中国・ベトナムにおける貨物の輸入に関する注意点・個人に関する外貨管理について【水野コンサルタンシー中国・ベトナムビジネス情報】ダイジェスト版Vol.104
2025-01-22【中越ビジネスマニュアル 第 104 回】
中国・ベトナムにおける貨物の輸入に関する注意点について
輸入取引に関する通関・納税・決済上のポイントを解説します。
1.中国
(1)輸入当事者
中国では貿易権管理が行われており、輸入取引の当事者(中国企業)は、外貿権を保有している必要があります。 2004年の対外貿易法改定により、貿易権は中国内の企業(適切な営業許可を有する企業)に開放されましたが、非居住者に対しては発給されません。
よって、非居住者は保税区域を除いて、輸入者になることはできません。
(2)輸入通関
輸入通関は、適正時価(CIF価格)に基づき、それを基準として関税・増値税(特定のぜいたく品については、それに加えて消費税)が課税されます。
(3)無償輸入
中国では、通関決済一致の原則があります。この検証は、外貨管理局システム(モニタリングシステム)による直近12カ月の総量管理となります。
無償輸入をすると、総量管理上の問題が生じ、外貨管理局の立ち入り検査対象になりうるため、望ましくありません。 ただし、制度上無償輸入が認められている来料加工や加工貿易に伴う無償提供設備の輸入については、この限りではありません。
また、税関輸出入管理体系には、「その他無償輸出入(税関管理番号:3339)」という項目がありますが、用途は制限されています。
(4)揚げ地ファイナル条件
輸入契約に、輸入地である中国での数量・品質検査が条件づけられている場合があります。 この場合、輸入通関後の検査により、取引価格・数量が確定しますが、契約の有効性はさておいて、納税・外貨管理上は対応が困難です。
これは増値税暫定条例では、増値税の納税義務は「輸入通関の当日」に発生することが規定されており(事後修正は困難)、外貨管理上も上記(3)の問題があるためです。
2.ベトナム
(1)輸入当事者
ベトナムでは貿易権管理が行われており、輸入取引の当事者(ベトナム企業)は、輸入権登記が必要となります。 外資企業への輸入権資格は、かつては厳しく制限されていましたが、07年のベトナムのWTO加盟による流通権開放に伴い09年に緩和されました。 また、18年1月15日の「政令番号09/2018/ND-CP」により、外資企業に求められていた輸入品目のHSコード登記は、石油等一部品目を除き、原則として輸入・卸売りに関しては不要となりました。
(2)輸入通関
輸入通関は、適正時価(CIF価格)を基準として関税・付加価値税(特定のぜいたく品についてはそれに加えて特別消費税)が課税されます。
(3)無償輸入
適正時価に基づかない取引である無償輸入を行う場合、「輸出入貨物の課税価格に関する通達(財務省番号39/2015/TT-BTC)」に基づき、同一製品・類似製品の輸入価格、輸入製品・同一製品・類似製品のベトナム国内販売価格から合理的費用・利益を控除した価格、製造原価・関連経費を元にした算定価格などに基づき申告を行う必要があります。
(4)揚げ地ファイナル条件
輸入契約に、輸入地であるベトナムでの数量・品質検査が条件づけられている場合があります。 この場合、輸入通関後の検査により、取引価格・数量が確定しますが、契約の有効性はさておいて、納税上・外貨管理上は対応が困難です。 税関法等では、課税価格は輸入時における購入価格に基づくものとされており、輸入通関後の申告価格・納税額の修正は極めて困難です。 また、外貨管理上、通関価格と決済価格の一致を原則としているため、輸入通関価格を超える決済はできません。
中国・ベトナムにおける個人に関する外貨管理について
中国とベトナムの個人の外貨管理について解説します。
1.中国
(1)銀行口座
「非居住者金融口座の税務状況調査管理弁法(国家税務総局・財政部・人民銀行・銀行業監督管理委員会・証券監督管理委員会・保険監督管理委員会公告2017年第14号)」により、外国人に対する銀行口座の開設・維持が厳格化されました。
14号の要求は、非居住者個人が中国内に銀行口座を開設する場合、「居住地の納税番号提示(日本人の場合は、原則としてマイナンバー)」を義務付けるものです。 ただし、同時に、実務運用が強化され、中国での居留許可を有する外国人しか銀行口座が開設できなくなりました。
(2)換金
1)外貨から人民元への換金
外貨から人民元への換金は、年間5万米ドルの総量枠があります。 銀行で身分証明書(パスポート)を提示すれば換金が可能です。
2)人民元から外貨への換金
人民元から外貨への換金は、中国公民の場合は年間5万米ドルの総量枠がありますが、外国人にはありません。 外国人の場合は個人所得税申告所得の範囲内で外貨への換金、外国への送金が認められますので、銀行で手続きを行います。
(3)携帯制限
中国出入国時に、特定の手続きが要求されない携帯金額は以下の通りです。
1)人民元
人民銀行公告[2004]第18号により、出入国時の人民元現金携帯額は、2万元以内に制限されています。
2)外貨
経常項目外為業務ガイド・第89条により、出入国時の外貨現金携帯額は5,000米ドル相当以内に制限されており、それを超過する場合は税関申告が必要です。
2.ベトナム
(1)銀行口座
ベトナムでは、居住者、非居住者ともに口座開設は認められています。 居住者が口座を開設する場合、パスポート、ビザ(もしくはレジデントカード)に加え、場合によっては労働契約書、労働許可書、給与明細の提示が必要となります。 非居住者が口座を開設する場合は、パスポート、ビザの提示が必要となります(日本国籍者等にはベトナムの滞在期間が15日以内であればビザが免除されていますので、ビザの代わりに入国スタンプが確認されます)。
(2)換金
1)外貨からベトナムドンへの換金
外貨からベトナムドンへの換金は、銀行で身分証明書(パスポート)を提示すれば換金が可能です。
2)ベトナムドンから外貨への換金
ベトナムドンから外貨への換金は、外国人の場合は個人所得税申告所得の範囲内で外貨への換金、外国への送金が認められますので、銀行で手続きを行います。 携帯制限範囲内での換金も可能です。
(3)携帯制限
ベトナム出入国時に、特定の手続きが要求されない携帯金額は以下の通りです。
1)ベトナムドン
出入国時のベトナムドン現金携帯額は1,500万ドン以内に制限されています。
2)外貨
中央銀行通達・第15/2011/TT-NHNN号・第2条により、出入国時の外貨現金携帯額は5,000米ドル相当以内に制限されており、それを超過する場合は税関申告が必要です。
以上