【Mizuno-CH 中国・ベトナムビジネス情報】ダイジェスト版 Vol.33 (2020 年 1 月 22 日発行)
2020-05-21【水野コンサルタンシー中国・ベトナムビジネス情報】ダイジェスト版 Vol.33 (2020 年 1 月 22 日発行)
【中越ビジネスマニュアル 第 33 回】
中国・ベトナムにおける恒久的施設(PE)課税の実務について
国際課税における恒久的施設(PE)の概念を前回解説しました。PE認定実務では、受けやすいPE認定の類型は、国によって異なり、そこには、一定の傾向が見られます。今回は、中国、ベトナムのPE認定実務について解説します。
【中国の場合】
中国のPE認定は、各地の税務機関が独自に判定するのではなく、国家税務総局より方針が出され、各地域の税務機関が、その方針に基づき対応する傾向にあります。よって、地域によって認定の類型が異なる事は、まずありません。全地域において、共通するPE認定方法が採用されます。その中で、実際に、行われているPE認定は、以下の通りです。
<1> コンサルティングPE
中国において、最も多いのは、コンサルティングPE認定です。
これは、租税条約上、「非居住者企業が、連続する 12 カ月内に、6カ月を超過するコンサルティング役務を遂行」した事によるPE認定であり、この認定により、関連する出張者の 183 日ルールの適用が認められなくなります。
ただし、PE認定とは、前回解説した通り、企業所得税に関する課税判定ルールであるため、個人所得税に影響を与える(183 日ルールの適用が不可になる)のは不思議に思えますが、これは、中国の国内法(財政部・税務総局 2019 年第 35 号)によるものです。この規定(国税発[1994]148 号の失効に伴い、同内容が上記第 35 号に継承された)では、非居住者の拠点(PE)が、実質所得課税を受けていない場合は、関連する人員の給与は、PEが負担しているとみなす事を規定しています。結果として、中国内で給与が負担されているとみなされるため、183 日ルールの前提が満たされなくなり、滞在日数分の個人所得税課税を余儀なくされるものです。
<2> 出向者派遣に伴うPE
上記<1>ほどは、認定事例は多くはありませんが、出向者の派遣が、PE認定に結び付く事があります。これは、国家税務総局公告 2013 年第 19 号によるもので、中国法人に対して派遣した出向者に対して、親会社(出向元)が、依然として指揮命令権を行使している場合、出向者ではなく、長期出張者であるとみなされ、PE認定を受けます。この認定を受けた場合、出向者関連経費をもとに、一定の想定利益を算定し、それに基づく企業所得税課税を受ける事になります。
【ベトナムの場合】
ベトナムでは、そもそもPE認定がトピックにあがることがほぼありません。なぜならば、外国契約者税制度では、PEの有無に関わらず、外国企業がベトナム国内で提供するサービスに対しての課税が定められており、PE認定をして課税を行うという発想が当局にありません。むろん、国際ルールとしての租税条約上は、PEの定義づけがなされてはいますが、租税条約への知識を有する担当官がいないのも実情です。
<1> 外国契約者税
外国契約者税とは、ベトナム国内法に準拠した法人格を有さない外国の個人また法人(外国契約者)が得るベトナム国内での役務提供への対価に対して課される税金の呼称であり、
法人税と付加価値税により構成されています。税務当局としては、PEの有無に関わらず徴税が可能であり、「連続する 12 カ月内に、6カ月を超過する役務」というような租税条約上の条件を満たす必要もありません。
<2> 外国契約者税と租税条約との関係
国際間の取り決めである租税条約は、ベトナム国内法である外国契約者税に優先します。
日越租税条約、および、中越租税条約において、「非居住者企業が、連続する 12 カ月内に、6 カ月を超過する役務」をベトナム国内で提供しなければPEには該当しないため、外国契約者税(法人税部分)の課税が免除されますが、所管税務局での事前免税手続が求められています(2013 年 11 月6日付財務省通達番号 156/2013/TT-BTC 第 20 条・第3項)。
このように、制度としては免税手続きが定められていますが、当該手続きは税務局への通知であり、税務局からの認可を意味しないため、後日、当局とのトラブルに繋がりかねません。また、租税条約に関する知識を有する担当官もいないため、免税手続きの利用自体が行える環境ではないのが実情であり、PEがなくとも納税が求められている現状があります。なお、ベトナムで免税対象となる法人税は、租税条約上ベトナムに課税権がないため、日本・中国における外国税額控除の適用も不可となります。
以上
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