中国・ベトナムにおける外資企業の清算、会計監査と法人税の確定申告について【水野コンサルタンシー中国・ベトナムビジネス情報】ダイジェスト版Vol.101

2024-10-09

【中越ビジネスマニュアル 第 101 回】

中国・ベトナムにおける外資企業の清算について

外資企業の清算手続き概要について解説します。

1.中国

(1)清算の許可・受理

2020年1月1日の外商投資法施行により、旧外資三法が廃止され、非ネガティブリスト外資企業の場合は、清算に関する商務主管部門の許可は不要となっています。

よって、市場監督局のシステムに清算委員会リスト、股東会決議をアップロードした日が清算開始の日となります。

(2)人員解雇

雇用主が清算を決めた日に、労働契約の終了が可能となります。これは、具体的には上記(1)のシステムアップロードの日が該当します。

なお、会社清算の場合も雇用主の都合による解雇になりますので、経済補償金の支払いは必須です。

(3)清算に要する時間

会社の清算に要する期間は、会社の情況(資産・負債状況、従業員数や労使関係、過去の納税状況等)によって異なります。

ただ、18年の税務関連の合理化により、過去に比べると大幅に時間短縮されています。過去には(一般的に保有資産・従業員数が少ない)サービス性の企業でも1年以上、生産型企業、特に国営企業との合弁などの場合は2~3年を要することもありました。現在では18年以前と比べると、おおむね半年程度の時間短縮が期待できます。

過去の清算手続きにおいて、長期間を要していたのが税務登記抹消ですが、18年の組織変更で、国税・地税が統合された(二重手続きが1回で済むようになった)こと、さらには、税務登記即時抹消制度が導入され、過去の納税状況に問題なければ(1週間程度の時間で税務機関に事前確認可能)、申請日に即日抹消が認められるため、過去に半年以上を要していた時間がその分短縮されました。

(4)残余金の回収

清算手続きが完了すると、残余金は全額出資者に支払い可能です(清算配当)。

出資部分までは、資本の回収として課税されず、出資を超過した部分に対しては、配当に準じて、10%の企業所得税が源泉徴収されます。

2.ベトナム

(1)清算の受理

清算の決定をした企業はまず、国家企業登記ポータルサイトから申請書類をアップロードします。次に計画投資局(DPI: Department of Planning Investment)にて申請書類を提出します。

(2)人員解雇

雇用主が被雇用者に清算を通知した日が労働契約の終了日となります。

なお、会社清算の場合も、雇用主の都合による解雇になりますので、経済補償金である失業手当の支払いは必須ですが、12カ月以上の加入を前提に失業保険基金から支払いがなされます。

(3)清算に要する時間

会社の清算に要する期間は、会社の情況(資産・負債状況、従業員数や労使関係、過去の納税状況等)によって異なりますが、一般的に保有資産・従業員数が少ないサービス性の企業でも1年以上、生産型企業、特に国営企業との合弁などの場合は2~3年を要することもあります。これは定期的・効率的に税務検査が行われていないため、会社の清算時に広範囲・長期間を対象とする税務調査が行われる傾向にあることも一因となります。

(4)残余金の回収

清算手続きが完了すると、残余金は、全額出資者に支払い可能です(清算配当)。

出資部分は、資本の回収として課税されません。また、出資を超過した部分に対しても、利益送金税が廃止されたため、出資元企業への配当支払いも非課税となります。


中国・ベトナムにおける会計監査と法人税の確定申告について

中国とベトナムの会計監査・法人税確定申告義務について解説します。

1.中国

(1)会計監査

中国の会社法・第208条には、「会社は一会計年度終了時に財務会計報告を作成し、会計事務所の監査を受けなければならない」と規定されています。

ただし、実務上は上場企業等の特別な会社を除き、公認会計士監査は強制されておらず、法律と実務の乖離(かいり)があります。

また、外資企業に対しては、過去には確定申告時・共同年次検査(現在はオンライン報告)時に監査報告書の提出が義務付けられていましたので、内資企業より厳しい(監査が徹底されていた)状況でしたが、2014年に開始された商事登記制度改革の流れにより、現在では免除されています。

よって、小規模な外資企業は会計監査を実施していないケースもありますが、大手企業は連結決算の必要上、配当送金の必要上(匯発[2016]7号により対外送金時の提示が必要)、会計監査が必要となりますので、自主的に実施しています。

(2)企業所得税の確定申告

中国の法人(外資企業を含む)は、暦年を会計年度とする必要があり、企業所得税の確定申告期限も翌年の5月末で統一されています。

実務上は、4月1日から確定申告の申請が受理されますので、期限は翌年4月1日~5月31日の間ということになります。

企業所得税の確定申告が終了すると、利益処分決議(董事会・股東会決議)を行うことができ、配当を含めた利益処分が可能になります。

このような理由により、中国現地法人の配当は翌年の5月以降となります(企業所得税の確定申告を早めに申請すれば、利益処分時期がその分はやめられる可能性があります)。

2.ベトナム

(1)会計監査

ベトナムの独立監査法・第37条には、年次財務諸表への監査が必要な企業の一つとして、外資企業が列挙されています。全ての外資企業は、企業規模や上場しているか否かにかかわらず、毎年の決算終了後に監査法人による会計監査を受け、確定申告時に所管税務機関に監査報告書を提出する必要があります。

(2)企業所得税の確定申告

ベトナムの法人(外資企業を含む)は、会計年度として、3月末日、6月末日、9月末日、12月末日を1年とする期間を選択することが可能です。

法人税の確定申告期限は、会計年度終了日から3カ月目の末日ですので(改正租税管理法・第38/2019/QH14号)、12月決算の場合は3月31日、3月決算の場合は6月30日、6月決算の場合は9月30日、9月決算の場合は12月31日が期日となります。企業所得税の確定申告が終わると、利益処分決議を行うことができ、配当を含めた利益処分が可能になります。

以上