中国・ベトナムにおける外資企業の借入制限・外資販売会社について【水野コンサルタンシー中国・ベトナムビジネス情報】ダイジェスト版Vol.105
2025-02-18【中越ビジネスマニュアル 第 105 回】
中国・ベトナムにおける外資企業の借入制限について
中国とベトナムの外資企業の借り入れに付いて解説します。
1.中国
(1)中国内借り入れ
中国の外貨管理条例では、中国内の外貨流通を原則として禁止していますが、金融行為は例外として認められているので、中国内の銀行からの借り入れは人民元・外貨の双方が可能です。ただ、国内で外貨借り入れをした場合、人民元への換金はできませんので、人民元が必要な場合は人民元借り入れ、外貨が必要な場合は外貨借り入れとする必要があります。
外資企業が中国内で借り入れする場合(日系企業の場合は邦銀が主体)、親会社保証を前提とするのが通常ですが、このような親会社保証をベースとした中国内借り入れは、総量規制の対象とはなりません。ただ、返済不能になり、親会社が保証履行する場合は偶発債務登記が必要となり、その金額は外債(2)と同様の総量規制の対象となります。
なお、匯発[2014]29号により、投注差方式を採用している場合、前年度の会計監査報告書の自己資本の金額は総量規制から除外できます。
(2)国外借り入れ
国外からの借り入れ(親子ローン、外国の金融機関からの借り入れ、クロスボーダーファイナンスリース等)は、外債登記が必要となり、一定の総量規制が適用されます。
総量規制は、現時点では「投注差方式(国家発展計画委員会・財政部・国家外貨管理局令[2003]第28号、銀発[2012]165号)」と、「マクロプルーデンス方式(銀発[2017]9号)」の選択適用でいずれか一種類を選択して、継続適用することになります。
投注差方式とは、外債を定款に記載された総投資金額と資本金の差額に制限する方式であり、マクロプルーデンス方式は一定の調整を加えた借入金額を前年度の会計監査報告書に記載された自己資本の3倍(この金額は随時修正されます)以内に制限する方法です。
(3)非金融企業の融資行為
中国内の非金融企業間の直接融資は禁止されています。必要がある場合は銀行を経由した委託貸付の方法を採用する必要があります。
2.ベトナム
(1)ベトナム内借り入れ
ベトナム内企業の国内銀行からの借り入れは、外貨・ベトナムドン共に可能です。ただし、外貨収入がない(ベトナム国内販売のみを行う)企業の場合、外貨での返済能力は無いため、外貨借り入れは認められません。
また、契約期間が1年超となる中長期借入金には総量規制が適用されますので、借入枠は投資登記証に書かれた「投資総額と資本金の差額」に制限されます。
(2)国外借り入れ
国外からの借り入れに関しても、契約期間が1年超となる中長期借入金に関しては、総量規制が適用されます。ただし、国内借り入れとは異なり、国外からの中長期借入金は、中央銀行への登録が必要ですので、契約締結日から30日以内かつ資本口座への入金前に登録が必要です。
(3)非金融企業の融資行為
企業は登記された事業内容以外の活動は行えませんので、原則として、ベトナム内の一般企業(非金融企業)の融資行為は、通貨を問わず(外貨・ベトナムドン双方)認められないと考えられます(融資行為を反復・継続的に行う場合のみを事業活動と捉えるのか否かには議論の余地があり、解釈が分かれています)。
中国・ベトナムにおける外資販売会社について
中国とベトナムにおける外資販売会社の設立について解説します。
1.一般事項
途上国においては、外資販売会社の設立には一定の規制が実施されています。
技術・ノウハウを吸収でき、大量の雇用が期待できる生産型企業とは違い、販売会社はこれらのメリットが少ない上に、市場独占を招きかねないという理由で、警戒される傾向にあります。この分野は世界貿易機関(WTO)加盟に際して、規制緩和を公約するケースが多いですが、中国の加盟は2001年12月、ベトナムは07年1月の加盟です。
2.中国
結論から言えば、中国では現時点で、特段の外資規制は行われていません。
危険化学品取り扱いなどの特殊な許可を必要としない場合は、4~5カ月で設立作業を終え、営業可能な状態にすることができます。
(1)規制緩和の経緯
中国は01年12月11日にWTOに加盟し、3年以内の貿易権・国内流通権開放を公約しています。その結果、04年4月に「外商投資商業領域管理弁法(現在は失効)」が公布・同年7月に「対外貿易法」が改定され、100%外資の販売会社設立が可能となり、販売会社を設立すれば、貿易権(外貿流通経営資格)も取得できるようになりました。
(2)設立手続き
20年1月1日の外商投資法施行により、非ネガティブリスト外資企業については、商務主管部門での設立許可取得・備案(届け出)手続きは廃止されています。
現在では、所管地域の市場監督局への営業許可の発行申請から手続きが開始できます。
(3)資本金
外資販売会社に対しては、もとより(外商投資商業領域管理弁法が施行されていた時期)、最低資本金は設定されていませんでしたが、実務上は50万元程度が一つの目安になっていました。現在では、このような金額も強制されず、極端な過小資本でなければ、原則として設立が認められます。
3.ベトナム
結論から言えば、ベトナムでは、規制は緩和されたとはいえ、いまだに外資規制は行われています。油脂取り扱いなどの特殊な許可を必要としない場合、内資企業は1~2週間での設立が可能であるのに対して、外資企業は投資登記も必要であるため、4~6週間の期間を要します。また、小売り業の場合、外資企業にのみHSコードの登録が義務付けられています。
(1)規制緩和の経緯
ベトナムは07年1月11日にWTOに加盟し、09年1月以降の国内流通権・貿易権を開放したので、現在100%外資の販売会社設立が可能となっています。
事業内容は輸入権、輸出権、卸売り権、小売り権として登記します。
外資企業に求められていた取扱品目のHSコード登録は、輸出・輸入・卸売事業に関しては18年1月15日より撤廃されています(政令番号09/2018/ND-CP)。
(2)設立手続き
管轄の計画投資局にて、まず投資登記証を申請・取得し、その後、企業登記証を申請・取得します。
(3)資本金
外資販売会社に対しては、最低資本金は設定されていませんが、実務上は30万米ドル程度が一つの目安になっています。
以上