単位が、査定徴収方法で企業所得税課税されている場合などは、賃金給与はその支払い実態を問わず、国内所属単位が負担したと見なすと規定されているためです。
よって、183 日ルールの前提(中国内で給与が負担されない)を満たさなくなるため、滞在日数に対応する個人所得税が課税されます。
<2>現地採用社員
常駐代表処は、外資企業とは異なり、現地採用社員の直接雇用は認められておらず、派遣社員の受け入れとなります。 2008 年に労働契約法が施行され、直接雇用が奨励されることとなったため、常駐代表所の雇用についても変更が予想されていましたが、現時点でも直接雇用は認められていません。
2.ベトナム
<1>代表者
外国企業の駐在員事務所開設の根拠となる「外国企業の在ベトナム駐在員事務所または支店開設に係る商法細則(政令・第 07/2016/ND-CP 号)」には、首席駐在員が駐在員事務所の代表者であることが定められています。首席駐在員は、外国企業支店の代表者、外国企業の代表者、ベトナム国内企業(外資企業を含む)の代表者との兼任が禁止されています。また、駐在員事務所に派遣される外国人(就業許可の取得が可能な人員)に関する数量制限は設けられていません。
なお、代表者は必ずしも居住者でなくても大丈夫ですが、ベトナムを不在にする際は、権利・義務を遂行する代理人を定め、書面にて委任を行う必要があります。代理人を定めずに 30 日を超えてベトナムを不在とした場合、外国企業は、別の個人を代表者に選定しなければなりません。
<2>現地採用社員
従来、駐在員事務所は、外資企業とは異なり、まずは公共職業紹介機関を通じての採用活動が求められてきました。公共職業紹介機関は、申請受理から 15 営業日以内に候補者の選考・紹介を行わなければならず、この期間内に候補者の紹介が無い場合のみ、駐在員事務所は、現地社員を直接採用し、雇用することができました。
しかし、21 年2月 15 日に発効した政令・第 152/2020/ND-CP 号において、この採用活動への制限は撤廃されたため、現在は外資企業と同様に、駐在員事務所も自由な採用活動を行うことが可能となっています。
以上