【Mizuno-CH中国・ベトナムビジネス情報】ダイジェスト版Vol.65

2022-04-27

【中越ビジネスマニュアル 第 65 回】

■ 中国・ベトナムにおける最近の外資企業管理制度の変更について

2020 年以降に、中国・ベトナムで実施された、主要な外資企業管理制度の変更について解説します。

1.中国

<1>外商投資企業法施行

20 年1月1日に、「外商投資法」が施行され、同時に三資企業法(独資企業法、中外合資企業法、中外合作企業法)が失効になりました。 外資企業は、会社法(内外資企業に共通して適用される)と外商投資法に基づき運営することになります。この制度変更により、以下のような変化が生じています。

1)最高意思決定機関

外商投資法施行前は、独資企業の最高意思決定機関は出資者総会(出資者1名の場合は出資者)、中外合資・中外合作企業の場合は董事会となっていました。これが出資者総会となりました。結果として、中外合弁企業は移行期間内(5年間)に出資者総会を設置する必要があります。

2)外資企業分類の変更

独資・中外合資・中外合作という区別がなくなり、組織形態で管理されます。つまり、有限会社、株式有限会社、パートナーシップという区別になります。 なお、パートナー間で自由にリスク負担・利益配分を決定できる中外合作企業形態が廃止され(新規設立は不可)、同様の効果を出したい場合は、外資パートナーシップ形態を採用することとなりました。

3)商務主管部門の認可

非ネガティブリスト業種の場合は、外資企業設立・登記内容の変更に際して、商務主管部門の審査は不要となりました。内資企業と同様、市場監督局での手続き(社名登記・営業許可証申請)から開始することが可能となり、営業許可証取得後、商務主管部門には、オンラインでデータ送信するだけとなりました。

<2>社名登記

企業設立は社名登記申請から開始されますが、この手続きが「企業名称登記管理規定(国務院令 2020 年第 734 号)」の改定で、21 年3月1日より変更されました。 主要変更点は、許可制から申告制になったことであり、手続きの簡素化が実施されています。

2.ベトナム

<1>投資法改正

改正投資法・第 61/2020/QH14 号が 21 年1月1日から施行されています。以下、主な改正点となります。

1)条件付き投資分野の縮小

旧法で定められていた条件付き投資分野である 267 業種は、17 年に 243 業種に削減されていますが、今回の改正により、227 業種へとさらに削減されています。

2)M&A事前登録対象の変更

旧法においては、以下の(1)~(4)の場合が外資企業とされていましたが、改正投資法では、51%以上であった要件が 50%超に変更されました。

  • (1)外国投資家が定款上の資本金の 51%以上を出資している場合。
  • (2)法人型パートナーシップで、外国人が合名社員(無限責任社員)の過半数を占める場合。
  • (3)内国出資により設立された企業であるが、定款上の資本金の 51%以上を外資企業が出資している場合。
  • (4)外国企業と外資企業の出資比率が、定款上の資本金の 51%以上となっている場合。

また、旧法では、出資、株式・持分取得により、外国投資家・外資企業の出資比率が定款上の資本金の 51%以上となる場合、計画投資局での事前登録が求められていましたが、改正法では、51%以上から 50%超に変更されるとともに、外国投資家の出資比率が増加する場合のみ、事前登録が求められることとなっています。

<2>企業法改正

改正企業法・第 59/2020/QH14 号が 21 年1月1日から施行されています。以下、主な改正点となります。

1)印鑑登録手続きの撤廃

旧法・第 44 条で定められていた印鑑登録手続きは撤廃されました(第 43 条)。

2)二人以上社員有限会社の監査役会設置の緩和

旧法・第 55 条で定められていた監査役会の設置は、国営企業・国営企業子会社を除き、企業の任意となりました(第 54 条)。

3)一人社員有限会社の監査役設置の緩和

旧法・第 78 条で定められていた監査役の設置は任意となり、国営企業が会社所有者の場合のみ、監査役会の設置が義務付けられています(第 79 条)。

■ 中国・ベトナムにおける外資パートナーシップ

中国とベトナムにおける、外資パートナーシップ制度について解説します。

1.中国

外資パートナーシップ企業(中国語:外商投資合夥企業)は、「外国企業・個人が中国内で設立するパートナーシップ企業管理弁法(国務院令 2009 年第 567 号)」・「外商投資パートナーシップ企業登記管理規定(国家市場監督管理総局令 2019 年第 14 号)」を根拠としています。 外資パートナーシップ企業とは、外国企業・外国人を含む2者以上の出資者で構成され、ジェネラルパートナーシップ(外商投資普通合夥企業)とリミテッドパートナーシップ(外商投資有限合夥企業)に分類されます。 ジェネラルパートナーシップとは、出資者全てがパートナーシップの債務に無限責任を負う形態を指し、リミテッドパートナーシップとは、無限責任出資者と有限責任出資者で構成される(最低1名は会社の債務に対して無限責任を負う)形態を指します。

外資パートナーシップ企業の特徴は以下の通りです。

  • 責任負担・利益配分を当事者間で決定することができる。
  • 外国企業が役務により出資できる。
  • 企業所得税法上は課税対象ではなく、出資者に直接課税される。
  • 「外商投資管理作業に関する問題の通知(商資函[2011]72 号)」により、外資パートナーシップ企業が行う中国内持分出資は外国出資と見なされる(三資企業の国内出資は、投資性公司等の特殊な例を除き、内国出資と扱われる。三資企業とは独資、中外合資、中外合作企業を指す)。

2020 年1月1日に外商投資法が施行され、中外合作企業の新規設立ができなくなりました。中外合作企業は、(出資比率によらず)出資者間の協議で、利益配分やリスク負担を決定できるのが特徴でしたが、それに代替する方法として、外資パートナーシップがあります。ただ外資パートナーシップは、最低1名は企業の債務に対して無限責任を負う必要があるため、有限責任制である中外合作企業に比べると、リスクは高くなります。

2.ベトナム

外資パートナーシップ企業は、「企業法・第 177 条~ 187 条」を根拠とします。 外資パートナーシップ企業とは、外国人を含む2名以上の合名社員(無限責任を負う出資者)で構成される会社を指し、出資社員(出資金の範囲で有限責任を負う出資者)を加えることも認められています。法律上、パートナーシップ企業の分類はなされていませんが、日本の制度を前提としますと、前者は合名会社、後者は合資会社として分類できます。 外資パートナーシップ企業の特徴は以下の通りです。

  • 少なくとも2名以上の合名社員(無限責任を負う出資者)で構成される会社であり、出資社員(出資金の範囲で有限責任を負う出資者)を加えることができる。
  • 合名社員は、個人でなければならないが、出資社員は個人・企業とも認められる。
  • 合名社員は、他の合名社員の同意なく、他社の合名社員となることはできない。また、同業種の事業経営を行うことも認められない。
  • 企業法の下に設立されるため、法人税法上の課税対象である。
  • 出資比率もしくは会社定款に定める方法により利益分配(配当)を受ける。

以上