【Mizuno-CH中国・ベトナムビジネス情報】ダイジェスト版Vol.64

2022-04-20

【中越ビジネスマニュアル 第 64 回】

■  中国・ベトナムにおける無償輸入について

外国から、中国、もしくは、ベトナムへの輸出に際して、No Commercial Value(無償)としたい場合があります。これは、輸入地側で対応可能でしょうか。

1.中国

<1>加工貿易の無償提供設備

中国において、制度上、無償輸入が認められているのは、加工貿易において、加工貿易企業が輸入する、無償提供設備(中国語:不作価設備)です。これは、「加工貿易で使用する設備であること。無償であること(いずれの形式でも賃貸料を徴収しないこと)。税関での事前手続きを行うこと」を前提に、無償輸入が 認められ、また、関税は免除されます。以前は、増値税も免除されていましたが、2009 年1月の増値税暫定条例改定により、増値税は、適正時価により課税されることとなりました。

<2>通常の貨物

上記<1>以外は、無償輸入を認める制度が無いので、対応が少々難しくなります。まず、輸入段階の課税ですが、無償輸入であっても、適正時価に対して、輸入段階課税(関税・増値税、および、品目によっては、消費税)を受けます。ここで問題となるのは、税関の通関データ上、課税に際して使用した、適正時価が 残ってしまう点です。

中国で貿易を行う企業は、貿易決済管理システムの登録を行う必要がありますが、ここでは、通関データ(税関)と決済データ(外貨管理局・銀行)が、企業毎に集計されており、乖離(かいり)が著しいと、外貨管理局の立入検査を受ける場合があります。無償輸入をした場合、徴税用に入力した適正時価データを、税 関が、無償契約に合わせて0に調整してくれれば良いのですが、原則として、この対応はしてくれません。結果として、通関データは時価、決済は0のまま残ってしまい、乖離が生じることになります。

一応、システム管理は、個別取引を管理するのではなく、当該企業の、直近 12 カ月の総量管理ですので、無償輸入した貨物の時価が、それほど重要な金額でなければ、問題は起きない期待はあります。ただし、このような乖離が残る点は、実務上の障害となっています。

2.ベトナム

<1>加工貿易の無償提供設備

ベトナムでは、輸出加工企業(EPE:Export Processing Enterprise)と呼称される加工貿易企業は、非関税地域に存在するものとみなされます。(政令・第 82/2018/ND-CP 号・第2条)。

したがって、国外から非関税地域へ輸入され、そこで使用される物品に対しては、有償無償の区別なく関税は発生しません(輸出入税法・第 107/2016/QH13 号・第2条)。また、付加価値税に関しては、再輸出を前提として一時的に輸入された物品は非課税対象とされていますので(付加 価値税法・第 13/2008/QH12 号・第5条・財務省令・第 219/2013/TT-BTC 号・第4条)、加工契約に基づき一定期間を定めた設備の輸入もこれに該当すると考えられます。

<2>通常の貨物

前述の輸出加工企業とは、輸出加工区(EPZ:Export Processing Zone)で設立・運営される企業、もしくは、工業区・経済区における輸出品製造に特化した企業を指します。これ以外の企業が無償設備を輸入する場合はケースバイケースとなりますが、輸出加工企業でない企業が締結した加工契約に基づく設備の輸入は免税対象となっています(政令・第 134/2016/ND -CP 号・第 10 条)。免税対象でない無償輸入品に対しては、適正時価に対して関税が課されます。付加価値税に関しては、輸出加工企業であるか否かに関わらず、一時輸入品に関しては非課税となりますが、非課税対象でない無償輸入品は適正時価に対して課税されます。 以上

■  中国・ベトナムにおける外資企業の借入

中国・ベトナムにおける、外資企業の借入制限について解説します。

1.中国

<1>外債

外資企業の対外借入に関しては、総量規制が実施されています。その方法は、投注差方式(対外借入額を定款の総投資と資本金の差額に制限する方式)と、マクロプルーデンス方式(一定の調整を加えた借入金額を前年度末の自己資本の2倍以内に制限する方式)の選択適用となります。

ちなみに、マクロプルーデンス方式は、「全国範囲で全範囲クロスボーダー融資のマクロプルーデンス管理を実施する事に関する通知(銀発[2016]132 号)」により開始された方法ですので(一方、投注差方式は、2003 年に外債管理弁法により開始)、その施行日である 16 年5月3日以降の最初の借入に際して、いずれの方法を選択するかを決定し、継続適用することになります。

<2>中国内の借入

外資企業が中国内の銀行から借り入れる場合、総量枠規制はありません。これは、外国の親会社保証が入っている場合も同様です。ただし、外資企業が返済不能に陥り、親会社が保証履行をする場合、実質的な対外借入であるとして、総量枠規制の対象となります。ただし、外債管理方法として、投注差方式を採用している場合は、「クロスボーダー担保外貨管理規定(匯発[2014]29 号)」により、前年度の会計監査報告書に記載された純資産金額までは、対象から除外できます。

なお中国では、金融機関以外は融資行為を行うことが認められていないため、非金融企業が融資を行う場合は「委託貸付」という銀行経由の方法が採用されます。

また、中国内借入で調達した外貨は、人民元換金が認められませんので、資金ニーズに基づき、外貨借入・人民元借入を決定する必要があります(外債の場合は換金可能)。

2.ベトナム

<1>外債

ベトナムでは、外資企業の対外借入に限らず、借入期間1年超の中長期借入金への総量規制が実施されており、投注差方式(中長期借入額を定款の総投資と資本金の差額に制限する方式)が適用されます。そして1年超の中長期借入が国外からの場合、ベトナム中央銀行での登記が必要となります。総投資=資本金+中長 期借入金と位置付けられていますので、登記に際しては、投資登記証明書等の提示が必要となり、総投資金額が確認されます。

<2>ベトナム内の借入

ベトナムでは、国内借入(ベトナム内の内資銀行・外資銀行からの借入)についても、対外借入と同様の総量規制が実施されており、1年超の中長期国内借入の場合、借入可能額は、定款上の総投資金額と資本金の差額に制限されます。ただし、国外からの借入とは異なり、中央銀行への登録は求められません。借入通貨 は外貨・ベトナムドンともに認められていますが、外貨収入がない(ベトナム国内販売のみを行う)法人の場合、外貨での返済能力が無いため、外貨借入は認められません。

以上