中国・ベトナムにおける外資企業の借入制限・外資販売会社について【水野コンサルタンシー中国・ベトナムビジネス情報】ダイジェスト版Vol.105

2025-03-11

【中越ビジネスマニュアル 第 106 回】

中国・ベトナムにおける外資生産型企業の設立について

中国とベトナムにおける外資生産型企業設立のポイントについて解説します。

1.中国

(1)設立

2020年1月1日に外商投資法が施行され、非ネガティブリスト外資企業の設立に際しては、商務主管部門での許可・備案(届け出)は不要となり、所管の市場監督局での営業許可申請から手続きが開始できます(ただし、以下(2)の発展改革委員会でのプロジェクト申請や環境・消防などの手続きは別途必要となります)。

なお、最新のネガティブリスト(外商投資参入特別管理措置)は、国家発展改革委員会、商務部2024年第23号であり、製造業に対しては参入制限が撤廃されました。

(2)工業用地の使用

中国の工業用地も不足気味になっている状況であることから、企業進出が成熟している地域の場合、優良企業に対して優先して使用を認める傾向にあります。

優良企業の判定は、奨励分類業種か否か、企業規模(世界500強企業等)、環境対応、付加価値などにより判定されます。

また、発展改革委員会でのプロジェクト審査(工業用地を使用するに適切なプロジェクトか)、環境保護局での環境評価などのステップが必要となります。

(3)資本金

外資生産型企業の場合、工業用地の使用が一番のポイントとなり、その際に一定の基準要求が工業団地・地方政府等より提示されます。

これは、土地強度(使用する土地の平方メートル当たりの投資総額)、土地密度(使用する土地の平方メートル当たりの登録資本金額)、税収強度(設立後の税収目標)などです。

土地密度が提示される場合は、それが登録資本金額に直結しますし、土地強度が提示される場合は、提示された総投資額に総投資と資本金の比率(工商企字[1987]38号)を乗じて、必要となる資本金額を決定します。

2.ベトナム

(1)設立

商業地域での設立申請は、計画投資局が管轄機関であるのに対して、生産型企業の設立申請は、進出地域(省・市)の工業団地等管理委員会の管轄となります。土地使用に関する契約やレンタル工場の契約締結後に投資登記・企業登記手続きを開始できます(環境・消防などの手続きは、別途必要となります)。

(2)工業用地の使用

工業団地以外の場所への進出は、環境保護の観点から認められなくなってきたため、工業団地への進出を前提に設立計画を立てる必要があります。企業進出が成熟していない地域の場合、染色業など相対的に環境負荷の高い企業を受け入れる工業団地もあるため、各工業団地の特色を把握し、進出先の絞り込みを行います。また、進出地域によって異なる最低賃金および投資奨励地域に該当し優遇が受けられるか否かも工業団地選定の判断材料となります。

(3)資本金

原則、外資生産型企業の投資総額および最低資本金への規制はありませんが、条件付き投資分野に該当しますと、業法等により最低資本金額が定められている場合がありますので事前確認が必要です。また、旧外国投資法において、資本金は総投資額の30%以上であることが求められていましたので、この比率が実務上の指針となります。


中国・ベトナムにおける外資企業に対する資本金払い込みについて

中国とベトナムにおける外資企業の資本金払い込み方法について解説します。

1.中国

(1)資本金の払い込み

外資企業の資本金払い込みは、貨幣、現物(建築物、工場建物、設備機械、その他の資材)、無形資産(工業所有権、ノウハウ、土地使用権)などの方法が認められています。

貨幣以外での現物出資の場合は、鑑定評価の作成が求められます(会社法・第48条)。

なお、貨幣での払い込みは、銀行間の決済のみ払い込みと認められ、現金を資本金口座に直接入金しても、払い込みとは認められませんので、注意が必要です。また、貨幣は外貨・人民元(国外からの払い込みはクロスボーダー人民元)の双方が可能です。

(2)現物出資

設備機械での現物出資の場合は、「輸入通関実績がある設備」のみ対応可能です。

中国内で設立された設備機械の場合は、そのままでは現物出資はできませんが(輸入通関実績がないため)、「保税開発区游」をすれば現物出資できます。

また、奨励分類生産型企業の場合は、定款に記載された総投資金額の範囲内で設備の免税輸入が可能ですが、この中国製造設備の保税開発区游方式でも、関税免除措置の適用は可能です。

なお、無形資産(中国外にある特許・ノウハウ等)による現物出資は可能であり、事例もあります。土地使用権による現物出資は理論上は可能ですが、外国企業の実例はほとんどありません(ほとんどは中国企業の現物出資)。

(3)払込期限

2024年7月1日施行の新会社法により、5年以内の資本金払い込みが再度義務付けられました。13年の会社法改定(施行は14年3月1日)で、いったん資本金の払込期限が撤廃され、経営期間内に払い込めばよくなりましたが(期前清算する場合は保有資産で債務が弁済できれば、残額を支払わずに清算可能)、実務上不健全と判定され、再度5年間の期限が設定されたものです(会社法・第47条)。

2.ベトナム

(1)資本金の払い込み

外資企業の資本金払い込みは、貨幣、金地金、ベトナムドンでの評価が可能な土地使用権、知的所有権(権利・技術・ノウハウ)、その他の財産での払い込みが認められています(企業法・第34条)。海外からの送金に関しては外貨のみ認められます。

貨幣以外での現物出資の場合は、各出資者もしくは専門評価機関による評価に基づき、出資資産のベトナムドン価額を定める必要があります。(企業法・第36条)。

(2)現物出資

外国企業からの現物出資は、「ベトナムへの輸入通関実績がある設備」および「工業所有権・ノウハウなどの無形資産」が現物出資の対象となります。「土地使用権・不動産」による出資は理論上可能ですが、外国企業が保有するケースは通常ないため、これらの無形資産に関しては内資企業・ベトナム人の出資が前提となります。

また、投資法上の投資優遇分野に該当する場合、設備(固定資産)の免税輸入が可能です。

(3)払込期限

14年の企業法改正により、企業登記証明書(ERC:Enterprise Registration Certificate)の発行日から90日以内の資本金払い込みが義務付けられており、21年施行の新企業法においても同様の規定となっています(同法・第47条・第75条・第113条)。

以上