【Mizuno-CH中国・ベトナムビジネス情報】ダイジェスト版Vol.55(2021年9月27日発行)
2021-10-31【水野コンサルタンシー中国・ベトナムビジネス情報】ダイジェスト版 Vol.55 (2021 年 9 月 27 日発行)
【中越ビジネスマニュアル 第 55 回】
ベトナムの法人税について
■ 1.法人税の概要
法人税は、法人所得に対して課される税金です。
ベトナムの法人税は、2003 年末までは、外資誘致の目的より、内資企業の税率が 32%、一方、外資企業には 25%と、異なる税率が適用 されていました。ただし、内外格差是正の観点から、2004 年に、双方の税率が 28%に統一されています。その後、段階的な税率引き下げ が実施され、2009 年には 25%、2014 年には 22%、2016 年には 20%となり、現在に至っています。
また、現在は、軽減税率・タックスホリデー等、各種の優遇措置も、外資、内資の区別はなく、一定の事業内容、もしくは、一定の地域への投 資に対して設けられています。
<1>法人税法
現行の法人税法は、2009 年1月1日より施行されています(法人税法・第 14/2008/QH12 号)。同法では、法人税率は、25% と定められていますが、法人税法の一部条項にかかわる改正法・第 32/2013/QH13 号・第1条により、税率は、上記の通り変更され ました(2014 年1月1日に 22%、2016 年1月1日に 20%に引き下げ)。
<2>法人税の特徴
ベトナムの法人税の特徴は、以下の通りです。
1)対象
外資企業・内資企業の双方を対象としています。
2)税率
20%の固定税率が適用されます。
3)損失の繰越
納税年度に発生した税務損失は、5年間の繰越が認められます(法人税法・第 16 条)。
なお、繰り戻し還付制度(欠損発生年度の前にさかのぼって、還付を認める制度)はありません。
4)申告・納税
- 予定納付
四半期ごとの予定納付が義務付けられていますが、2014 年 11 月 15 日以降は、申告書の提出は不要となっています(政令・第 91/2014/ND-CP 号・第4条)。
予納は、翌月 30 日以内に行う事が義務付けられており、四半期財務諸表を作成している企業は、四半期財務諸表、および、税法に基づき予納 額を決定します。
四半期財務諸表の作成が求められていない企業は、前年度の法人税額、および、当年度の事業結果予測に基づき予納額を決定します。 - 確定申告
年度終了後 90 日以内に確定申告を行う必要があります(租税管理法・第 78/2006/QH11 号・第 32 条)。
予定納付済の税額の合計が、確定申告額を 20%以上下回る場合、20%を超える差額に対して遅延利息を納付する必要があります。
<中国の制度との比較>
中国の企業所得税法は、2008 年1月1日施行です。この時の税制改正により、内資・外資の税法が統合され、それ以前の税法(外商投資企 業及び外国企業所得税法)で認められていた、各種の外資優遇制度は廃止されました。現在の税法では、内外資の課税原則に違いはありません。
中国の企業所得税の税率は 25%の固定税率ですので、ベトナム(20%)よりも高い税率が採用されています。
現在認められている主要な優遇税率は、ハイテク認定を受けた企業(15%)と、小規模薄利企業(20%)。課税減免措置は、一定のプロ ジェクト(一次産業・公共インフラ・環境保護などに対する「三免三減」など)や技術移転などに対して認められています。
上記のうちで、小規模薄利企業(利益が少ない中小企業)に対する優遇措置は、何度も適用期間を制限した優遇措置が実施されており、外資企 業も適用事例が多い優遇です。現時点では(2019 ~ 2021 年)、小規模で、年間課税所得が 300 万元以下の企業に対しては、5%と 10%の税率適用が認められています。
■ 2.法人税の優遇制度
ベトナムの法人税の代表的な優遇措置は、以下の通りです。
<1> 優遇税率
投資する事業内容・地域に応じて、優遇税率(10%、もしくは、17%)、および、優遇期間(10 年・15 年・30 年・全期間)が決められて います(財務省通達・第 78/2014/TT-BTC 号第・19 条)。適用開始は、原則として、売上発生初年度からとなります。
1)優遇税率:10%・優遇期間:15 年
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社会・経済的に特に困難な地域、経済区、ハイテク区、首相決定により設立されたITパーク内の企業
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以下の事業を行う企業
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科学研究、技術開発、ハイテク法に基づく優先高度技術の応用・開発
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浄水場・発電所・橋梁(きょうりょう)・道路・鉄道・空港・港湾・その他首相決定によるインフラ開発
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ソフトウェア製品の生産
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レアメタル等の生産
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再生可能エネルギー・クリーンエネルギー・廃棄物からのエネルギーによる発電。バイオ開発
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環境保護・環境監視・環境分析設備の生産
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環境汚染処理・保護
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廃水・廃棄物処理
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水再利用
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ハイテク法に基づく高度技術を応用するハイテク企業・農業企業
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総投資6兆ドン以上、投資登記証明書発行日から3年内に総投資を実行する企業。売上計上初年度から3年後(売上計上初年度を含め4年目) の年間売上が 10 兆ドン以上の製造企業。総投資6兆ドン以上、投資登記証明書発行日から3年内に総投資を実行し、売上計上初年度から3年後 (売上計上初年度を含め4年目)の年間平均正規雇用者数が 3,000 人超の企業。ただし、特別消費税課税対象品の製造、および、鉱石採掘は除 く
2)優遇税率:10%・優遇期間:30 年
通常は、優遇税率 10%・優遇期間 15 年が適用される事業内容であるものの、大規模、かつ、ハイテク、もしくは、新技術を用いた投資であり、 特別な投資誘致が必要なプロジェクトである場合、優遇期間は、首相決定により、最大 30 年の優遇期間が認められます。
該当する事業内容は、以下の通りです。
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科学研究
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技術開発
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ハイテク法に基づく優先高度技術の応用・開発
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浄水場・発電所・橋梁・道路・鉄道・空港・港湾・その他首相決定によるインフラ開発
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ソフトウェア製品の生産
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レアメタル等の生産
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再生可能エネルギー・クリーンエネルギー・廃棄物からのエネルギーによる発電
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バイオ開発
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環境保護・環境監視・環境分析設備の生産
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環境汚染処理・保護
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廃水・廃棄物処理
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水再利用
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3)優遇税率:10%・優遇期間:全期間
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教育、訓練、職業訓練、医療、文化、スポーツ、環境保護
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出版
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新聞
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社会住宅
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森林植樹・保護
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社会・経済的に困難な地域での農業・林業
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動植物の繁殖・交配
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製塩
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農作物・水産物・食料品の保管
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社会・経済的に困難な地域、もしくは、社会・経済的に特に困難な地域以外での農業・林業・漁業・製塩の共同組会
4)優遇税率:17%・優遇期間:10 年
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社会・経済的に困難な地域に設立された企業
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以下の事業に従事する企業
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高品質鋼の生産
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省エネルギー製品の製造
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農業・林業・漁業・製塩用の機械・設備
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灌漑(かんがい)・排水設備
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家畜・水生動物用飼料
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伝統工芸
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5)優遇税率:17%・優遇期間:全期間
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人民クレジットファンド
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銀行協同組合
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マイクロファイナンス
<2> 所得の減免
投資する事業内容・地域に応じて、免税期間・減免内容(四免九減、四免五減、二免四減)が定められています(財務省通達・第 78/2014 /TT-BTC 号第・20 条)。
四免九減とは、設立後、課税所得が発生してから、最初の4年間は課税を免除し、その後、9年間は課税所得の半額を免税とする優遇措置です。
四免五減、二免四減も同様に、4年間、もしくは、2年間の全額免除、5年間、もしくは、4年間の半額免除を表しています。適用開始は、原則と して、課税所得の発生初年度からですが、売上発生初年度から起算して3年間経過しても課税所得が発生しない場合は、売上発生から4年目に、減 免措置が開始します。
1)四免九減
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優遇税率 10%・優遇期間:15 年の優遇が適用される事業、もしくは地域の企業
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社会・経済的に困難な地域、もしくは、社会・経済的に特に困難な地域における教育、訓練、職業訓練、医療、文化、スポーツ、環境保護を行 う企業
2)四免五減
- 社会・経済的に困難な地域、もしくは、社会・経済的に特に困難な地域以外における教育、訓練、職業訓練、医療、文化、スポーツ、環境保護 を行う企業
3)二免四減
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優遇税率 17%・優遇期間:10 年が適用される事業、地域に設立された企業
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工業団地内に設立された企業(ハノイ、ホーチミン、ダナン、ハイフォン、カントーなどの都市部は除く)
■ 3.損金算入制限経費
特定の支払いについては、法人税課税所得計算上、損金算入が制限されます。代表的な例を下記します。
<1> 損金算入の原則
法人税の課税所得計算上、損金算入が認められるためには、その費用が事業への直接的な関連性を有し、かつ、インボイス等の合法的な証票を備え ている必要があります。
また、2,000 万ドン以上の支払い時は、現金決済では損金算入が認められず、銀行送金等の証票が必要となります(財務省通達・第 96/2015/TT-BTC 号・第4条)。
<2> 損金算入制限を受ける内容
企業所得税の課税所得を算定するに当たり、支払額がそのまま損金として認められない費用があります。損金算入に一定の制限が行われている例を 解説します。
1)福利費等
生命保険、年金基金等の従業員福利費は、一人当たり 300 万ドンまで損金算入が認められます(政令・第 146/2017/ND-CP 号)。
2)交際費
飲食代に対する上限規制はありませんが、ゴルフ場会員権・プレー代に対する支払いは、損金算入が認められません。
3)広告宣伝費等
広告宣伝費、販売促進費、コミッション、会議費等の合計は、損金合計の 15%までしか認められませんでした。ただし、2015 年1月1日以 降、この上限規制は撤廃されています(租税法の一部条項に係る改正法・第 71/2014/QH13 号・第1条)。
4)支払利息
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EBITDA(Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation and Amortization)の 20%を超える支払利息は、損金算入できません。EBITDAとは、税引き前利益に支払利息と償却額を加えた利益を指します(政令・第 20/2017/ND-CP 号・第8条)
-
資本未拠出額に相当する借入金への利息支払いは、損金算入が認められません(法人税法の一部条項にかかわる改正法・第 32/2013 /QH13 号・第1条)
以上
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