【Mizuno-CH 中国・ベトナムビジネス情報】ダイジェスト版 Vol.14 (2018 年 3 月 20 日発行)

2019-04-03

【水野コンサルタンシー中国・ベトナムビジネス情報】ダイジェスト版 Vol.14 (2018 年 3 月 20 日発行)

【中越ビジネスマニュアル 第 14 回】

中国とベトナムの加工貿易形態

加工貿易形態とは、保税形態の輸出加工を指します。
原材料を輸入し、加工した製品を再輸出する場合、輸入原材料に対して輸入段階課税が行われると、税コストが高額になります。
このため、製品輸出を前提として原材料を輸入する場合、如何に輸入段階の課税を回避するかの検討が必要となりますが、この様な課税免除措置を「加工貿易」と呼称します。
中国でもベトナムでも、加工貿易は認められていますが、その形態・課税方式には若干の違いが有ります。中国とベトナムの加工貿易制度の違いを解説します。

【中国】

1.加工貿易の形態

中国では、加工貿易は「来料加工と進料加工」の 2 形態に分かれています。

1)来料加工

来料加工とは、外国企業(加工貿易の委託者)が、無償で原材料の提供・製品の引取を行う形態を指し、外国企業から中国の来料加工企業には、加工賃のみが支払われます。
つまり、原材料の調達、製品の販売、資金調達などの機能は外国企業に帰属する事になりますので、中国の機能は限定的です。
このため、中国内での付加価値が総じて低くなることから(課税額も同様)、企業誘致が成熟した地域では、あまり歓迎されていません。

2)進料加工

進料加工とは、売買形式の加工貿易を指します。進料加工においては、加工企業が、原材料輸入契約・製品輸出契約の双方を税関に提示して、原材料の保税輸入許可を取得します。この様な売買取引であるため、原材料・製品は、所有権の移転を伴い、中国にある在庫の所有権は当該進料加工企業に帰属します。結果として、製品を、原材料の調達先とは異なる外国企業に販売(輸出)する事も可能になりますし、中国内で資金調達、ブランド構築などが行われる場合も少なくありません。これが、付加価値に結び付きます。
近年、来料加工から進料加工への転換が、各地域で推奨される傾向にありますが、この様な違いを背景としたものです。

2.加工貿易の課税形態

1)来料加工

来料加工の場合、原材料の保税輸入が可能になります(輸入段階の関税・増値税は免除される)。また、外国企業から来料加工企業に対して支払われる加工賃に対しても、増値税の課税が免除されます。つまり、来料加工企業は、増値税の免税単位となりますので、企業の活動が、この取引(来料加工)に限定しているのであれば、当該企業に対する増値税の課税は有りません。一方、仕入増値税が発生した場合(国内で非保税原材料を調達した場合など)、一切の還付控除は受けられず、原価(税コスト)として処理する必要が有ります。

2)進料加工

進料加工も、来料加工と同様、原材料輸入時の関税・増値税の課税は免除されます。
よって、関税の課税を受けない事は来料加工企業と同様ですが、増値税に付いては、中国内で発生した付加価値に対して課税を受けます。
中国内で発生した付加価値とは、製品輸出に際しての FOB 価格と免税輸入した原材料の差額を指します。
また、増値税は、輸出取引に対してはゼロ税率の適用(輸出還付の適用)が規定されていますが、輸出還付率は課税率と同率ではなく、輸出する商品によって一定の率が設定されており、大部分の製品は、還付の掛け目が生じています。この様な不還付率(例えば、13%の還付率が適用される製品であれば、課税率である 17%から 13%を控除した 4%)を、上記の付加価値(輸出 FOB-免税輸入原材料)に乗じた金額が、進料加工に関する増値税コストとなります。
この様に、一定の増値税コストが発生するため、来料加工より不利な場合もありますが、一方、仕入増値税が発生した場合、仕入控除・輸出還付が認められますので、取引ポジション(国内部材調達が多い場合など)によっては、進料加工の方が、増値税負担が少なくなります。

【ベトナム】

1.加工貿易制度

ベトナムでは、加工貿易企業は、輸出加工企業(EPE:Export Processing Enterprise)と呼称されます。
輸出加工企業とは、製品輸出を前提として、輸出加工区(EPZ:Export Processing Zone)に設立された企業、及び、工業団地・経済区に設立されているが、輸出加工企業(EPE)ライセンスを取得した企業を指します。
輸出加工企業には、輸出入関税、及び、付加価値税が免除されていますので、この様な、輸出加工企業(EPE)となる事で、税コストの削減、及び、事業オペレーションの効率化を図ることが可能となります。
EPE の活動は、加工賃ベース(中国の来料加工に相当する。原材料・製品が無償で輸出入され、EPE に対しては、加工賃のみが支払われる形態)と、売買形式(中国の進料加工に相当する。原材料・製品を、売買契約に基づいて売買する)を包括します。加工貿易ライセンス上、加工賃ベース、売買形式の区別がないため、EPE は、双方の活動が可能であり、中国のように、双方が区分管理される状況ではありませんし、結果として、加工賃ベースの許可が取りにくいという状況も有りません。

2.加工貿易に対する課税

輸出加工企業(EPE)は、原材料の保税輸入が可能です(輸入段階の関税・付加価値税は免除される)。また、加工賃ベース・売買契約ベースに基づく課税は、以下の通りとなります。

1)加工賃ベース

外国企業と EPE 間の原材料・製品の往来は、関税・付加価値税の課税が免除される事は、上記の通りです。また、外国企業から輸出加工企業に対して支払われる加工賃に対しても、付加価値税の課税が免除されます。

2)売買形式

売買形式の場合は、原材料輸入と製品輸出の差額が、EPE の利益(加工賃に相当)となりますが、EPE と外国企業間の貨物の往来に付いては、関税・付加価値税の課税が免除されます。

上記の通り、輸出加工企業は、付加価値税の免税単位となりますので、加工賃ベース・売買形式の何れも、当該企業に対する関税・付加価値税の課税は有りません。
一方、輸出加工区・輸出加工企業外部で消費されるレンタカー代金、出張時のホテル宿泊費、交際費等には仕入付加価値税が発生しますが、一切の還付控除は受けられず、原価(税コスト)として処理する必要が有ります。

3.EPE・非 EPE 間取引と付加価値税

EPE は、付加価値税の免税単位ですので、付加価値税が課税された場合でも、還付控除は受けられません。

ベトナム内の非 EPE が、貨物を EPE に販売した場合、輸出と見なされますが、輸出販売に係る仕入 VAT は、まず、国内販売に係る売上 VAT から控除しなければなりません。その後、輸出販売に係る仕入 VAT が 3 億 VND 以上残っている場合、輸出販売額の 10%を上限として、VAT 還付申請が可能となります。

一方、EPE 間の取引は、付加価値税非課税。EPE から非 EPE に対する販売は、非 EPE の輸入と見なされますので、非 EPE には、輸入付加価値税が課されます。

以上


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